【股関節】ゴロフキンの強さに迫る PART 5【立体的回転】

運動理論
運動理論選手分析

今回の記事はゴロフキン選手の右のパンチにおける股関節の使い方を見ていきます。
結論から言えば基本姿勢(パワーポジション)では右股関節は『外旋位』。
股関節の屈曲で力をタメて、内旋を伴いながら右股関節を伸展させ体幹を介して地面反力を前方へ変換しています。
何度でも言いますが、股関節主導でパンチを打ち出しています。

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パワーポジション

パワーポジションとは野球で守備の外野手が打球に備える時やテニスで相手の打球に備えるよう時のように膝関節と股関節を屈曲させた待機姿勢のことです。

ボクシングなら強いパンチを打つために下半身を屈めて力をタメる動作のことですね。

ゴロフキン選手のパワーポジションは参考になります。

日本人的な感覚の力をタメるだと恐らく膝を曲げるような姿勢になると思いますが、それは間違ったパワーポジションです。
膝を曲げて体重を支えると大腿四頭筋に体重を感じるので力をタメられているような気持ちが起こるかもしれませんが、その姿勢では体を推進する力は溜められません。
上のテニスのシャラポワ氏の画像や以下の画像のゴロフキン選手のように膝の屈曲は浅く、股関節を屈曲させる姿勢が正しいパワーポジションです。

これは間違ったパワーポジションです。

臀部と裏腿が緩んでしまうので力が発揮しづらくなってしまいます。

このように力をタメる時は膝の屈曲は浅く、腰を折るようにして股関節を屈曲させます。

ここで注意点があります。
骨盤後傾型の日本人が普通が力をタメようとして腰を折ろうとすると背骨が曲がることが多いと思います。

これはデービス選手ですが、とてもいいパワーポジションだと思います。

フィジカルの強さがかなり現れています。

膝は添えるだけ

次にパンチを打つ瞬間を見ていきます。

上記のパワーポジションからゴロフキン選手は強いパンチを打ちだします。

ゴロフキン選手がアッパーを打つ場面です。
相手のジャブを躱しながら股関節を屈曲させて力をタメています。
ここで注目してほしいのは膝関節と股関節の動きです。

まずは膝関節の動きに注目します。
力をタメる為に屈んだ姿勢からその力を使ってパンチを打つ放つ姿勢までほとんど膝関節の角度は変化しません。
屈曲したままです。

その代わり股関節がダイナミックに動きます。
腰が伸びて大きく股関節の角度が変化しています。

力をタメた瞬間は骨盤の前傾と屈曲でプリっと臀部が上がります。
そしてパンチを打ちだす瞬間には股関節が反るようにピーンと伸びるのが分かると思います。

また、同時に右の股関節は内側に向かって内旋しています。
ガニ股から内股になっています。

股関節外旋位

以下の画像はゴロフキン選手の基本姿勢(パワーポジション)です。

左足は前を向いて右足は右を、右膝も右を向いています。
股関節が外を向く外旋位にあります。

この理由を考えていきます。

股関節は左図のように球状の関節で寛骨(カンコツ)のくぼみにがっちりとはめ込まれています。
余談ですが、寛骨にはめ込まれた大腿骨を抜くだけでも大きな力が必要で、さらにその上に筋や靭帯で股関節は補強されています。
股関節は超がつくほど安定性の高い関節なんです。

この事実からも人間の運動においてはどれほど重要であるかが窺い知れます。

骨盤とそれを動かす股関節こそが人間の運動のコアです。

閑話休題。
本題に戻りましょう。

骨盤を形作る寛骨にはめ込まれる大腿骨の骨頭は人によって程度の差こそあれ、前向きについています。

大腿骨の頭が前に向かってついているのは基本的には前に動くことを想定した人体のつくりなのかな?
と考察しています。
もし逆向きに大腿骨がハマっていたら歩く方向と逆向きに骨盤を回転させるので歩きにくいですよね。

簡単に股関節を上から見た図を作りました。
こんな風に大腿骨は斜めに寛骨にハマっていて、骨頭の向きは10度から15度前を向いています。
内旋させると骨頭は後ろを向き外旋させると前を向きます。

以上を踏まえた上でパンチにおける股関節の外旋位について考えてみます。

パンチを簡単に説明すると、足で地面を押した力で骨盤を回転させ、その力で腕を振り回すということです。
簡単な力学的な知識になりますが、物体(骨盤)を回転させるなら力はその物体に対して垂直が最も効率が良く、逆に平行に近づくほど回転させにくくなります。

分かりやすいように図を用意しました。
黄色い矢印の方向にいくら力を加えてもレンチは回転しません。

力の大きさが同じだとすれば、黄色の矢印からオレンジの矢印に力の向きが近づけば近づくほどレンチは回転させやすくなります。

これはどんな物体に関しても言えることなので、骨盤を効率よく回転させるなら骨盤に対して力を垂直に加える方が効率が良くなります。

以上を踏まえた上で股関節外旋の意味を考えていきます。

地面反力は骨格を伝っていきます。
試しに内股で立った姿勢とガニ股で立った姿勢で誰かに押してもらうか、内股とガニ股で壁を押してみてください。
ガニ股の方が押された時の方が力が入りやすいと思います。

この一つの理由は股関節を外旋させることで、大腿骨頭がさらに前を向き地面を押した力が前へ返ってくるからだと思います。
※もう一つ外旋力の方が内旋よりも強いからだともありましたが、理由が調べられませんでした。

股関節の外旋位は陸上競技でも見られます。

この場面のボルト選手とガトリン選手の膝と脚は外側を向いています。

つまり外旋位で地面を押した方が強い力で骨盤を回せるってことです。

今度は右股関節の内旋について考えてみます。
恐らくは単純に外旋位にあった股関節を内旋させないと骨盤を上手く回すことができないからだと考えられます。

試しに外旋位のままで地面を押した時と内旋させながら押した時で骨盤の回転を比べてみてください。
外旋位の方が骨盤の回転が浅くなると思います。

股関節を伸展させた後は内旋させることで地面を押した力を余すことなく骨盤の回転力へ変えることができます。

陸上でも接地の後離地する瞬間に足をねじ込むように股関節は内旋します。

左足と膝が内側を向いているのが分かると思います。

ゴロフキン選手の基本姿勢の右股関節は外旋位で、パンチを打つ時に股関節を伸展させながら内旋させています。
これにより地面を強く押すことができ、またその力を余すことなく骨盤の回転力へ変換できると考えられます。

ゴロフキン選手は股関節の外旋位で大きな推進力を生み出した後、股関節を内旋させることで大きく骨盤を回転させています。

球関節である股関節をダイナミックに活用することで骨盤の力を余すことなく発揮させる打法だと考えられます。

もう一つ捻りの効果を思いついました。
それが回転力の向きです。

骨盤に対して大腿骨は斜めにはまっています。

緑色の矢印が股関節の回転の向きです。
股関節は外旋させると上向きと横向きの回転、内旋させると下向きと横向きの回転になります。

つまり内旋は下向きにも力を加えるということです。

作用反作用の法則で真逆の力が返ってくるので伸展と内旋を複合させて立体的に地面を押し込むことにより地面反力を大きくできると考えられます。

と言うか股関節の構造を見ても内旋を伴いながらの伸展が自然だと思います。

右の打ち方のまとめ

ゴロフキン選手はパワーポジションでは足全体に荷重していると考えられます。

股関節を屈曲させ臀部と裏腿に力をタメます。右の股関節に力をタメるので右脚で体重を支持しているはずです。

股関節の屈曲でタメた力を使い、踵荷重で股関節を強く伸展させ、体重を右の股関節から左の股関節へ移し替えます。

体重が左の軸足へ移り、地面反力によって右脚が少しだけ浮き上がります。
この時に右股関節を内旋させて、ダメ押しの骨盤の回転を加えています。

加えて左の軸足の脛は骨盤方向に向いていて骨格制止をしています。

こうすることで次のパンチやディフェンスの動作を素早く行うことができます。

まとめ

外旋位から内旋を伴う股関節の伸展が大きく骨盤を回転させることができます。
両足を進む方向に向けるようにという指導もあるかと思いますが、強いパンチを打ちたいのなら外旋位をお勧めします。

また股関節を伸展させる時は膝関節は伸展しすぎない方がいいですね。
※当然多少は伸展します。
意識的にという意味です。

時々見かけるのが右の股関節を内旋させて強くつま先で地面を打ち付けるような打ち方です。
これは股関節の伸展が起こらず骨盤の回転が小さいです。
派手に地面を蹴っているようで回転してるのは右脚だけです。

ゴロフキン選手の右足が地面を離れるのは股関節を強く伸展するからであって、内旋させながらつま先を打ちつけるためではありません。
パンチが強い選手の一部分だけを見て結論するとそんな風に謎の動きになってしまいます。
注意が必要です。

追記

こんな風に相撲取りが股関節を割って四股立ちをするのは大腿骨頭を(力の向き)前向きに、かつ股関節を割ることで骨盤を前傾させ臀部を伸張しているということなんです。

盲信はよくありませんが、長い歴史を経て生き残ってきた技術、練習方法にはそれなりの敬意を払う必要があります。

自然淘汰を勝ち抜くには勝ち抜いていけるだけの理由が存在します。

※理論的訂正をしたので以下の記事を参照ください。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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