フィジカルとスキル
ヘッドムーブ
股関節をロックできない場合、すなわち腸腰筋内転筋群中臀筋が弱い場合、ロマやタイソンのような、胸椎側屈でグリグリと頭を振るディフェンスは物理的にできません。
小学生にベンチプレス100kgが挙げられないように。
利点
1.頭が突っ込みにくく、打ち終わりの動きの立ち上がりが速い
2.距離が詰まりにくくパンチの空間を確保しやすい
3.軸足に体重が乗り反発を受けやすい


股関節内旋内転

股関節外転外旋
股関節外旋外転は、コアの筋肉が衰えた老人や未発達の赤ちゃんに見られる形です。


股関節ロックが弱い場合は、踏み込み時の推進方向と膝関節の屈曲方向が一致してしまうので、その勢いに押される形で膝関節屈曲が起こります。
つまり、体をブレーキすするのが下手になります。
ブレーキが下手な場合は、体の敏捷性が失われる、かつブレーキ効果の効率が低下します。
股関節内旋内転による股関節ロックが強く起こる場合、膝関節の屈曲方向と体の推進方向が一致しないので、膝が曲がりにくくなります。
脚がつっかえ棒として機能するので、踏み込んだ勢いを強く制止できます。

踏み込んだ勢い強く制止できた場合は、脊椎を折り曲げられます。すなわち胸椎の側屈が起こりりやすくなります。
具体的には下のような動作が起こりやすくなります。
パンチの軌道


一流の股関節がロックされていることとパンチの動作の胸椎の側屈が強調されていることは因果関係であると考えられます。
つまり、股関節の土台としての剛性が高いから、押し負けた脊椎が潰れて圧縮されるわけです。
それが相手のガードを無力化する軌道の土台となります。
合理が合理を引き寄せる自己強化です。
逆を言えば、股関節がロックできずに膝曲がる場合は上記の連鎖反応が起こりません。
むしろ非合理が非合理を引き寄せる自己強化が起こると考えられます。
下のような脚の形は膝の回転としてエネルギーが漏出する上に、胸椎の側屈が起こらないので、ワイルダーのようなガードの間を通すような軌道が作れません。
これは非合理か非合理を呼ぶ負の自己強化構造です。

必然を構成する
「パンチを打つ時に頭がずれる」のは、意識的にそれを練習したからではなく、生来的な必然としてそうなっていると結論するのが妥当と思われます。
この解釈はアスリートが太い腸腰筋(≒股関節の強さ)を備えている事実とも整合的です。
つまり、スキルはフィジカルが引き寄せてくるわけです。
遺伝的素質のある人ほど効率的な技術を獲得するが確率が高く、そうでないは場合は非効率な技術を獲得する確率が高くなると言い換えられます。

以上の股関節ロックを起点とした物語は、スポーツの技術とそれを身につける為の練習への示唆を与えてくれると思います。
一つは、「技術」は”意識的な”訓練によってではなく、生来的な骨格や練習の構造から導かれてくる、ということ。
そうだとするなら、練習中にゴチャゴチャと考えたり、ウダウダと細かく指導するのは時間と体力の無駄です。
競技力向上に要求されるのは、自らが理想とする姿を構成する要素を探すことです。
補足
体幹が胸椎の側屈で圧縮された場合、エネルギー伝達効率が高まり、かつ肩甲骨平面での打撃が可能になるので、上腕のトルクが向上し、パンチ力が増します。
強く速く、効率的に力が流れる物理的な構造を作る必要があります。
水が滞りなく流れる為には土木工事が必要です。

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