フックを考える

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カネロの側頭部フック
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ゴロフキンの内外上下コンボ

認知の歪み

まずは僕が常々主張している認知の歪みの話から。

「ヒト(自分)は現実を正しく見られない」と自分自身を批判的に戒めること、また、社会にある既存の枠組みが間違えていることがある、と全てを疑うことが常に思考の起点です。

さて、僕もそうでしたし、大半のボクサーはそうだろうと思います。
「テンプル≒こめかみ」という認識(≒常識)。

この認知の歪みが自己強化的にボクサーを脆弱にする、という主張をします

フック⇒こめかみ
ストレート⇒顎
と認識している場合、両手を上げただけでほとんどのパンチを防げます。

スパーリングなどをしているボクサーならこの事実は認識しているはずです。

上のようなハイガードで守りを完結させられます。すなわち相手は守りの資源をその一点へ投下するだけなので、その難易度は下がります。

一方で暫定的に
フック⇒側頭部
ストレート⇒顔面
と仮定した視点から再び上のハイガードを眺めるとどうか。がら空きに見えますよね。
認知可能な世界と、その認知に基づくコンビネーションの世界観はたったこれだけで一変するはずです。

フック⇒こめかみ
ボクシング社会全体が上のように思い込んでいた場合、既述の通り、守りは比較的に簡単になるので、必然的に勝負の土俵はどちらかが根を上げるまでのスタミナ勝負、根比べになると予想されます。
すなわち、誤った認知が所謂「根性論」の説明変数の一つだろう、と。

社会全体の認知が自己強化的に非合理な形に歪むわけです。後述するように実際にそれは大きく歪んいると思います。

また、ボクシングで勝つための「根性論」は次第に、「根性論」を守るためのボクシングへ変化したと考えます。

戦争で勝つ為に要求されたスローガンが次第に目的化し、愛国心の名のもとに若者が死ぬことが目的化した、とある国のように。

目標は欲求、欲求は飢餓感 スローガンは呪い
「目標を掲げろ」「前向きに考えろ」「夢を持て」「平和!平等!基本的人権!」。この類は呪いの言葉です。唱えれば唱えるだけ、実現は遠ざかります。 欲求の声に従う 社会の目標 直感(直観)が先行するフローを感じるようになってから、社会が僕たちに要...

お作法の為のお作法という非合理もそう。例えば就職お作法が延々と社会に保存されている論理の根は、若者に「死ね」と言った頃と同じではないかと。

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視点を変えます。

こめかみを狙うフックは、頭部の重心を捉えられない為、頚椎の回転により勢いを力学的に吸収されてしまいます。

力が重心に作用する前者は重さを受け止められますが、後者は回転します。

左はバットの芯を食っていないのでボールの勢いはバットを回転させる力に変換され、手を痺れさせます。左はボールが跳ね返されます。

これと同じようなことは頚椎にも起こります。

また、フック⇒こめかみ
の認識では三半規管に衝撃を加えられないので、与えられるダメージは薄くなります。
既述の重心の論理も加わり、費用対効果を低下させます。

更に、フック⇒こめかみ、は相手の守りの資源を分散させる、という論理も成立しません。

たった一つの認識の誤りが、次々と非合理を引き寄せてくるわけです。

三半規管

非合理に非合理が積み重なる負の自己強化です。ほとんどのボクサーにはこれが起こっていると考えられます。一流は合理的な認知がさらなる合理を引き寄せる正の自己強化。

他にも
運動⇒膝
という認知の歪みもそう。

膝を曲げると大腿四頭筋が活性化されブレーキの作用を強めます。

また、それと拮抗するハムケツも張力を失い構造的に筋力を失います。
誤った認知がさらなる非合理を引き寄せる論理的な構造を形成しています。

さらに、股関節が構造的に動かない故に滑るように踏み込めません。動作が大袈裟かつ床との接続が途切れるので、相手の反撃に対して脆弱になります。
これもまた、非合理が非合理を次々と引き寄せる論理構造になっていますよね。

加えて股関節が強いから股関節が使え る、鍛えられる。つまり、筋力の自己強化も起こります。

また、股間ロックが強い場合は踏み込みの方向が斜めとなり二軸打法(肩甲骨平面)や相手の死角への位置取りが必然的に起こります。

技術の自己増殖と筋力の自己強化
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以上が同じ体重のボクサーに残酷な差を生み出す論理だろうと。

一つの認知の誤りが次々と非合理を引き寄せてくるって恐ろしい話だと思いませんか。生まれつき強い奴はひたすら強くなる。弱いやつはひたすら弱くなる。

これは知能にも言えます。バカはバカげた論理を積み上げて狂った結論を導く。日本のボクシング技術観が好例。残酷な言い方をすると、バカに生まれたら間違え以外は導けない。

以上のような負の自己強化、自己増殖の入口は至る所にあると考えられますので、入場する際には細心の注意を払う必要があります。
具体的にはトレーナーやジム、先輩後輩との関係性、YouTube技術論の選別です。ミスると次々と破綻します。

結論。権威に服従せず、難しいことから逃げず、因果関係を追跡すべし。後少し続きます。

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敵の資源を分散させる

「敵の資源を分散させる」
という視点で再び下のハイガードを見れるとどうでしょう。

感情としては「どこを打つべきか」ではなく、「どこならば打てるか」です。

結論。殴れる場所を殴る。それが敵の守りの資源を分散させ、必然的に急所を露出させる。また、現実の制圧力を空想に優先させることが非合理な認知を遠ざける。

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この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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