肩甲骨ロックによりパンチ力が増す理由を説明します。
前提となる知識を提示します。
大胸筋の至適筋節長

腕を前方へスイングする筋肉は主に大胸筋です。
上腕の付着のねじれを記憶してください。後で使います。
また筋肉にはミオシンとアクチンの構造から演繹される至適筋節長があります。
※下のリンクに解説があります。
至適筋節長とは、筋力が最大化される時の筋肉の長さを指します。
上腕二頭筋を収縮させて肘を限界まで曲げてみてください。それ以上は力を出そうとしても出せないはずです。
肘を限界まで屈曲させた状態でさらに肘を屈曲させて、自らの肘を破壊できる人は突然変異でもない限りは存在しません。
至適筋節長は、自らの筋力で自らの関節を破壊しない為の仕組みです。
当たり前過ぎて意識しませんが、どの関節(筋肉)にもそれが存在します。
筋肉の至適筋節長は、物理的に関節の至適角と言い換えられます。
つまり、下のグラフのように、関節の角度を横軸とした場合の筋力にはピークがあります。
所で、僕の最初の発想はここです。
「「至適筋節長」があるなら、各関節のそれを合成した最強の姿勢があるはずだ。探してみよう」
ここから論理を飛躍させて今です。
起点が正しい場合は芋づる式に正解が引き寄せられます。
一方で起点を誤ると芋づる式に不正解が導かれます。
あなたのジムやトレーナーは正しい解を導けていますか?芋づる式に不正解を選ばされていませんか?

これらの合成が姿勢
閑話休題。
肩甲骨平面
大胸筋が肩関節のトルク(ねじる力)を”物理的に”最大化する水平内転角はおよそ45°〜60°(①)。
だいたいベンチブレスで最も力が入る位置です。
大胸筋の”生理的な”至適筋節長は0〜30°です(②)。
2つの数値のギャップの意味は後述するので覚えておいいてください。
大胸筋による水平内転力(肩関節トルク)の至適角が、腕を強くスイングできる範囲としての肩甲骨平面(スキャププレーン)の説明の一つです。

トルク(Torque)とは、固定された回転軸の周りにはたらく、物体を「ねじる力」や「回す力」の大きさ(力のモーメント)です。エンジンやモータの回転力、ボルトの締め付け力として利用され、単位は「(ニュートンメートル)」を使用します。
物理学的な定義に基づくと、トルク(力 Moment) $\tau$ は以下の式で表されます。
$$\tau = r F \sin \theta$$
ここで、$r$ は回転軸から力を加える点までの距離(腕の長さ)、$F$ は加える力の大きさ、$\theta$ は $r$ と $F$ がなす角度です。
AI
トルクは単純化すると「物をねじろうとする強さ」と言い換えられます。
ここではトルクは、大胸筋が上腕骨をスイングする強さ≒パンチ力、です。
$r$と$F$のなす角が$sin\dfrac{π}{2}= 90°=$垂直、の時にトルクは最大で、なす角が平行に近づくほど0に近づきます。

作用点の距離と回転力の模式図
トルクの数式を分かりやすくした模式図が上の画像です。
棒と平行に紐を引っ張った場合、棒を引っ張る力の大半は棒を関節に押し込む力に変換されて棒の回転力には変換されません。
図の右のようにある程度の角度をつけると棒は軸で強く回転します。
上の画像はトルク$\tau$が$sin90°$で最大化するのを視覚的直感的に理解させてくれると思います。
話が長くなりました。冒頭で示した大胸筋による上腕骨の回転に関する2つの数値を思い出してください。
水平内転における大胸筋の至適角が肩関節の水平内転0〜30°なのは、$F$と$r$のなす角が水平に近いほど、大きなトルクが必要になるから。つまり、一番力が必要な所で一番力が出るような設計になっています。
水平内転の出力がその後の45°〜60°で最大化するのは、トルクの性質と大胸筋の至適角の性質が合成されるから。
※大胸筋の至適角と水平内転トルクはゴチャ混ぜにせずに分けて考えてください。別々の概念、現象です。




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