ワシル・ロマチェンコ vs. ホルヘ・リナレス ロマチェンコの始動速度のアドバンテージ

選手分析
選手分析

僕はこの両選手が大好きです。
何故かと言えばスタイルと顔がかっこいいから。

ロマチェンコ選手の高度に統一された戦略は無駄のなさにウキウキするし、リナレス選手のキレッキレのコンビネーションとカウンターもゾクゾクします。
そしてやっぱり顔がかっこいい。

この二人が戦いを研究してみたいと思います。

Vasiliy Lomachenko vs Jorge Linares | FREE FIGHT ON THIS DAY
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動作の始動速度

先に人間の動作の始動速度について解説します。
これも僕の造語なので正式名称は違うかもしれません。

人間の動きは統一されたルールに従っています。
一人一人の筋のタイプや骨格がそれぞれ異なるので、人それぞれ違いは当然あり得ますが、例えば魔法使いが箒を浮かせるように、また妖怪が瞬間移動したりするようには動くことは許されません。
人間の従うルールブックは力学と生理学で記述されます。

トップアスリートも当然このルールから逃れることはできません。
決められたルールの中で飛びぬけて効率よく動いているだけなんです。

この決められたルールの中では全く予備動作なく、いきなり強い力を発揮することはできません。
動作を立ち上げる時間(始動)が必要になります。

ここで動作の始動を定義します。
動作の始動とは例えば『パンチを打つ準備を初めてから実際にパンチを打ちだすまで』の動作とその時間としておきます。

パンチの始動の動作を細かく分割して見てみると、下半身の屈曲動作(股関節と膝関節の腱へのエネルギーの貯蔵)に始まり、次にそのエネルギーの身体の運動エネルギーへの変換、そして肩関節から拳へ(肘→手首→拳)の伝達です。
大きな力を発揮しようとするとどうしても下半身の大きな屈曲動作は必要になってしまいます。

しかし、動作の立ち上げは選手の戦略や状況により部分的に省略することもできます。
例えば軽いパンチを多用してフットワークを活かすロマチェンコ選手は時に下半身の屈曲動作や体幹の回旋動作のほとんどを、さらに腕の『しなり』も省略し、いわゆる手打ちのパンチを多用します。

左のダブルストレートなんかはその特徴が顕著に表れていると思います。
動作を省略しているので発揮できる力は大きくありませんが、動作の始動速度は段違いです。

リナレス選手は拳への力の伝達は高速ですが、一瞬下半身で力を溜める動作を行います。

試合分析

序盤ロマチェンコ選手は少し遠めの距離に居ました。
丁度お互いに踏み込めば当たる距離です。

踏み込む必要があるので攻撃までにお互いワンテンポ必要になります。

このやや離れた距離(時間)を利用し、リナレス選手はロマチェンコ選手が踏み込んできたところにカウンターを打ち込んでいきます。
この出鼻のカウンターは強烈でした。
並みの選手なら踏み込むのを躊躇してしまいます。

2ラウンド終盤から距離を掴んできたのか、ロマチェンコ選手がフェイントなどの動きを増やして攻めていきます。

距離も少しだけ近くなってロマチェンコ選手の動作の始動速度のアドバンテージが現れ始めたと思います。

ロマチェンコ選手は手打ちの細かいパンチでリナレス選手の速いカウンターを封じながら、コツコツヒットを重ねます。

リナレス選手はロマチェンコ選手の回転力のある手打ちのパンチに攻撃のリズムを狂わされてか、手数は上回られます。
しかし、時々危険なタイミングのパンチを当てていました。

距離を掴んでからは少しづつロマチェンコ選手がペースを奪い、少しづつリナレス選手を削ります。

6ラウンドにはロマチェンコ選手がさらにペースを上げます。
ここで少し強引になりました。
そこをリナレス選手は見逃さずカウンター一閃。
完璧なタイミングで尻餅を突かされましたが、ダメージは浅いのかロマチェンコ選手は立ち上がりすぐに再開します。

ロマチェンコ選手がこんなにまともにもらったのは初めてみました。

押されながらもこの隙を突けるスピードとメンタルはすごい。

ガードも間に合いませんでした。

ロマチェンコ選手はその後の数ラウンドを回復に充てました。
ここで露骨に休むとリナレス選手が出ていったと思いますが、ロマチェンコ選手は休みながらもプレッシャーをかけたりとある程度リナレス選手を警戒させ勢いを削ぎます。
本当に駆け引きが上手いなあという場面でした。
休み方も異次元。

8ラウンドからまたロマチェンコ選手はペースを少し上げました。
リナレス選手も引き下がらず迎え打ちます。
ここにきて激しいペース争いです。
両選手スタミナ半端じゃない。

10ラウンドも熾烈なペース争い。
両選手ともマジでコンディションがやばい。

10ラウンド終盤にチャンスと見たのかロマチェンコ選手がしつこく攻め、最後はボディーでKO!

総括

全体を通してみると、試合序盤はリナレス選手の出鼻に合わせるカウンターが効果を挙げているように見えました。

しかし、3ラウンドからはロマチェンコ選手が少しプレッシャーをかけ距離が近くなり動作の始動速度のアドバンテージが活き始めました。
リナレス選手も時々危険なパンチを当ててはいるものの、後手に回りコツコツ削られていきます。

しかし、6ラウンドにロマチェンコ選手がペースを上げて少し大胆になった隙を見逃さずリナレス選手がカウンターで捉えました。
押されている状況であのタイミングを狙える集中は半端ない。

再開後はロマチェンコ選手がプレッシャーをかけながら上手く休み、回復後にペースアップしてKO。

今回は勝者のロマチェンコ選手の特徴についてもう一度考えてみます。

速いリズム

ロマチェンコ選手の速いリズムに関しては何度もお話していますが、これがあるから攻防一体を実現できます。

常にリズムを刻み動きながら次の動作をリロード、攻撃の後はすぐに安全なポジションへ動き出します。
だから速いのに慌ただしさがなく、無理がない。

またしても造語のリロードについてはこちら

そしてこのリズムの中に次の動作を隠してしまうので相手はいつ攻撃が来るのか分からないし、攻撃後も次の動作の待機状態に入っているので反撃が間に合いません。

そして速いリズムとフェイントを使った駆け引きの強さ。
相手のミスを誘ってそこに付け入ります。

常にリズムを刻む。
簡単そうで並大抵の忍耐力ではできるようなことではありません。

攻撃中のディフェンス

リナレス選手にカウンターを合わされたても、すぐにディフェンスしていました。
何度も何度もやっており再現性の高い技術です。

既述のリズムやリロード、動作の始動以外にも要因があると思います。
それは慣性を利用した攻撃です。

ロマチェンコ選手はパンチを打った後に、また打ちながら別の動作ができます。
これはパンチを打ちだした後の微妙な軌道の修正以外は脱力して腕を慣性にによって動かしているからだと僕は考えています。

パンチを放った後は力を抜いて次の動作に移れる状態になっている。
だから攻撃の最中でも相手のパンチに反応して対処できるのではないかと思います。

手打ちのパンチは悪か

手打ちのパンチは良くないと言われます。
でもロマチェンコ選手を見ると、それが意図して使われているなら全く問題ない、むしろアドバンテージにすらなると僕は感じています。

ロマチェンコ選手は手打ちのパンチで相手のリズムを崩します。
リナレス選手も「行こう」とするタイミングを細かい右のダブルジャブ、左のダブルストレートで挫かれていました。
攻撃のリズムを崩されて仕切り直しを余儀なくされるから手数が出せない、その隙にロマチェンコ選手の攻撃を受けてしまう、攻撃できずペースを握れないと考えています。

まとめ

この試合はミスしない男ロマチェンコ選手の初のダウンが見られるし、同じようにスピードのあるリナレス選手と比較することでロマチェンコ選手のアドバンテージが一体何であるのかが分かりやすい。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人
ストイック長濱

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
WBC世界同級34位
WBO-AP同級3位
角海老宝石ジム所属

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