スランプとその原因についての長濱説です。
AJはスランプ
AJの表情に力がない
これは個人的な感想なのですが、この時のような大胆不敵さを今のAJからは感じません。
無敵時代は堂々として自信満々で、だからこそAJの最大の武器であった体重と圧倒的筋量によるパワーボクシングが成立していました。
他に類を見ないレベルの筋量による最大出力。相手にしてみたら恐怖です。
ヨーロピアンスタイルなので派手さはワイルダーほどではありませんが、パワーによる抑止が最大のディフェンスで、主導権争いの切り札だったはずなんですよね。
クリチコ戦の苦戦の印象を抱えたまま迎えたルイス戦での逆転負けは、AJのトラウマになってしまったのだと思います。
今は目の前の相手ではなく、自分自身の不安と戦っているような、そんな風に見えてしまいます。
僕も上手くいかないスランプを経験しているので、スランプの辛さは理解できます。
肉体的な疲労がスランプの原因となっている可能性もありますし、精神的なトラウマ、重圧がスランプの原因となっている可能性もあります。
スランプの原因その1 疲労
疲れているのに無理やり練習すると下手になることがあります。
疲れて筋力が低下しているだけなのに、なぜか下手になったと錯覚してしまい、不要な動作を取り入れてしまったり。
それは疲労による筋力低下によって起こせなくなった動作を無理やり引き起こすことで、一時的に動作を改善することがあります。
しかし、普段は意識せずにできていたことなので、疲労が回復した段階で意識による不要な動作が一つ増えている、という事態を招きます。
不要な動作が追加された結果、下手になるんです。
「疲労を無視した練習で本来の動きを失ってしまう」これも僕が経験的に導き出したスランプの原因の一つです。
スランプの原因その2 認知バイアス
例えば、僕は現役を退いたた1年間に子供達に指導して「遊ぶから上手くなる」という、最も根本的な競技力を向上させる価値観を失ってしまいました。
ボクシングの練習は修行だと思っていた。
だから思うように競技力が伸びませんでした。
この類の認知による現実の歪曲は心理学の分野で「認知バイアス」と呼ばれるようです。
僕は子供達に教えてもらった価値観で練習するようになって、主観的にではありますが、スピードとパワーが向上したと感じます。
考え方、価値観一つで競技力は変わるのです。
僕は平仲ジムでプロ選手を指導していて気が付きました。
僕は謙虚になり過ぎて、戦うマインドを失っていたことを。
僕は試合で絶好調の時とそうでない時が存在し、その理由が引退まで分かりませんでした。
ボクシングを始めた当初は相手を「ぶっ〇す」というマインドは持っていたのですが、ジムの移籍、負けた経験などが僕の自信を奪って、当初は持っていたはずのマインドを失ってしまっていたのです。
平仲ジムの選手に足りないものを分析しながら、思い出した。
「そうだ、調子がいい時は『ぶっ〇スマインド』だったな」って。
それを平仲ジム選手に試させてみて、競技力の変化に驚きました。
戦いのマインドは状況に応じた選択し、決断力を左右します。
例えば相手がプレッシャーを強める場面。
「神様が俺に当てさせるわけがない(一時期本当にこのマインドだった)」というマインドを持っていたら、相手が射程に入ってくるなんて絶好の攻撃の機会に見えますが、「恐い」というマインドはとっさに「守る」という選択をさせるため、攻撃ができません。
守勢に回り主導権が奪えません。
無敵時代のAJのマインドなら、その火力を活かして一方的に制圧できる場面だったとしても、逆転負けが脳裏にこびりついているAJには不安な場面に見えてしまいます。
認知バイアスですね。
心が現実を捻じ曲げてしまうのです。
僕はジョシュアの不調の原因はこれだと考えています。
今回の話はスランプに悩んでいる方、または競技力を飛躍させたい方の参考になれば幸いです。
スランプの原因って分かりにくいです。
自分の意識に及ばないレベル、些細な過去に原因があったり、ボクシングとは無関係に見えるプライベートに原因があったり。
だからトレーナーやコーチとの関係性って重要なんです。
現実的にはボクシングは機械ではなく、心のある人間がやることなので、その人が関わる様々なことが競技力へ影響します。
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