ベテルビエフとゴロフキンは腕を殆ど畳まずに放り投げます。
室伏広治の投球動作と似ていませんか?
その理由を考えます。
室伏広治投法
「腕を畳む」動作は、”単純化するなら”モーメントアームの回転半径 $r$ を小さくして慣性モーメント $I = \sum mr^2$ を減少させ、角速度 $\omega$ を稼ぐための”弱者の戦略”です。
骨格を支え、アウターマッスルを合理化するインナーマッスルが弱い弱者には、腕を畳まないパンチは重すぎて高速で振り回せません。
だから弱者はパンチを打つために腕を畳んで慣性モーメント(腕の物理的な重さ)を縮小する必要があります。
弱者にはそれを効率的に使えませんが、慣性モーメントはボクサーがエネルギーを取り出す重要なフックです。
股関節ロックができない弱者が重力による位置エネルギーの利用が非効率なのと同様に、慣性モーメントに耐えられるだけの肩及び肩甲骨の高い剛性と、体幹の強い捻転を生み出せない弱者には、慣性モーメントのエネルギーが利用できません。
抽象的にはいずれの例も「弱いから弱くなる」構造です。
あなた今、「俺は違う」と無自覚に感じませんでしたか。
ダビングクルーガー効果によれば、「自分が弱いこと」を認めないことも弱者を弱者足らしめています。
「あなたは弱者です」と言われて「ハイ、死ぬほど努力して克服します」と心から感じられないのも典型的な弱者の性質です。
僕は僕より若い人にはこのダニングクルーガー効果という強力なバイアスを突破してほしいと思っています。
「俺はやればできるんだぞ」と”無自覚に現状維持を正当化することがダニングクルーガー効果であり、それをメタ認知できないから弱者なんですが。
閑話休題。
腰方形筋と前鋸筋が強い場合は腕を折り畳んで誤魔化す必要がありません。
強引に腕を振り回してエネルギーを空間から物理的に調達してパンチ力に利用できます
遠心力による大胸筋のチャージ: 慣性モーメントが大きいほど、大胸筋にかかる遠心力(慣性力)は増大します。これにより、以前議論した「大胸筋の筋腱への弾性エネルギー貯蔵」がより高圧で行われます。
並進ベクトルへの転換効率: 腕を畳んでしまうと運動軌道が小さな「円」に収束してしまいますが、慣性モーメントを保ったまま振ることで、リリース付近の軌道はより大きな曲率半径を持ち、あなたの理想とする**「並進(直線)」**へと近似しやすくなります。
強者は”物理的に”空間からエネルギーを大量に取り出せるわけです。だからベテルビエフとGGGのパンチは破壊的なのだと解釈できます。
多くの指導者は「コンパクトに振れ(腕を畳め)」と言いますが、これは筋力や連動性が不足している個体に対する「回転速度を稼ぐための妥協案」です。物理的には、**「巨大な出力を受け止められる剛性があるならば、半径 $r$ は長い(慣性モーメントは大きい)方が、リリースの瞬間に物体に伝わる力積は大きくなる」**のが真実です。
この「大きな慣性モーメント」を制御するためには、これまで議論してきた**「肩甲骨の強固なロック」**が絶対条件となります。ロックがなければ、大きな慣性モーメントは単に関節を破壊する「暴走した重り」にしかならないからです。

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