集合論を進めていると「同値」って言葉が頻繁に出てきます。
a = b のことです。義務教育で習いましたよね。
日常生活でも何となく利用しているありふれた概念なので、深くその定義について考えてはいなかったのですが、ふと「そういえば『同値』って何…」って思いが頭に浮かんできました。
数学と人間の無意識
数学は問題が解決の手段
で、同値についてGoogleに聞いてみたら、それは「関係」を示すことなのだと説明してくれました。
「関係」も日常で頻繁に使う言葉ですが、厳密な定義なんて意識しませんよね。
だけど「『関係』を定義してみて」と言われたら難しくないですか。
僕が数学で面白いと感じるところは、この「AとBが関係している」というような、抽象的な概念を厳密化して、誰にでも納得のいく客観的な方法で議論できることです。
数学の公理が正しければ、ありとあらゆる問題は数学で解決できます。
話を「関係」に戻します。
数学的に、つまり論理的に「関係している」か「関係していない」かを議論するには、議論の対象に「直積集合の部分集合」が定義できるかを調べればいいのです。
「関係」って概念を「直積集合」「部分集合」という二つの概念を使って説明するので、なんだかヤバそうなきがしますよね。
だけど大丈夫、心配しないでください。
手続きを追えば難しくありません。
無意識のポテンシャル
関係という概念を僕らは日常的に使っています。
それはつまり、それが抽象的だったとしてもその意味を無自覚に定義していることを意味します。
明確に言語化されていないだけで直積と部分集合という抽象的な概念は既に頭の中にあるわけです。
例えば「比例」って概念は中学校で習いますが、別に難しくはありませんでしたよね。
それは僕らが日常生活で無自覚に「比例」という概念を形成しているからです。
歩行する速度に対して目に映る景色の変化こそ「比例」です。
x軸方向が歩く速度、y軸方向に見える物体の大きさ。
xに比例してyは大きくなります。
実は普通に生きているだけで比例の概念を僕たちは獲得しているわけです。
義務教育程度の数学は潜在意識の知識を意識レベルへ引き上げる作業だと言えますよね。
人はそれを自覚していなかったり、その使い方を知らないだけで誰でも優れた能力を持っていると僕は信じています。
だからこそ、僕はボクシングの習得において一般論で言われている「無意識→意識」の真逆の論理である、「意識→無意識」を強く主張しています。
今回は「関係」について。
僕らはこれを無自覚に定義しています。
どんな風に僕らが「親子」「恋人」という関係性を定義しているのか気になりませんか。
関係
まずは直積の概念から。
直積
直積の定義に関しては上に貼った記事を参照してほしいのですが、簡単に復習すると
具体的に二つの集合 A, B に対し、それらの直積とはそれらの任意の元 a ∈ A, b ∈ B の順序対 (a, b) 全てからなる集合をいう[1]。
Wikipedia
$A × B = \{(a,b)|a \in A \land b \in B\}$
そんなに難しくはありません。シンプル。
$\A land B$は論理積の記号です。
もう少しイメージしやすくすると以下。

このように集合A,Bの順序対の組み合わせを集めたものを直積集合と呼びます。

もっと身近なものだとxy座標です。
$\mathbb R × \mathbb R$
左図が実数の直積集合を視覚化しているものだと分かると思います。
順序対なので(2,1)と(1,2)が異なります。
順序対の定義なども上の記事にありますので、参照してください。
xy座標を習った時に難しさは感じませんでしたよね。
恐らく僕達が無自覚に直積を定義していたからです。
直積集合の復習を終わります。
次に部分集合
部分集合
細かい部分集合の定義は集合論の流れでやりたいので、ここでは細かくやりません。
一応定義を載せておくと
集合 A の要素はすべて集合 B の要素でもあるとき、すなわち、
Wikipedia
$\{ \forall x(x\in A\rightarrow x\in B)\}$
が成り立つとき、A は B の部分集合であるといい、
$A \subseteq B$
で表す。
翻訳すると集合Aの元xが集合Bに含まれているのなら、集合Aは集合Bの部分集合となります。
ここでは深掘りしませんがAとBが同じ場合も部分集合に分類されます。
AとBが等しくない場合は真部分集合と呼ばれます。
「関係」に話を戻します。
関係
関係の定義が直積集合の部分集合であることを簡単に例を挙げて説明します。
父親を集めた集合Pと子供を集めた集合Cを用意します。
$P × C = \{(x,y)|x \in P \land y \in C \}$
直積集合P × Cは父親という属性と子供という属性を持っていれば誰でも組み合わせられるので、親子でない組み合わせもあります。
関係を示すためにさらに部分集合Rを定義します。
$R = \{(x,y) \in P × C | xとyが親子\}$
このように定義した場合に直積集合 P × C から親子関係のある集合Pを抜き出せて、これは「関係している」とできます。
「関係」というありふれた言葉を数学ではこのように定義して考えます。
些細でつまらないことのようですが、「言葉を定義する」ことは議論を進めるためにとても大切なことですよね。
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