「攻防一体」とは?
「攻防一体」は漠然としています。ぼやけ過ぎているので目的地には適しません。いつまでもたどり着けない。
これを具体的な構成要素へ落とし込めればアプローチすることができます。


後述するように、アントゥアンの打法が所謂「攻防一体」を構成する要素の一つだと考えられます。
ブレーキ効果
相手の射程から遠ざかりながらパンチしているので、「防御」については見れば分かると思います。
「攻撃」を少しだけ解説。
まずはブレーキ効果による運動量の交換の効率化。大腰筋により上半身が股関節に押さえつけられるので、体のブレ(≒エネルギーの分散)を抑えられます。

二軸と肩甲骨平面内の加速
また、胸椎の側屈回旋は肩甲骨平面内での二軸の加速を含意します。これらを満たす打法は加速が効率化するので衝撃が増します。


胸椎側屈

肩甲骨平面
アングルと空間の創造
また、胸椎の側屈はパンチの自由度(≒パンチの軌道)を増やします。
相手のガードを迂回(≒無力化)⇒攻撃力強化
が成立します。
以上より、胸椎側屈回旋を伴う大腰筋パンチは攻撃力UPを意味します。
また、パンチを加速させる為の滑走距離も生み出します。




以上がアントゥアンのような打法が攻撃と防御を同時に成立させる、すなわち『「攻防一体」である』と言える理由です。
タイソンの攻防一体
以上の視点からタイソンのボクシングを見れば、スリッピングなどの防御の姿勢は同時に反撃の姿勢であり、かつ、パンチの打ち終わりの姿はが同時にパンチから隠れる姿勢であることが分かるはずです。
すなわち、攻撃が次の防御を、防御が次の攻撃を、という風な、論理的に意味が途切れない自己増殖構造がみいだせます。
また、この
防御⇄攻撃
の循環はシステム全体を強化すると考えられます。自分自身の性質が自分自身を強化する自己強化。

カネロの攻防一体
避ける+角度の創造
以下の動画を見れば、カネロの振り子歩きは相手の射程から隠れる防御であると同時に攻撃の角度とタメを作る動作であることが分かると思います。


カウンター
脇腹を収縮させてヘッドスリップ。それは股関節を反発させて反撃できる姿勢です。
ロマチェンコの攻防一体
ロマチェンコもカネロと同様のシステム。細部を捨像すればカネロと同じだと考えられます。


井上尚弥の攻防一体
踏み込んだら強くブレーキ。
それがブレーキ効果によるパンチの加速を効率化し、相手を怯ませる(≒防衛本能による硬直)。
それが相手の反撃を遅らせる。それが井上にカウンターの猶予を与えて、さらに相手を怯ませる…
という意味の途切れない自己強化構造を考えることができます。
この自己強化構造を「攻防一体」と定義できると思います。



以上のボクサー達のシステムのは抽象的には同じに見えます。
すなわち、腸腰筋が規定するシステムを攻防一体と定義できます。
「攻防一体」と構成要素の一つは腸腰筋。これなら「攻防一体」にアプローチできます。
「攻防一体」を願い悶えるのは時間の無駄です。


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