それ、たまたま上手くいっただけ。

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「みんながそう言っているし、波風立てないのが一番賢い生存戦略だ」

私たちの社会や組織には、こうした「空気」や「常識」が満ちあふれています。しかし、システム論や物理学、そして歴史のフィルターを通して冷徹に観察すると、それらのほとんどは単なる「局所解(たまたま特定の環境だけで通用した一時的な正解)」に過ぎません。

局所解の一般化

今回は、なぜ私たち人間がこの「局所解」を「普遍的な一般解(いつでもどこでも通用する絶対の正解)」と錯覚してしまうのか、その脳内バグの論理を分かりやすく解き明かします。

1. そもそも「局所解」とは何か?

まずは、数式や難しい定義を抜きにしてイメージで理解しましょう。

あなたが深い霧に包まれた山脈を歩いているとします。目指すのは「最も標高が低い場所(=全体最適解)」です。

しばらく歩くと、すり鉢状の小さなくぼ地(谷底)にたどり着きました。周囲はどこを見渡しても登り坂です。

「よし、ここがこの世界で一番低い場所に違いない!」

そう確信してその場にとどまること――これが「局所解(ローカル・ミニマ厶)」に捕まった状態です。

しかし、霧の先には、今いる谷底よりもはるかに低い「本当の平野(全体最適解)」が広がっています。ただ、そこへ行くためには、一度目の前の「登り坂(一時的な痛みを伴う変化)」を越えなければなりません。人間は、この「一度登る」というコストを嫌い、最初に見つけた小さなくぼ地を「世界の中心」と錯覚してしまうのです。

人は過信の谷を転げ落ちる痛みで我に返る

2. 錯覚が生まれる3つの脳内バグ

なぜ、私たちは「たまたまの成功」を「絶対の正解」に格上げしてしまうのでしょうか? そこには3つの論理的な罠があります。

① 「冷戦期イージーモード」の一般化(時間的・地理的トラップ)

日本の戦後高度経済成長期は、このトラップの典型例です。

うじゃうじゃいる

当時の日本は、「米ソ冷戦下における東アジアの防波堤」としてアメリカから莫大な市場開放と技術援助を受け、自国は防衛費を削って経済に没頭できるという、人類史的にも極めて特殊で歪んだ「温室環境(局所的な極小値)」にいました。

この特殊な環境変数下においてのみ、「横並びで空気を読み、前例を踏襲して、均一なコマとして滅私奉公する」という生存戦略が、たまたま一時的な最適解として機能しました。しかし、私たちはこの「冷戦期という超局所的な前提条件」を無視し、「このやり方こそが日本人の強みであり、普遍的な正解(一般解)である」と錯覚してしまったのです。前提となる環境変数が変われば、その瞬間に局所解はただの「時代遅れの非効率」へと変貌します。

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② 認知の省エネ(「空気を読む」という思考の外部委託)

動的で複雑な現実世界は、常に無数の変数が絡み合って変化しています。これを毎瞬フラットに観測し、自分の頭で計算して判断するのは脳にとって極めて高コストです。

そのため、脳は「周囲の空気」や「前例」といった、すでに誰かが作った簡易的な局所解をコピーし、自分の判断基準をそこに固定します。

「みんながそうしているから」

「先輩がこれで上手くいったと言っているから」

これらはすべて、複雑な現実から目を背け、意思決定を周囲の「空気」に外部委託している状態です。

③ アビリーン・パラドックスと「無謬性(むびゅうせい)の罠」

無謬性(むびゅうせい)とは、誤りや間違いが絶対にないこと。特に日本の行政や大企業において、「組織や政策は決して失敗してはならない(失敗を前提とした議論はタブー)」とされる信念や体質を指すことが多いです。

「アビリーンのパラドックス」とは、組織やグループのメンバーが、本当は誰も望んでいないにもかかわらず「他の人がしたがっている」と誤解し、波風を立てないよう同調した結果、全員が不本意な決定を下してしまう集団心理現象のことです。

Gemini

一度集団で局所解の谷底に落ち込むと、今度は「その場にとどまり続けよう」とする強烈な復元力が働きます。

谷底から抜け出そうと提案する人は「調和を乱す異分子」として排除され、不都合なデータ(環境が変化して今のやり方が通用しなくなっている事実)は無視されます。

全員が内心では「このやり方はもう古いのでは?」と気づきながらも、周囲の顔色を伺って沈黙を重ねた結果、組織全体で最悪の自滅(アビリーン・パラドックス)へと突き進むことになります。

3. 「局所解の呪縛」を解くための処方箋

もし、あなたが所属する組織や、あなた自身の思考が「過去の局所解」に囚われていると感じるなら、取るべきアクションは極めてシンプルです。

  • 「空気」ではなく「ファクト(多変数)」を直視する

    他人の顔色や「これまでこうだったから」という情緒を一切排除し、現在の市場、競合、技術といった冷徹なパラメータを測定し直すこと。

  • 「仲良し小好し」を捨て、個のスタンドプレーに没頭する

    生ぬるい同調圧力のなかで足並みを揃えるのをやめ、自立したプロフェッショナルとして目の前のミッションで100%の成果を出すことに集中します。

  • 一度「山を登る(痛みを伴う変化)」を許容する

    現在地が局所解だと気づいたら、より低い「全体最適解」へ向かうために、一時的な業績低下や人間関係の摩擦といった「登り坂」を突破する覚悟を持つこと。

結論

私たちが信じている「常識」や「空気」は、世界の一般解などではありません。それは、過去の限られた時空間において、たまたま最適だった「古いデータ」の残骸です。

環境変数が激変し続ける現代において、過去の局所解にすがりつくことは、すでに枯れ果てたオアシスの地図を握りしめて砂漠を彷徨うようなものです。他人の顔色を確認するのをやめ、目の前の現実に没頭する自立した大人だけが、新しい時代の「全体最適解」にたどり着くことができます。

明治日本を変えたのは「除け者(外様)の中の除け者(坂本龍馬)」

維新志士の利害は「打倒幕府(古い価値観)」で一致していたかもしれませんが、決して常に一致していたのではありません。

全員が「我先にフロンティアへ」の「スタンドプレー」です。

幕府は組織内の上位層への調整に時間をかけてしまいました。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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