「自分たちの〇〇」という狂気(カルト)

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「自分」とは、最初から内側に存在する固定された絶対的な型(正解)などではなく、「外部環境(相手・変化・理不尽という外乱)の暴力に対し、手札を繰り出し、転び、泥臭く対応・適応し続けた足跡(結果)の集積」に他なりません。

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環境の暴力に対応し続けた足跡こそが「自分」である

「自分たちのサッカー」「自分のボクシング」「自分たちの野球」——。

負けたあとのインタビューや指導現場で免罪符のように唱えられるこの言葉。一見すると強い信念や美学のように聞こえますが、システム論や認知科学の観点から解剖すれば、見えてくるのは恐ろしい事実です。

「自分たちの〇〇」とは、不確実な現実から目を背け、相手や環境に対応する準備を怠った者が吐く現実逃避か、あるいは、「『キレイなグー』が出せたら勝てる」という致命的に歪んだ現実認識の告白であり、勝負事においては極めて脆弱で有害な現実逃避(ドグマ)に他なりません。

1. 初歩的な算数を無視する狂気

勝負事の構造は、本質的にジャンケンと同じです。相手が存在し、環境が刻一刻と変化する相互作用のゲームです。

ジャンケンにおいて「自分が最も美しいと思う完璧なグー(自分たちのスタイル)」をいくら磨き上げたところで、相手がパーを出してきたら100%負けます。

それにもかかわらず、「自分たちのグーを貫けば勝てる」「自分たちのグーが出せなかったのが敗因だ」と言い張るのが、「自分たちの〇〇」の正体です。

  • 脆弱なシステム(「自分たちの〇〇」):

    「たった一つの正しい型」に固執するガラス細工。自分の思い通りの展開では輝くが、相手の対策や天候といった「外乱(不確実性)」を受けた瞬間、対応する手札を持たないため一瞬で粉々に砕け散る。

  • 反脆弱なシステム(「対応の準備」):

    相手が打撃で来れば組んで潰し、引いて守れば揺さぶり、泥仕合になれば泥臭く勝ちを拾う。相手の出方(外乱)を利用して、その場で最適解を更新していく。

勝負の現場で機能するのは、あらかじめ用意された「自分らしさ」などという脆い幻想ではありません。

「エラー」を何度も通過し、あらゆる局面を想定して泥臭く蓄えてきた「対応する準備(選択肢の数)」の質と量だけです。

2. 元から「自分なんてもの」は存在しない

なぜ大人は子どもに「自分のスタイル」を強要し、選手は「自分たちのプレー」に逃げ込むのか。それは、「自分という固定された正解が最初から内側に存在する」という人間観の根本的な誤謬に起因しています。

物理空間においても、運動制御においても、脳の神経回路においても、最初から存在する「自分」などどこにもありません。

運動制御論が示す通り、脳は何も起きていない静止状態では内部モデルを更新しません。「予測と異なる衝撃」「想定外の失敗」「環境からの予期せぬフィードバック」という外部環境からの暴力(外乱)に叩き晒された時、初めて脳はそのズレ(誤差)を埋めるために神経回路を書き換え、新たな手札(機能)を獲得します。

つまり、「自分」とはあらかじめ内側に眠っている宝物ではなく、環境の暴力と対峙し、打ちのめされ、それでも立ち上がり続けた結果として「後から立ち現れてくる機能性の層」です。

結論:環境の暴力に対応し続けた「その結果(自分)」を愛せ

「自分らしさ」という言葉を盾に、環境への対応や試行錯誤(手札を増やすこと)を拒絶するのは、成長と生存の放棄です。

あらかじめ用意された「自分」を探すな。
そんなものは最初から存在しない。

世界は不確実であり、理不尽であり、常にあなたに牙を剥く「環境の暴力」に満ちています。

  • その暴力に晒され、転び、痛みを経て神経回路(信念)を書き換え続けたこと。

  • 環境の理不尽に対し、持てる手札を泥臭く繰り出して適応・生存してきたこと。

  • その苛烈な相互作用の果てに、いまそこに立っていること。

その「対応し続けた歴史の足跡」として現れてきた機能性——それこそが、唯一実在する「あなた(自分)」です。

「自分のスタイル」という脆い幻想にしがみつくのをやめ、環境の暴力に抗い、対応し続けてきたその泥臭い「結果としての自分」をこそ、深く愛し、誇ってください。

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この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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