【腸腰筋】ゲンナディ・ゴロフキンの強さに迫る PART 2 【構造的脱力】

運動理論
運動理論選手分析

ゴロフキン分析パート2です。
前回はジャブが当たる理由とフックが強い理由について分析してみました。

今回はゴロフキン選手の骨格からパンチ力の秘密や下半身がスーパーボールのように跳ねる理由について解説してみます。

「パンチを強く打つためのトレーニングをしたい」「身体能力を上げたい」という方の参考になればと思います。

ゴロフキン選手はスピードはあまりありませんが、僕はその動きから物凄いバネを感じます。
特に下半身のバネです。

今回ゴロフキン選手を観察し分析して、やっぱり下半身の強さを再認識しました。
ジャブの時や強いパンチを打つ時に身体が強く弾んでいるように見えます。

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ゴロフキンのスポーツ向きの骨格

骨盤の前傾

まず一つはゴロフキン選手の特徴的な骨格について解説します。
ネグロイド(黒人)にはほぼ見られる特徴で、コーカソイド(白人)やモンゴロイド(黄色人種)に少ない特徴があります。
それが骨盤の前傾です。
ネグロイドが陸上などのスポーツ分野に強い一つの要因となっています。

史上最速のボルト選手は骨盤が前傾しみぞおちが突き出しています。

少し解剖学的な話になってしまいますが、がんばって解説してみたいと思います。

図は腸腰筋です。

腸腰筋は背骨のみぞおち辺りから骨盤と股関節の付け根の付近に付着しています。

収縮すると腿を持ち上げて股関節に腿を近づける働きがあります。

ハムストリングスは人間の後ろ側の筋肉で、骨盤と膝の裏辺りに付着しています。

この筋肉が収縮すると後ろ向きに腿が回転しながら骨盤に引き寄せられます。
エビ反りみたいな感じですね。

地面を蹴って体を前へ進めてくれる筋肉です。

腸腰筋が強いと骨盤が前腿側に引っ張られるので、骨盤が前傾します。
すると骨盤の裏側についている拮抗筋であるハムストリングス引っ張られてハムストリングスの腱に張力がかかります。

バネを引っ張ると縮みますよね。
腸腰筋が強いと常にハムストリングスのバネを引っ張った状態になります。

つまりハムストリングスに常にアクセルがかかった状態です。

ネグロイドがスプリントに強い理由ですね。

ゴロフキン選手は異様な身体の形をしていると感じたことありませんか?

この画像のゴロフキン選手は猫背に見えますが猫背ではありません。
真逆です。
アジア人に多い骨盤が後傾したいわゆる猫背は運動に不向きな体型ですが、ゴロフキン選手は骨盤が前傾し、それに伴って背骨が湾曲しています。
明らかに運動向きの体型です。

この画像では驚くほど背中が湾曲して分厚い体をしています。
ロマチェンコ選手もゴロフキン選手と似たような体型をしています。
ネグロイドも骨盤が前傾し背骨が湾曲していますが、それと比較すると微妙に違います。
肩が丸まって肩甲骨が内側に曲がっているように見えます。

これは以下で述べていく前鋸筋が強く収縮し肩甲骨を外転させているからだと考えています。
ゴロフキン選手のような分厚い骨格はコーカソイド(白人)のトップアスリートに多い骨格かなあと思っています。

この画像を見ただけでゴロフキン選手は腸腰筋が強く収縮していて、ハムストリングスに大きな張力がかかり常にアクセルがかかった状態であることが窺えますね。

分厚い上半身

腸腰筋の強い収縮により背骨が湾曲していることの他に、ゴロフキン選手が分厚い体をしている要因について考えてみます。

前鋸筋(ぜんきょきん)は、胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうちの一つ。肋骨(第1~第9)腱弓を起始とし、肩甲骨と胸郭との間を後上方に走りながら、肩甲骨に停止する。
肩甲骨を前外方に引き、肩甲骨が固定されていると肋骨を引き上げる作用がある。

Wikipedia

前鋸筋がボコっと盛り上がっているのが分かるでしょうか。

僕はゴロフキン選手はこの前鋸筋がかなり強いと考えています。
肩甲骨と肋骨に付着している前鋸筋が肩甲骨を強く引き付けるので肩が内側に向かって曲がるので楕円形の分厚い体になります。

肩甲骨はパンチの衝撃を受け止める骨になります。
これを引き寄せる力が強いということはパンチの衝撃に負けにくいということです。
パンチの衝撃に負けて肩甲骨が押し返されたりグラついてしまうとパンチの衝撃が分散してしまいます。

ゴロフキン選手は前鋸筋が強いので、パンチの衝撃を効率よく伝えられるのだと考察しています。
またPART 1で取り上げた上半身によるSSCにおいてもゴロフキン選手の前鋸筋はパンチ力に起因しているはずです。

骨格の構造による脱力

もう少しだけ骨格の話を深めてみます。
身体を前へ進める強さと上手さを競う陸上競技では特にネグロイドの骨格的な特性が有利に働くので、トップレベルの選手の身体的な特徴の類似性は顕著になります。
その好例としてウサイン・ボルト選手を挙げます。
お暇なら以下の動画を見てみてください。
やる気なさそーにダラダラと位置について立ち走り出します。
日本なら怒られそうな場面ですが、これが速さの秘密です。

以下ウサイン・ボルト選手の背面です。

湾曲した背骨に押し出されるように外側に広がり外転した肩甲骨。
胸郭は湾曲した背骨に上からかぶさるような形になっています。
肩甲骨はその胸郭の上にのっかるように付着。
これにより腕を筋力で持ち上げる必要がないので僧帽筋が脱力します。
必然的に腕が垂れ下がったなで肩です。
長い腕が腿の辺りにまで伸びてさらに長く見えます。

この画像は頭は前向きについていて、いわゆる猫背のように見えます。
しかし全く違います。

骨盤の前傾に合わせて腰椎が前弯し胸椎が後弯、頸椎が前弯するので頭部は前へ突き出るのがボルト選手の骨格であれば自然なんです。
骨盤の前傾により背骨がS字に曲がっているから猫背に見えるんです。

外側に盛り上がった背中も特徴的ですよね。

胸郭は背骨について内臓を覆うような構造をしています。
骨盤が前傾し背骨が直立せず湾曲が強調されると丁度肋骨が背骨にぶら下がるような形になります。

これにより胸郭を筋で支える度合いが低下し無駄な筋の脱力に繋がるはずです。

この骨格の特性により背中が脱力するので、肩甲骨や肩関節の可動域が広がります。

日常生活においても無駄な筋の緊張から解放されるので、「力み癖」がつきません。

逆に言うとこの骨格になり難いモンゴロイドは「力み癖」がつきやすいとも言えます。

肩甲骨と上腕を繋ぐ肩関節は股関節と同じ球関節です。
球関節なので股関節と同様に3Dに動きます。
そして肩関節は人体最大の可動域のある関節なので本来であれば腕はダイナミックに動かせます。

しかし上半身を乗せて安定させる股関節と違い腕は肩にぶら下がっているだけです。
なのでダイナミックに動かせる反面、安定性が低いんです。

肩関節と繋がっている肩甲骨も上半身との関節は有さず、鎖骨によって上半身に繋がれて張り付いているだけなので、基本的には周囲の筋によって支えられています。
なので、重力に逆らって安定させる為に筋を動員しています。

骨格の構造で重力に抗えず、筋力によって上半身を支える「力み癖」による緊張が長期間にわたって続くことにより血行が低下し、肩こりや肩が上がらなくなる四十肩へ繋がっていきます。

この画像のボルト選手は力が抜けてスラっと立っている印象を受けます。
上半身を筋肉で支えず股関節の上に上半身の重さを乗せて、骨格の構造で支えるので力みが生まれにくいのだと考えます。

無駄な力が抜けるからふにゃふにゃと歩いている、走っているように見えます。
構造的に体重を支えるから上半身の力が抜け、肩甲骨、ひいては上半身を使ったダイナミックで力強い動きに繋がっていきます。

力み癖があると手先や足先によるちょこまかとした小手先に動きになり体幹の大きな筋を動員できないのでパワーとスピードが出せません。

全ては繋がっています。

ネグロイドのアスリートが脱力しダラダラ動いているように見えるのはこの骨格が強く影響していると僕は考えています。

力み癖のないボルト選手はこの場面では僧帽筋や肩甲骨を支えるその他の筋群の脱力により驚くほど肩が落下しています。
腕や肩甲骨周辺の質量の落下により利用できる位置エネルギーを増やせるので、地面へ大きな力を加えられます。
地面から返ってくる反力が大きくなるということです。

逆に今度は異様なほど肩が上へ移動します。
上の画像とは逆に肩甲骨や腕を含む質量の運動エネルギーにより身体が持ち上げられ推進力を生み出すことができます。

ボルト選手はネグロイドのアスリートの中でも特に脱力してふにゃふにゃ走っているように見えますが、この脱力があるからこそ効率的にエネルギーを推進力へ変換でき、世界最大のストライドを生み出すことができるのだと僕は考えています。

これはサッカーをするボルト選手なんですが、タコ踊りしてふざけているように見えますよね。
でもこれがボルト選手の本気で、フィジカルエリートたる所以です。
背中が脱力してぐにゃぐにゃに動かせます。

肩甲骨の重心移動のエネルギーを活用することで初動が速くなり、また重心移動を相手にも読まれにくくなります。
上半身の脱力によりダイナミックな動きを実現しています。

ゴロフキン選手もやたらメリハリのある身体をしていて、反った背骨にぶら下がるように肋骨が繋がり、その上に肩甲骨がのっかっています。
そして背骨に押し出されるように肩は内側に曲がっています。

ボル選手やゴロフキン選手の持つこの骨格は『動物的』なんです。

馬の骨格です。
湾曲した背骨と楕円形の胸郭、それに沿うように前へ(足側)向かって肩甲骨が付着しています。

股関節は常に屈曲位(骨盤の前傾位と同義)なので、常にハムストリングスには張力が加えられています。

四足歩行動物の場合は前鋸筋(腹鋸筋)は肩甲骨から胸郭に張り付いて身体を支えるかなり強靭な筋になります。
ゴロフキン選手が動物的と言うのは楕円形の上半身を作っているであろうこの前鋸筋の強さも表現しています。

骨格を見ても動物がしなやかで力強いことは納得できます。

骨格を変えろ

既述のように骨格的な構造により体重を支え、体幹部の大きな筋や深層筋、身体背部の筋を運動に動員するのが得意なネグロイドと比較するとモンゴロイドは体幹部を運動に動員するのが苦手で手先や足先の小手先の運動になる傾向があります。
よって末端のふくらはぎや足首、前腕の筋を運動に動員する傾向にあるため末端が太くなる傾向にあります。
見た目としては手足が太く体幹や背中が平ぺったく凹凸が少ない体型をしています。

身体の末端の質量が増加するとそれを動かすのに大きな力が必要とされ、脚振りや腕振りが遅くなります(重りを巻いて走るようなもの)。
これが一つ日本人などのアジア人が運動に不向きであるとされる理由です。
また、これは僕の考えと感覚的な話になってしまいますが骨格の構造で身体を支え切れないので無駄な筋力が必要となり、『力み癖』があるためさらに運動が苦手であると考えています。

モンゴロイドで運動が得意な人は手足が細く体幹が強いネグロイドの特徴を高確率で持っています。
特に身体が大きくなればなるほど、それが顕著です。
日本人ボクサーだと村田諒太選手や内山高志さんが楕円形でメリハリのある身体をしています。

まとめ

ゴロフキン選手は運動に不利な猫背に見えますが、実はその逆で明らかに運動向きの骨格をしています。
逆に言えばゴロフキン選手の骨格に近づけるためトレーニングの開発が一つの解ではないでしょうか。

そして腸腰筋やハムストリングス、前鋸筋のトレーニングでゴロフキン選手の骨格に近づけるだけでなく、鍛えた筋を使う『(コツ)感覚』も掴まなければなりません。
具体的にはハムストリングスのSSCと脱力の感覚です。
「ハムストリングスを使え!とか脱力しろ!」で脱力できれば苦労しません。

僕はこの感覚を掴むのにとても苦労しています。
でもずっとこれに取り組んできて、今年くらいからこの感覚を少しづつ掴み始めました。
脱力とそれに伴う股関節のバウンドです。
感覚を研ぎ澄ませて、感覚を掴みやすいトレーニングを実践すればできます。

具体的には感覚を覚えるトレーニングを一部紹介すると体重の6割くらいのハイクリーンやスナッチが効果的です。
他にも股関節バウンドを意識した走りと縄跳び、デブスジャンプなども感覚を掴みやすいと思います。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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