「ベクトル」「体幹の剛性」「二軸打法」「肩甲骨ロックその一」の知識が前提。
投擲の方向
肩甲骨平面と二軸打法には太い腸腰筋と腰方形筋が要求される理由を説明します。
肩甲骨平面内、かつ二軸を両立した場合のパンチのスイングの軌道は下の画像のようになります。
また、画像の矢印ように体の外側へ向けて殴る場合は$\boldsymbol{F}=\sum_{t=1}^{n} \boldsymbol{f_{t}}$
単位時間毎の力$f_{t}$の向きが一致(=$COS0$)し$やすくなるので、\boldsymbol{F}$が大きくなります。
※ベクトルの演算については「ベクトル」タグで検索してください
分かりやすく言えばクロフォードのような打法です。彼は外側へ向けてパンチを打っているのが分かるはずです。
補足。
サウスポー、かつ股関節が強い場合はクロフォードのようなパンチが強調されます。また、下のクロフォードのような打法は力学的、生理学的に合理的です。
すなわち、サウスポーはオーソドックス以上にある座標への強いポテンシャルの勾配が生まれると考えられます。
サウスポーの構え、技術体系は多様性がオーソドックスと比較すると乏しく感じます(≒主観的な感想≠客観的な統計)。

また、前鋸筋が太い場合は肩甲骨の外転の強調による大胸筋構造(出力)の合理化と肩甲骨の剛性の高まりに伴う力積の増大が起こります。
つまり二軸打法はパンチ力を強化します。
詳しくはその一を参照してください。

しかし、ここで問題が起こります。
相手は正面にいます。あるいは投擲は前方に向けて行います。
体幹の捻転
体幹の捻転が要求されす。
リディック・ボウは捻転が強く、横を向く程。背中の溝の深さから腸腰筋の太さ窺えます。

胸椎の回旋側屈

胸椎の回旋側屈

胸椎の回旋側屈
肩関節平面を前方へ向ける為の胸椎の側屈回旋です。
一流ボクサーは強く体を捻転させますが、それは腰(≒骨盤)や腰椎を回しているのではなく、胸椎を側屈回旋させているからです。
一般的に言われている、「腰を回す」は、おそらくは強い選手の動作を観察してその解釈を誤ったか、観察したヒトの認知が大きく歪んでいたのに起因しているのではないかと考えています。
強いパンチ⇒大きな仕事をする⇒エネルギーが大きい⇒体重移動が大きい⇒強く腰を回す⇒パンチが強い
という風に一般的な指導者レベルの認知には勾配があります。全体像は正しく見えますが、細部や途中の変形に無数の矛盾があります。
この結論ありきのトップダウング型の思考は、日本の汎ゆる場所で見られると僕は感じます。おそらく、この国の暗黙的な前提です。太平洋戦争戦争は典型。
「努力した⇒仕事を沢山した⇒偉い(≠効率が高い)」という、暗黙的に共有される戦時下のような価値観は、根本的には体重移動(≠頑張る)ことをボクサーに要請したい指導者の集合意識から発生しているような気がしています(主観的感想)。
そんな指導者はフラフラふにゃふにゃやってるのに上手なボクサーが憎いのだと思います。自分が否定されたと感じますから。
ある視点からならふにゃふにゃできることは大切です。
体の剛性を示しているから。

大胸筋の慣性力の合理化
閑話休題。
その一で力積のベクトルの大きさが最大化される為には単位時間毎の力が大きいこと(長い時間力を作用させる)とその向きが一致していることが必要だと説明しました。
※力積は力の積分
腸腰筋と腰方形筋の収縮に伴う二軸による肩甲骨平面への拳の放り投げは、単位時間毎のベクトルの向きを一致させます。
すなわち、腕を加速させ続けることで、その慣性力を大胸筋の筋腱の弾性(SSC)に変換できます。
すなわち、大胸筋の剛性が高まります。
体幹の剛性の記事を思い出してください。上腕の剛性が高まることはパンチの加速に寄与します。
太い前鋸筋による肩甲骨ロックは、前回の記事で説明したように、投球のリリースポイントと大胸筋による水平内転力の最大値の座標を近づけます。
一般的な投手やボクサーは、上記の座標がズレている為、その差の分だけ衝突に向けて力が減衰します。理論上は。
一方で、肩甲骨ロックは上記のズレが小さい為、前者と比較すると衝突の瞬間まで拳の勢いが増します。
物体に力が作用する時間を伸ばすことは力積を、すなわちパンチ力を増大させます。
結論。
クロフォードのようにパンチは外側へ。その為必要な能力は次回に譲ります。
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