「ハムケツ推進」の原理とサイレントピリオドによる重力と慣性力の利用

運動理論
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何度かに渡って人体には慣性力と重力を利用しようとする仕組みがあるとお話していますが、今回もその続きです。

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サイレントピリオドと重力と慣性力

脱力が大切だって武道ではよく言われますよね。
スポーツでも強い選手は力が抜けていてしなやかです。
その理由を論理的に説明するには「サイレントピリオド」という筋肉の性質を理解している必要があります。
そして、それは同時に僕の造語である「骨格立ち」することの重要性にも繋がっていきます。

サイレントピリオドは別名「動作前筋放電休止期」と呼ばれ、大きな筋力の発揮直前に起こる筋肉の弛緩のことを言います。

今回は簡単に「なぜ筋肉は弛緩する必要がるのか」という本質的なことを説明します。
僕のブログの読者様ならサイレントピリオドが重力を利用することは何となく理解されていると思いますが、復習だと思ってお読みください。

サイレントピリオドと重力

サイレントピリオドは重力による位置エネルギーを利用する仕組みです。
筋肉が弛緩するとは、一瞬体が落下することを意味します。
その落下のエネルギーは骨格を繋ぐ靭帯や腱に弾性エネルギーとして貯蔵され、筋肉の収縮に利用されます。

伸張反射
引っ張られると縮む筋肉の反射。

グラフから分かる通り短縮性収縮は大きな筋力を発揮するのに時間がかかりますが、伸張性収縮は、短い時間で高い筋力を発揮できます。

伸張反射は伸張性収縮です。

力が入っていると落下に干渉するので、力は完全に抜いたほうが利用できるエネルギーが大きくなります。
つまり脱力が上手い人ほど大きな筋力を発揮できることですね。

アスリートの動きがしなやかである理由です。

逆に力んでギクシャク動く人ほど発揮できる筋力が弱くなります。

サイレントピリオドと慣性力

サイレントピリオドによる恩恵はそれだけではありません。
慣性力も利用できます。

ゴムのついたボーリング玉を想像してください。
ゴムを引っ張ってもボーリング玉は動かずその場に留まってゴムが伸びます。
この時ゴムには弾性エネルギーが貯蔵されます。
そのエネルギーは指を離したときにゴムの運動エネルギーへと変換されます。
ボーリング玉がゴムを引っ張ろうとする見かけ上の力が慣性力(地球の地上だと摩擦とか空気抵抗とかもある)です。

体幹が回転している間、腕はサイレントピリオドによりその場で落下します。
肩が腕に先行することで慣性力により大胸筋や肩が引き伸ばされます。

体幹が加速度を失うと慣性力は消失するので、ゴムから指を離したときのように、伸張反射と腱の弾性を介してエネルギーを受けとった腕が加速していきます。

ハムケツ推進

ハムケツ推進は僕の造語です。サイレントピリオドとハムケツ推進を見ていきます。

ハムケツに荷重しています。
左足が浮いていいますね。
これは意図的に行っているのではなく、「強く腕を投げる」意識と結びつけられた反射によって行われています。

投擲時の予備動作が勝手に行われるようなもんです。

この時、骨盤の縦回転が起こり左図のような回転力がハムケツを引き伸ばしています。

右の股関節に骨盤がぶら下がるような感じですね。

以下の図で説明します。

青の▼が両脚に荷重した時の骨盤の本来の位置。

オレンジの▼はサイレントピリオドによる筋弛緩で上半身と左半身が脱力、右の股関節に骨盤がぶら下がった状態を表しています。

この時の回転力は上図のようになることは直観できると思います。

ハムケツの収縮方向を見てください。

これは右脚です。

強力な収縮を行う大殿筋は斜め下、中殿筋、ハムストリングスは下向きです。

骨盤の縦回転は収縮の逆方向へハムケツを伸張します。

大殿筋は大腿骨に対して斜め方向、ハムストリングスは大腿骨に沿って力を発揮します。

青が収縮を開始した時の大殿筋の収縮方向、黒が身体の推進方向。

斜め上方向です。

ハムストリングスは骨盤を上へ押して身体を持ち上げます。

推進中の大殿筋の収縮方向。

蹴り脚が傾いていくのでハムケツの収縮のベクトル(オレンジと青)が徐々に水平に近づいていきます。
この辺りの角度からハムストリングスは水平方向への推進力を持ち始めます。

収縮の逆方向へ骨盤を押す力になるので、黒の矢印の方向へ身体を推進します。

これがハムケツ推進です。
地面と接地し続けてることで床反力(重力の反作用)を受け続けます。

ピョンと跳ぶイメージでは実現できません。

スーッと滑り込むようなイメージです。

ここまでは推進力を生むサイレントピリオド。
次にこの推進力を末端へ伝えていく動作を見ていきます。

軸脚が接地し並進運動が回転運動へ変わる直前に反射により腕が落下を開始。

この時斜め方向へ腕が落下しているのは大殿筋の収縮方向が関係しています。

大殿筋が収縮すると、右股関節はそれを軸に赤い矢印の方向へ回転(外旋)させられます。

その反作用で地面を押して身体は推進するんですが、同時に赤い矢印の方向へ右半身(右半身のさらに右側)は開いていきます。

なので肩が後ろへ引かれます。

もう一つ、腕が斜め下方向(オレンジ)へ落下する理由は、肘関節の回転軸方向への制約があるからです。

腕は真っすぐ落下したいんだけど、上半身と一緒に肘関節の軸は斜めになるので、それにそって落下しなければなりません。

重力と慣性によってグラブは斜め後方へ落下します。

腕の慣性力により胸、肩、上腕へ貯蔵された弾性エネルギーの解放と、伸張反射による強力な収縮が開始されます。

さらに、推進によって伸張されていた内転筋群が接地の衝撃、奥脚の離地と共に伸張反射。

大胸筋、肩腕と内転筋群のSSCにより腕が高速で振り出されます。

意識的な動作の弊害

ダラダラと冗長な話なってしまったので要点をまとめます。

意識的な動作が自動システムによる芸術的な連動を妨げてはいけません。
腕を筋力で持ち上げようとしたり、膝を必要以上(自然にほんの少し曲がる)に曲げて筋力で持ち上げてはいけないんです。
何故なら、構造的な力みがサイレントピリオドに起因した強力な筋収縮を邪魔するからです。

上半身は股関節への重しにして、腕は胸郭に乗せて肩にぶら下げます。
構造的に脱力できる姿勢を作ります。

頑張らないこと。
母指球荷重して膝を曲げて、ガードを高く上げて疲れる。
人より我慢して、それだけで努力しているような気持になります。
しかし危険な感情です。

スポーツにおける技術の向上とは楽に強く速く動くを追求することなのです。
頑張るというのはその真逆、下手になるの方向への全力疾走であると換言できます。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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