複素共役
ベクトルについて知りたかっただけなのに。
ベクトルの内積の定義「第一変数に関する線型性」。
また別の記事で取り上げますので、掻い摘んで話します。
それは、あるベクトルを分解しxとyを作り出し、それをzに作用させた時に、その結果が元々のベクトルx+yにzを作用させた結果と変わらないでほしい、という願い。
実数空間なら
(x+y)z=xz+yz
が同じであってほしい。自然な願いだと思う。もしそうでないならヒトには世界を理解できない。
ヒトは、半分にした二つを計りに乗せたら、元々の質量を上回る(下回る)ような物体を知らない…はず。
定義の文脈としてはこんな感じだろうと。
ただ、「第一変数に関する線型性」と「第二変数に関する共軛線型性」の二つが必要な理由は何ぞやと。何故同じような法則を二つ用意したのか。
複素共役
数学において、複素共役(複素共軛、ふくそきょうやく、英: complex conjugate)とは、複素数の虚部を反数にした複素数をとる操作(写像)のことである。複素数 z の共役複素数を記号で z で表す[注釈 1]
複素平面
複素数体 ℂ 上のベクトル空間 V 上で定義された二変数の写像 ⟨,⟩: V × V → ℂ が内積あるいはエルミート内積であるとは、x, y, z ∈ V および λ ∈ ℂ を任意として
第一変数に関する線型性:$ ⟨λx + y, z⟩ = λ⟨x, z⟩ + ⟨y, z⟩;$
第二変数に関する共軛線型性(英語版):$ ⟨x, λy + z⟩ = \bar{λ}⟨x, y⟩ + ⟨x, z⟩;$
エルミート対称性: $⟨x, y⟩ = \bar{ ⟨y,x⟩};$
非退化性: V の元 x に対して $⟨x, x⟩ = 0$ ならば $x = 0;$
半正定値性: V の任意の元 x に対して $ ⟨x, x⟩ ≥ 0$
を満たすことを言う(ここで上付きのバー • は複素共役を表す)。すなわち、複素ベクトル空間上の内積は非退化正定値のエルミート形式である[注釈 1]。
複素共役は虚部の反数=逆元。
虚数は複素数平面に元に回転力?裏返す?を与える。
いきなり下の質問に行き着いたのではありません。複素共役についてAIを問い詰め続けた帰結です。
質問
複素共役を定義しない場合は、虚数の長さが負となり、普遍的なヒトの感覚で理解できない。でも実数における対称関係のようなものを用いて複素数空間でも考えたい。
だからエルミート性を定義して虚数のノルム内での挙動を制御できるようにした。
その通りです!あなたの理解は、数学の歴史において「内積」という概念がどうして今の形に設計されたかという**核心的な動機(インセンティブ)**を完璧に捉えています。
まさに、**「人間の直感を守るために、数学的なルールを定義した」**という順序なのです。
1. 人間の感覚(直感)を守るための定義
人間にとって「長さ(ノルム)」は、以下の3つの性質を絶対に持っていてほしいものです。
-
0以上である(負の長さなんて想像できない)
-
0のときだけ、存在しない(0ベクトル)
-
向きを変えても変わらない(回転しても長さは同じであってほしい)
もし複素共役を使わず、実数と同じように $\langle z, z \rangle = z^2$ と計算してしまったら、虚数 $i$ の長さは $-1$ となり、上記の「人間の感覚」が崩壊してしまいます。
2. 「対称性」のアップデート
実数における「対称関係(入れ替えても同じ)」という美しい性質を、複素数でも**「できるだけ壊さずに」持ち込みたい。そこで数学者が考えたのが、「鏡合わせの対称性(エルミート性)」**です。
-
実数: $\langle x, y \rangle = \langle y, x \rangle$(そのまま対称)
-
複素数: $\langle x, y \rangle = \overline{\langle y, x \rangle}$(鏡を通せば対称)
これは、単なる妥協ではなく、**「複素数の本質(回転)を考慮した上での、最も自然な対称性の形」**でした。
3. 「制御」としてのエルミート性
あなたが「挙動を制御できる」と表現されたのは非常に的確です。
エルミート性を定義することによって、複素数という「2次元的に自由に動ける数」を使いながらも、その**「自分自身との関係(ノルム)」を測る時だけは、強制的に1次元の実数軸上に引きずり戻して固定する**ことができるようになりました。
複素共役
複素共役役虚数を定義したから必要になった。虚数を定義したのは、二乗して-1になる数があると計算が楽になるから。だからあってほしい。また、ヒトの認識と矛盾しないように、ノルム≒長さ≒大きさは正の実数であってほしい。
以上の願いが複素共役の発生源。
仮に複素共役を定義しない場合の対称関係は
1. 「大きさ」の前提条件
数学的に「大きさ(ノルム)」として成立するためには、自分自身との内積 $\langle z, z \rangle$ が以下の条件を満たす必要があります。
-
実数であること($\langle z, z \rangle \in \mathbb{R}$)
-
0以上であること($\langle z, z \rangle \ge 0$)
もしエルミート性がない、つまり $\langle x, y \rangle = \langle y, x \rangle$ (単純な対称性)であると仮定して、複素数 $z = i$ のノルムを計算してみます。
2. 記号操作による崩壊の証明
複素数 $i$ (虚数単位)をベクトルと見なし、その「大きさの2乗」を計算します。
エルミート性がない場合(単純な積: $z \cdot z$)
エルミート性(複素共役)を無視して、実数と同じルールで計算すると:
-
結果: $\langle i, i \rangle = -1$
- 問題: 大きさの2乗がマイナスになりました。この「大きさ」を求めようとすると $\sqrt{-1} = i$ となり、**「長さが虚数」**という、現実の数直線上で比較不可能な記号になってしまいます。
エルミート性がある場合(共役の導入: $z \cdot \bar{z}$)エルミート性の定義 $\langle x, y \rangle = \overline{\langle y, x \rangle}$ に基づき、自分自身との内積 $\langle i, i \rangle$ を計算します。性質 $\langle \alpha x, y \rangle = \alpha \langle x, y \rangle$ より、スカラー $i$ を外に出すと:$\langle i \cdot 1, i \cdot 1 \rangle = i \times \langle 1, i \rangle$次に、右側の $i$ を外に出す際、**共役線形性(エルミート性から導かれるルール)**を適用します:$\langle 1, i \cdot 1 \rangle = \bar{i} \langle 1, 1 \rangle$
- これを合わせると:
$$\langle i, i \rangle = i \times \bar{i} \times \langle 1, 1 \rangle$$
- 複素共役の定義 $\bar{i} = -i$ を代入します:
$$\langle i, i \rangle = i \times (-i) \times 1 = -(i^2) = -(-1) = 1$$
-
結果: $\langle i, i \rangle = 1$ (正の実数)
内積=ノルム=大きさ。
大きさがマイナスになるのは困ります。ので、そうならないような要素を追加。それが複素共役。
これが、実数空間の周りをくるくると回る虚数のイメージなのだと思います。
虚数は実数空間と重なる別の空間を動き回り、一瞬だけ、実数空間に現れる。その瞬間だけ実数の形の虚数を観測できる。
実数に現れるまでの時間は、虚数は実数と干渉しない複素空間にいる。
量子力学でよく聞く話。
虚数がいるのがアリストテレスの言う形而上世界、プラトンの言うイデア界


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