運動連鎖
運動連鎖は、以上で述べた運動量の交換を端的に説明する概念であり、鞭が加速する原理を指しています。
関節間で運動量の交換が起こる時は、関節間の速度(位相)差に誘発された伸張性収縮により発生した大きなエネルギーも加えられますから、伝達の過程でエネルギーをロスしないなら、末端へ行くごとに運動量は増加します。
すなわちパンチ力は増加します。
上記は所謂「連動性」「連動」の物理的、生理的な説明です。それらは「筋肉及び筋膜の張力の連鎖とブレーキ効果の連鎖」と解釈できます。
ところで。
「連動性は大切」。
こう”言いたがる”指導者は山程います。その人たちは「連動性」が何かを知っているでしょうか?単にかっこいい言葉を使いたいだけではないでしょうか。

閑話休題。ここからが本題。
リリースポイントと大胸筋トルク至適角のギャップ
その一でリリースポイントと大胸筋による上腕トルクの最大値はズレていると説明しました。
このズレ考察し、皆さんが利用可能なエネルギーを取り出します。
上記の運動連鎖のグラフを思い出してください。
運動量を末端へ伝えるのには時間がかかります。
投球では肘を小さくおりたたみます。それは腕のモーメントアームを小さくし、物理的に腕を軽くする為の工夫です。
$\displaystyle {\boldsymbol {L}}=\sum _{i}m_{i}({\boldsymbol {r}}_{i}\times ({\boldsymbol {\omega }}\times {\boldsymbol {r}}_{i}))=\sum _{i}m_{i}({\boldsymbol {\omega }}r_{i}^{2}-{\boldsymbol {r}}_{i}({\boldsymbol {r}}_{i}\cdot {\boldsymbol {\omega }}))$
慣性モーメントは回転のしにくさ。
質量が同じなら、回転軸からの距離rが伸びるほど慣性モーメントLは大きくなります。
腕を伸ばしたまま振り回すのには、腕を畳んだままそうするのと比較するとかなり大きなトルクが必要になります。
具体的には質量の距離の二乗倍です。
常人にはそのようなトルクは生み出せなません。だから腕を畳むひと工夫が必要になります。
腕を畳んで関節間で運動量の交換を行う場合は既述の偶力が必要になります。
また、偶力によるエネルギーの交換にはブレーキが必要になり、ブレーキはそれを完了するまでの時間(一手間)を要求します。
すなわち、関節が増えるほどブレーキの回数は増え、その分の時間がかかってしまいます。
要するに、腕を畳んだ場合は、大胸筋による上腕の最大トルクが発生する水平内転角に突入する前に、大胸筋は収縮を止めて畳まれた腕の展開を始める必要があります。
慣性モーメントを小さくしようと腕を畳めば畳むはど、それを広げるのに時間がかかり、上腕が水平内転トルク最大域に突入する前に回転(大胸筋の収縮)をやめる必要が生まれます。
つまり、腕を畳むほどに物理的に力が出しにくくなります。
おそらくはそれが大胸筋至適角とリリースポイントのギャップ。
一方で室伏やゴロフキン、ベテルビエフのような外れ値個体は違います。
1.上腕と胸郭を繋ぐ肩の腱や筋肉が太い
2.慣性に負けて上腕を振動させないほど太い前鋸筋と小胸筋
3.慣性モーメントにより重くなった腕を振り回す股関節と体幹の筋力
を満たし、上腕と肩のせん断力に耐えられるなら、むしろ彼らのように腕を伸ばすことは利用できるエネルギーを増大さそることを意味しますから、パンチの破壊力は増します。
せん断力(Shear force)は、物体(部材)の断面に沿って、両側から互いに逆向きにずらすように作用する平行な力のことです。
AI
「腕を畳む」は弱者の消極的戦略であるのだから、やればやる程柔くならます。



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