【アハ体験ジャブ】ゲンナディ・ゴロフキンの強さに迫る【SSCフック】

選手分析
選手分析

ゴロフキン選手は僕がボクシングを始めるようになった時にミドル級でもPFPでも最強と敵なしの最強だと言われていて、その強さに僕は魅了されました。
僕はゴロフキン選手の強さを研究してボクシングにおいて何が重要なのかをほんの少しだけ理解することができました。

今回の記事はゴロフキン選手のように「強いフックが打ちたい」「強いパンチを当てられるようになりたい」「ジャブが苦手」という方の参考になればと思います。

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SSC

今回の記事は「SSC」というスポーツのパフォーマンスを向上させるテクニックの知識が必要になります。
以下の記事を参照ください。

大きな力を発揮する予備動作を巧妙に隠す

ゴロフキン選手はスピードが速い方ではありません。
だけどジャブの的中率は世界でもトップレベルです。

それはなぜかと言えば、一つには予備動作を読ませない技術があることが挙げられます。

『予備動作』っていうのはあまり聞きなれない言葉かもしれませんがスポーツにおける、ある動作を行う前の準備動作のことを言います。
例えば高く跳躍しようとしたら力を溜める為に一度下半身を屈曲しますよね。
この動作のことを予備動作と呼びます。

ハードパンチは超能力ではありません。
なので、必ず力を溜める動作とそれを効率よく拳へ伝える動作が必要になります。
※先天的に力を溜めやすい骨格や発揮しやすい筋の特性はあります。

強いパンチを打とうとすると、どうしても大きな力を溜める為に必要な下半身の屈曲動作やその力を上手く伝えるための「運動連鎖」、腕を引く「SSC」動作であったりが必要になってきます。
これが強いパンチにおける予備動作です。
大きな動作なので相手に読まれやすく、当てるのが難しくなります。

ロマチェンコ選手は強いパンチを打つたない代わりに、予備動作を減らし動作の始動速度を上げています。

ゴロフキン選手には予備動作がない…と言いたいところですが、実はあります。
既述の通り予備動作がなければあんなジャブは打てません。
巧妙に隠しているんです。

ゴロフキン選手をよく見るとジャブの時はゆっくり、静かに前へ体重移動しています。
この動きには慌ただしさがなく、とても自然で無駄がありません。
なので相手はジャブの気配に気がつくことができないんです。
拳が動き出してからでは人間の反応速度では避けることは不可能です。
ボクサーは相手の体に現れる微妙な変化を感じ取り動きを無意識に予測しています。
ゴロフキン選手はその変化を人間に感じ取れるか取れないかくらいの微妙さに抑えて巧妙に予備動作を隠しています。

直感に反してしまいますが、実は『ゆっくり』というのがミソです。
アハ体験の動画がとても分かりやすいですが、人間は微妙な変化には無関心なんです。
ゆっくり動いている物には注意が向きにくいという性質があります。

子供の頃に昆虫採集をしたことがある方はご存知と思いますが、ゆっくりと網を下ろした方が虫は逃げていきません。
あれは虫が余裕をかましているのではなく、ゆっくりと近づく網に注意が向かず「気がついていない」ってことなんです。

ゴロフキン選手の体重移動は相手からすると『アハ体験』です。
殴られた後に殴られたことに気がつきます。

最高のジャブです。

打ち終わりに上半身を流さず、体幹にブレーキをかけることで体幹のエネルギーを全て拳へ渡しています。

運動連鎖
ブレーキ効果

拳の衝突の瞬間に肩がぐにゃりと曲がります。
肩甲骨の外転で『肩甲骨→上腕→前腕→拳』までを一本の硬い棒にして相手の顔面からの反力に負けないようにしています。

この動画を参考にしました

SSCによる強いフック

ゴロフキン選手はSSCのテクニックによって強いフックを実現しています。

試合中の緊張感にも関わらずこの圧倒的な可動域。
後述する『脱力』です。

脱力して腕を引くと胸と肩の筋が伸張され「伸張反射」が起こります。

また腕をかなり後方まで引いているので、腕と体幹が遠ざかって肩の腱を伸張します。
この時肩の腱に体幹と腕の運動エネルギーの合計が弾性エネルギーとして蓄えられているはずです。

肩の腱に溜めたエネルギーを一気に拳の運動エネルギーへ変換しています。
既述の通り、腱に貯蔵された腕と体幹の運動エネルギーの合算を叩き込むので半端じゃない強さであるはずです。

さらに脱力から一気に全身を緊張させて体を固くすることで衝突時の力の分散を防いでいます。

筋の脱力と収縮

ゴロフキン選手を詳細に見てみると色んなことが見えて来ます。
特に注目すべきは脱力です。
ゴロフキン選手の動きは柔軟ですよね。
他のどの選手より僕の目にはふにゃふにゃに見えます。

常に脱力しているから、上記の画像のような関節の可動域が確保できます。
関節の可動域が広がるから長い時間、拳へ力を加えることができます。
長い時間力を加えると物体の運動量は大きくなるので(厳密に話すと面倒なので割愛します)、衝突した時の力が大きくなります。
ゴロフキン選手は地面から反力をもらう時間が長く、またその力を時間をかけて無駄なく拳へ力を伝えていることがあのパンチ力の一つの要因であると僕は分析しています。

技術的にそれが引き出せる『感覚』が磨かれている証拠でもありますが、僕が驚くのは試合という緊張感のある場面であれだけリラックスできる『メンタル』です。
鬼でもない限り本気の殴り合いの最中にゴロフキン選手みたいな脱力なんてできませんよね。

また既述のようにゴロフキン選手は関節を固めるタイミングを熟知していると僕は考えています。
これにより力の分散を最小限に抑えます。

これは野木トレーナーとの議題にも挙がったんですが、『ゴロフキン vs. ルビオ』。
ゴロフキン選手がルビオ選手のおでこに振り下ろすように打ったKOパンチとなった左フック。

拳が衝突する瞬間に手首を固めて力の分散を防いでいます(厳密には少し手首がグラついて力はロスしていますが)。
普通の人なら頭部からの反力に跳ね返されて手首痛めますよ。

ゴロフキン選手は手首がめちゃんこ強そうです。
手首が強そうっていうのは、単純な腕力もさることながら脱力と筋の収縮のタイミングが抜群に上手いってことです。
大抵の場合は力を入れるべき場面や抜くべき場面でそれができていないので怪我をします。

ゴロフキン選手は拳を衝突させる瞬間に力を逃がさないように関節をガチっと固定する技術(感覚)を持っているはずです。

ケトルベルで手首のトレーニングをしています

スピードじゃない

ゴロフキン選手を見てもらえば分かると思うんですが、パンチが当たる要因はスピードだけじゃないんです。
むしろ大切なのは緩急です。

予備動作のないジャブを打って相手をのけぞらせた後に一気にスピードアップして距離を詰めます。
相手はスピードの変化に本能的に驚いて次の攻撃への反応が無意識下で遅れてしまいます。

ポイントは意識的に驚いたかどうかではありません。
人間は無意識化で動揺します。
パニックに陥って普段はしないミスをします。

選手は動揺していないように見えて、初めての動きを体験した時や急激な変化に無意識下で動揺しています。
ゴロフキン選手はその隙を上手く突いてハードパンチを当てているんです。

どの動作にSSC動作が必要でどの動作に不要なのか

ゴロフキン選手のジャブは巧妙に予備動作を隠しています。
相手はほとんどジャブのタイミングが読めません。
でも、フックを強振する時は大きな予備動作で力を溜めています。
このフックはそれ単体では相手に動きを読まれてなかなか当たりません。

しかしジャブを当ててしまえば相手はバランスを崩してしまうのでゴロフキン選手の特大フックを当てることができます。
これがゴロフキン選手の得意形で、これでバッタバッタとなぎ倒してきました。
PFP分析でも解説しましたが、無駄を省いた『完成されたワンパターン』なんです。
つまりゴロフキン選手のジャブが攻撃の戦略の生命線になっています。

逆にジャブが当たらなければフックも当たり難いと言えます。
距離によってゴロフキン選手のジャブを封じたカネロ・アルバレス選手やサウスポーによってジャブの軌道を塞いだダニエル・ジェイコブス選手との試合はジャブが当たらず得意のフックが封じ込まれました。

まとめ

どの動作にSSC動作を組み込んで自分の戦略を強化するか。
ゴロフキン選手はモーションレスジャブの長所で特大フックの短所を補うことによって大きな相乗効果を発揮していると僕は考えています。
特大フックの短所を隠してしまえば、物凄い効果を発揮します。

『完成されたワンパターン』ですが問題点はジャブが当たらないとフックに繋がらないことです。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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