【トップファイターは】ゲンナディ・ゴロフキンの強さに迫る PART 3【なぜ棒立ちになる?】

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今回はゴロフキン選手のジャブを例として下半身の使い方を解説します。
かなり前置きが長くなりますが、今回はジャブだけでなくボクシングや運動の本質的な部分を記述していこうと思います。

長くなってしまうので先に結論から言うとゴロフキン選手はハムストリングや大殿筋による股関節の伸展が主導となって身体を推進させています。
だからこそジャブが強く相手はゴロフキン選手の動作が読めません。

この場面はほとんど膝が伸びた状態で力を溜めてジャブを放っています。
膝関節の伸展ではなく、股関節の伸展でパンチを打ちだしているということです。

今回は日本人の直感に反する膝を伸ばすという姿勢の優位性ついて解説します。

GGGは何故膝が伸びる?
何故GGGのジャブは強く、高確率で当たる?

こんな風にトップファイターの脚が伸びている理由にも繋がっていきます。

何故カネロの脚は伸びる?

姿勢にもパフォーマンスアップに関連した深い意味があります。

何故ロマゴンの脚は伸びる?

ただ形だけ真似するだけでは彼らのような強さには繋がりません。
それどころか理解不足による弊害が出てしまいます。
深く理解することでしか実践できません。

何故トップファイターの脚は伸びる?

トップファイターの脚が伸びるのは偶然ではなく必然です。

なるべくしてそうなっている。

今回の記事を最後まで読めば、上記の姿勢になる理由とこの姿勢に由来したゴロフキン選手のような股関節伸展によるパンチがボクシングにおいて有利であることが理解できるはずです。
そして同時に黄色人種の選手に多い「骨盤の後傾に起因した猫背とそれに伴う膝関節屈曲」がボクシング、ひいてはスポーツに不利である理由が理解できると思います。

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股関節の構造で立つ

その前に前回の補足です。
骨盤前傾により骨格の構造で立つ』とはどういうことなのかを説明します。
以下の図を見てください。

説明を簡単にするためにまずは簡単な例を使って力学的な知識を説明します。

同じ体重の人を両端に乗せたシーソーを持ち上げる為には重心に力を加える必要があります。

力を重心に加えることができた場合、シーソーは回転せず持ち上がります。

逆にこんな風に重心からずれてしまうとシーソーは回転してしまいす。

重心に力を加えないと物体は真っすぐ進まず回転をしてしまうんです。

もう一つ別の例です。
黒い点がバットの重心です。

ボールの位置(力点)がバットの重心から離れれば離れるほど、バットを回転させようとする力は大きくなります。

骨盤が前傾していると上半身の重心の垂線(重心から真っすぐ引いた線)が丁度股関節の上にきます。
股関節に上半身の重みが乗るような形になり大腿骨を上から押さえつけるので、バランスが安定します。

逆に後傾していると上半身の重みに押されて骨盤は後ろに回転しようとします。
その回転を防ぐために筋力を発揮する必要が生じてしまいます。

次は股関節の構造を見てみます。
左側の一番下にある骨盤の股関節が収まるくぼみを見てください。
前側より後ろ側の方がくぼみが広くなっていますよね。

骨盤が後傾すると大腿骨と骨盤のかみ合わせの接触面積が小さくなり、接合が浅くなってしまいます。

接合部の接触面積が小さいとバランスがとり難くなります。

鉛筆を立てて、直立させる時は指先で抑えるより、指全体で抑える方が安定しますよね。

骨盤は前傾した方が大腿骨と骨盤の接触面積が増えて安定するんです。

かなり長くなりますが、次にハムストリングスによる股関節伸展についてです。

骨盤の前傾とハムストリングスの伸展

最初に骨盤の前傾の復習をします。

筋は引っ張られて伸張した状態で筋力を発揮しやすく、逆に縮んで収縮した状態では筋力を発揮できません。

腸腰筋の収縮により骨盤が前傾しハムストリングスが伸張された状態はハムストリングスの腱に弾性エネルギーが蓄えられ、また筋繊維が伸張された状態なので筋繊維が収縮しやすく、伸張反射が起こりやすい状態であると言えます。
常にアクセルがかかっている状態です。

股関節の屈曲と伸展

人間の股関節は直立した状態では伸展しにくく屈曲しやすいという重要な性質を簡単に説明します。

股関節を進展させるハムストリングスは股関節が伸びた状態、つまり直立した状態ではほとんど縮んでしまっているので筋力をほとんど発揮できません

しかし、この画像のように人間の股関節は常に伸展した状態にあるんです。
直立した状態なので脚はそれ以上ほとんど伸展(反らせる)することはできません。

逆に直立した状態は屈曲なら容易くできます
体が柔らかい人なら脚と上半身がくっついてしまうはずです。
これは後の説明で使うので覚えておいてください。

何故、歩行や走行で重要になる股関節の伸展がこれほど行い難い骨格の構造をしているかと言うと、これには実は進化の過程が関係しています。
四足歩行動物の骨格を無理やり二足歩行適応させた結果、ハムストリングスが使いにくく弱くなってしまったんです。

理由を簡単に説明してみます。

四足歩行の動物は人間でいう上半身を倒した四つん這いの姿勢です。
なので股関節は常に屈曲しハムストリングスが伸張され縮みやすくなっています。
だからこそ四足歩行動物は力強く地面を蹴り上げて身体を推進できるんです。

逆に人間は常に股関節が伸展した骨格なので、ハムストリングスや大殿筋といった身体を推進する筋を使うためには一度股関節を屈曲させる必要があります。

例えば垂直跳びをする時です。
高く跳ぼうとすると、力を溜める為に一度屈んで股関節を屈曲させますが、あれは大殿筋やハムストリングスを伸張するためです。
このように人間は骨格の構造上、身体背部にはる強力な筋の力を発揮する為に一度股関節の屈曲動作が必要になってしまいます。

しかしながら動物はそれが必要ありません。
力をハムストリングスや大殿筋が伸張された状態が普通の姿勢なんです。
ごく簡単に言うと、動物は人間の垂直飛びの脚力を連続して発揮できるからこそ、あんなに速くて力強く走ることができます。
逆に言えばハムストリングスを使う動作は動物的で力強くなります。

四足歩行の動物が人間のように上半身を起こして二足歩行に移行するためには股関節を伸展させる必要があります。
大昔の四足歩行の動物の骨格を無理やり二足歩行として利用しているため、人間の運動には解剖学的な矛盾が生じてしまい、四足歩行の動物のような強靭でしなやかな動きが実現できません。

しかしながら二足歩行へ移行したとはいえ、狩猟が組織化され農耕が発達するまでの間は人間も動物と同じように狩猟を続ける必要があり、速く走る必要がありました。
そこで人間は四足歩行動物のように速く走るため、骨盤を前傾させたんです。

四足歩行の動物のような股関節の屈曲位ほどではないにしても骨盤を前傾させることでハムストリングスに張力をかけることができます。

ハムストリングスによる推進の戦略をとることで太古の人類は四足歩行の動物がとるような戦略を少しでも再現し、爆発的な脚力を維持しようとしました。

しかしアフリカを出た人類は農耕を開発しました。

座り仕事や腰を屈めた田植えが仕事の主となると、強い腸腰筋が邪魔して腰を屈められなくなります。

次第に田植えに必要のない骨盤の前傾を強調する腸腰筋は弱まり、モンゴロイドのそれはネグロイドの1/3にまで退化してしまったのです。

※農耕民族に生まれたことを卑下してはいけません。
農耕民族の優位性についても今後お話していきます。

こんな風に進化的な違いによりモンゴロイドは運動が苦手になってしまったんですね。

ここまで読んでいただければもう理解していただけたと思います。

運動をするのなら狩猟時代の骨格と筋力を再現する。

それをさらに深めていくと、四足歩行動物の身体を再現することに繋がっていきます。

あた骨格を再現することと同時にそのアドバンテージを生かす「感覚」を覚える必要があります。

人間の推進力を生むのに有利なハムストリングス

動物が股関節を屈曲させてハムストリングスの筋力を利用するように、腸腰筋が強く骨盤が前傾するとハムストリングスを使いやすくなるので、スポーツに有利になります。
骨盤前傾は動物的な骨格で四足歩行の動物の体の使い方に近いと言えます。

ここからはハムストリングスによる股関節伸展が何故スポーツに有利なのかを少し解説します。

地面を押す作用があるのは主に「大腿四頭筋」による膝関節伸展と「ハムストリングス」による股関節伸展の動作です。
黄色人種は大腿四頭筋を運動に動員する傾向にあると言われます。

ハムストリングスと大腿四頭筋の二つには矛盾した機能があり、その矛盾がパフォーマンスに大きな違いを与えます。

まずは大腿四頭筋から見ていきます。

大腿四頭筋の主な役割は膝関節の伸展と股関節の屈曲です。大腿四頭筋が付着しているのは骨盤と膝の皿辺り。
少し頭の中で大腿四頭筋を収縮してみます。

すると膝が伸展しながら股関節が屈曲するのが分かると思います。

ハムストリングスは骨盤から脛を形作る脛骨と腓骨にかけて付着しています。

それではハムストリングスを頭の中で収縮させてみす。

すると膝を屈曲させながら股関節を伸展します。

大腿四頭筋とハムストリングスの矛盾した関係

二つの関節による違いを図にしてみました。
ホント下手くそな画像で申し訳ございません。

大腿四頭筋による膝関節の伸展は地面に対して下向きとやや前方向に力を加えることになります。
作用反作用によって上向きとやや後ろ方向の力が返ってきます。
つまり、進みたい方向とは逆向きの力になってしまうんです。

※下半身の前屈度や足首の使い方と強さ、筋を上手く連動させればその限りではないと思います。
むしろ強くなるかも。
また近い距離であれば膝の伸展でも強いパンチが打てると考えます。

ハムストリングスはどうかと言うと。
地面に対してやや後ろと下方向へ力を加えます。
地面から返ってくる力は逆向きの前と上方向です。
進みたい方向の力が返ってきます。

このように身体を推進するにはハムストリングスによる股関節の伸展が有利で、大腿四頭筋による膝関節の伸展はハムストリングスによる股関節の伸展を阻害してしまう可能性があるんです。

では、どんな場合に膝関節伸展が優位になってしまうのか。
それは「骨盤を後傾させた時」です。

骨盤の前傾はハムストリングスに張力をかけ筋力を発揮しやすくし、大腿四頭筋を緩め筋力の発揮を防ぎます。
骨格の構造上、骨盤の後傾では真逆のことが起こります。

猫背で身体能力は死ぬ

骨盤が後傾していると大腿四頭筋に張力がかるので力が発揮しやすくなります。
逆にハムストリングスは緩んで力が発揮しづらくなります。
なので猫背は身体を前へ推進するのスポーツでは不利な姿勢になってしまうんです。
逆に後ろ向きに走るスポーツなら有利かもしれません。
聞いたことありませんが…

以下重力による位置エネルギーを利用しようとした場合の骨盤の前傾と後傾の違いを図にしました。

「力をタメる」とはを「重力による位置エネルギーを下半身の腱の弾性エネルギーとして貯蔵する」ことです。
人間はその腱に貯蔵されたエネルギーを利用して身体を推進したりパンチを打ちます。

上図の左のように骨盤が前傾した状態で上半身の落下させると、上半身の重みにより骨盤の前側が押されるので、さらに骨盤が前傾しハムストリングスが伸張されます。
これにより腱に位置エネルギーが貯蔵され、また筋繊維が伸張されることによりハムストリングスの筋力が発揮しやすくなります。
同時に大腿四頭筋が緩むので筋力の発揮を防ぎます。

今度は上図の右、骨盤が後傾した場合を考えていきます。

骨盤が後傾している状態で力を溜めようと上半身を落下させると、骨盤の後ろ側が押されてさらに骨盤が後傾します。
大腿四頭筋に腱にエネルギーが溜められ、また大腿四頭筋が伸張され筋力が発揮しやすくなります。
逆にハムストリングスが緩み、ハムストリングスの筋力が発揮しづらくなってしまいます。

骨盤の後傾の影響はそれだけではありません。
不要な力みを生み出します。

今度は骨盤の後傾に伴う猫背の弊害である「力み癖」ついて解説します。

既に述べた股関節は「直立した状態だと伸展しづらく屈曲しやすい関節」ということを思い出してください。

骨盤を後傾した姿勢で力を溜めようとすると上半身の重みはさらに股関節を伸展しようとするんです。
股関節はそれ以上伸展できないので、それをかばう為に膝が曲がり屈曲します。
この場合、後ろに倒れようとする身体を大腿四頭筋の筋力により引き付けてバランスを保つ必要が出てくるので身体が力みます。
これが僕の言う「力み癖」であり、骨格の構造ではなく筋力により立った状態です。

大腿四頭筋の力みはふくらはぎ背筋の力みに繋がり体幹と上半身の大きな筋の可動性を低下させます。
骨盤が後傾するとハムストリングスばかりか、全身の筋の機能が死んでしまうんです。

骨盤の後傾により腰椎から頸椎にかけての後弯が強調されています。

このような骨盤が後傾に起因した猫背、それをかばうように膝が折れた姿勢は非力でしなやかさに欠けたファイターの典型だと思います。

残念ながら国内レベルでは頻繁にみられる姿勢です。

一方でトップファイターの姿勢はどうかと言うと、脚が伸びてすらっと立っています。

メイウェザー選手が棒立ちで突っ立ているような印象を受けたことありませんか?

これこそが骨格の構造で立ち、体幹や身体背部の巨大かつ身体を推進する作用を持つ筋を運動に動員できる姿勢なんです。

ロマゴンも棒立ちしているような印象を受けると思います。

この両選手も突っ立って棒立ちしているように見えますね。

アルバレス選手は顕著だと思います。
膝が伸び股関節で身体を支えています。
ゴロフキン選手も後ろ足がピンと立っています。

体幹が強いトップファイターのほとんどは特に奥脚がピンと張ります。

ここまでくるとすぐにでも真似てみたくなると思いますが、注意が必要です。

これらの姿勢だけ真似しても意味がありません。
ハムストリングスの使い方を知らないとほとんどの場合は大腿四頭筋による膝関節伸展で力を発揮しようとする「癖」によってむしろ力が出にくくなるばかりか、バランスが悪くなります。

この姿勢の重要なところは骨盤が前傾し後ろ脚のハムストリングスや大殿筋に張力をかけて、股関節を伸展させることです。

世界のトップレベルの選手を俯瞰してみると棒立ち、特に後ろ足が突っ立っている印象を受けます。
いわゆる棒立ちというやつで、日本では注意される傾向にあるそれらの姿勢ですが、実は人体の構造上、特に体幹が強いトップアスリートになってくると自然なんです。

後楽園ホールレベルの試合だとほとんどの選手の膝が曲がって腰が引けている印象を僕は受けます。
これには当然人種、骨格の違いもあるとは思います。
しかしそれらを考慮しても僕はこれに大きな違和感を覚えます。
恐らくは、相撲取りのような姿勢(強い相撲取りは股関節で立つが)がスポーツに適した姿勢(当然状況にもよる)であるという指導の現場の思い込み、根本的な理解不足が起因していると感じています。

僕はこの場面にアルバレス選手のフィジカルの強靭さを感じます。

股関節と骨盤の構造により身体を支え、脚がピンと伸びて力が抜けています。

マイク・タイソンにも似たような印象を受けます。

骨格の構造により支えられ、力の抜けた上半身。

ここまでを簡単にまとめます。

まとめ

骨盤が前傾することで身体を推進する作用を持つハムストリングスや大殿筋といった筋が活性化され、また骨格の構造により安定して立つことができます。
それに伴い上半身が脱力し、体幹や身体背部の巨大且つ身体を推進する作用を持つ筋を運動に動員することが可能になります。

極端に言うと動物的な骨格を目指すことにより、身体能力は向上させられます。

ハムストリングスによる推進がトップアスリートの鍵

長くなりましたがゴロフキン選手の解説です。

簡単な復習です。
動物の例や股関節伸展による力の向きの図で示した通り、腸腰筋による骨盤前傾とそれによる大殿筋とハムストリングスの活性化、それに伴う大腿四頭筋の非活性化は股関節伸展による前方への大きな力を生み出せます。

それではゴロフキン選手のジャブを見ていきます。

股関節伸展による推進

簡単にゴロフキン選手の動きを抽象化すると。

強靭な腸腰筋による骨盤前傾と、それ伴う大殿筋やハムストリングスなどの活性化で身体を推進する筋力を高めている。
また「骨格立ち」で脱力することで肩甲骨付近の上半身が持っている質量のエネルギー(重み)をパンチへ利用し、拳の運動量を大きくしていると考えています。
これを簡単に言うと脱力して肩甲骨までを腕のように扱うことで、左上半身の重みを拳へ乗せているということです。

次にジャブにおける股関節の使い方を見ていきます。
基本的にボクシングの推進力を生むのは後ろにある脚です。
オーソドックスなら右の股関節の伸展動作と膝関節の伸展動作の強さがパンチの強さや踏み込みの速さに繋がります。
ゴロフキン選手の後ろ脚を見てみます。

この場面では左足を完全に浮かせて右足で体を支えています。
膝の屈曲は浅く、ほとんど伸ばしたままです。
膝を曲げ過ぎると前の腿が伸張されてしまうので、大腿四頭筋による膝関節伸展が優位になってしまい、踏み込んでジャブを当てる時には不利になると考えられます。
この場面を見ても分かる通りゴロフキン選手は踵に体重を乗せ、股関節の伸展を主導として踏み込んでいます。

左足を浮かせて全体重を右足に乗せるのは上半身の質量で臀部の筋を一端伸張させてから収縮させる『SSC』のテクニックです。
このテクニックにより筋の強力な収縮を起こす伸張反射と腱の弾性により上半身の位置エネルギーを利用することができるので、股関節を強力に伸展させて身体を前方へ推進させることができます。
力をタメるという部分で解説したように骨盤が前傾していることで臀部と裏腿に力をタメることができます。
骨盤後傾の猫背で力をタメると上半身の重みで背骨が曲がり、また膝が屈曲することによる大殿筋優位かつ骨盤がさらに後傾してハムストリングスが緩んだ状態になります。。
※SSCについてはリンクの記事をお読みください。

SSCは脱力するとその効果が高まります。
実際にどれくらい脱力しているかは見てわかる部分がとても少ないですが、ゴロフキン選手は骨格の構造からしてもかなり脱力しやすいと考えられます。
脱力して筋を緩めると全身の筋(水分を多く含む)自体が重力に引っ張られて落下しますし、また以前の記事で解説したボルト選手がやっていた肩を落下させていた技術のように腕や肩の位置エネルギーを利用し、大きな力を地面を加えられます。
加えて脱力した状態の方が「SSC」による強い筋と腱の収縮を起こすことができます。
ゴロフキン選手は脱力による位置エネルギーの利用とSSCの強化により強い力を発揮しているはずです。

左足のブレーキも股関節伸展

ジャブを打ちだした瞬間の左足を見てください。
脚を伸ばしています。
これにより左足が接地した瞬間の慣性力(身体の勢い)により股関節のハムストリングスが伸張され、ハムストリングスの伸張反射が起こり股関節が強い力で伸展されることになります。
股関節の伸展、つまり上半身を後ろに引くようにしてブレーキをかけられるということです。

股関節の伸展による強いブレーキ効果により腕が加速し、高速で拳を前方へ打ちだすことができます。

またこれは別の記事で解説しますが、骨格の構造で身体を支える「骨格制止(造語)」を行っています。
ゴロフキン選手は骨格制止とブレーキ時の臀部のSSCにより強いブレーキ効果を起こしています。

もう一つの股関節伸展の利点

ハムストリングスによる股関節の屈曲と伸展を主としたパンチの利点は推進力のみならず、膝関節の屈曲と伸展を主とした動きと比べて頭の高さが変化したり力を溜める動作が分かりにくいという面もあるので攻撃に移ろうとしていることを相手に読まれにくくなります。
上の画像を見てもらえればお分かりになると思いますが、力を溜めているのがかなり分かりづらいはずです。

ゴロフキン選手のジャブが強く命中率が高いのはハムストリングス主導による動作が一つの要因として挙げられるはずです。

まとめ

何度も述べてきましたが、ネグロイドがスポーツに強い理由の一つとして体の前面ではなく、体を推進する作用を持つハムストリングスや大殿筋などの背面の筋や身体の大きなエンジンである体幹の腸腰筋といった筋を運動に動員する傾向が強いからだと考えられています。
加えて骨格構造により立つことの脱力。

骨盤前傾だけ真似すると背中の筋を収縮させて背骨を反るような姿勢になり、身体背部の筋が緊張してしまいます。
脱力の効果はこのブログでお話してきたのでお分かりだと思いますが、背中の筋で立ってしまうのは本末転倒で逆効果になってしまいます。
まずは股関節や骨盤、背骨を腸腰筋の収縮で操作する感覚を覚えることが先決です。

僕は試行錯誤により腸腰筋の収縮で骨盤を前傾させハムストリングスに張力がかけられる状態、身体背部の筋がピリピリと緊張する感覚を掴んできています。

このブログで紹介してきた方法を統合し体系化して実践していくと骨格構造による脱力と身体背部のSSCが覚えられると思います。
メンタルトレーニングも実はフィジカルトレーニングになります。

この辺の関係はまた別の機会にお話します。

今回は臀部の筋を使った股関節伸展によるパンチが有利である理由を解説しました。
ケツで打つコツを簡単に解説すると、僕の場合は腿で地面を押す感じではなくケツで地面を蹴る感覚でうす。
骨盤前傾でなくとも、後傾を防げればできると思います。

次回は『骨格制止』や右のストレートについても解説していきます。

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小難しい話なので数学や物理が苦手な方には難しい、というか挫折します。
僕みたいに尋常ならざる数学や力学に関する興味がないと読み進めることはできません。
でもこれより身の回りの現象を合理的に説明する方法はありません。

Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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