クラウゼヴィッツ兵法には敵の「重心」を攻略する、という考え方があります。
重心と言っても力学的な意味ではなく、クラウゼヴィッツ流の定義となっています。
敵を無力化する為の対応力
クラウゼヴィッツの重心
厳密な定義はなくなんとなくの説明でしたが、敵の重心とは「敵の攻撃の中心」と定義されていました。
分かりにくいので、これを僕なりに解釈します。
スキルセット(戦略)の核 = 重心
僕がボクシングを理解する時の考え方として、なんとなくの定義にはなるのですが、相手の技術を戦術として細かく分類します。ジャブ、フック、ディフェンス、フットワークなど。戦術の意味が一貫しているほど強くなります。
ゴロフキンは「ディフェンス」「ジャブ」「プレッシャー」「打たれ強さ」「右フック」が一貫したストーリーの中で機能します。
プレッシャーで下がらせてパワージャブ→相手のバランスを崩してゲンコツフック。これが彼の得意パターンで、これが機能する場合は簡単に倒します。
しかしゴロフキンのキャリアで苦戦と評価されるウィリー・モンローやカシム・オウマ、ダニエル・ジェイコブスはゴロフキンのジャブの軌道をサウスポースタンスで無力化しました。カネロ2,3はカネロがゴロフキンのスタイルに順応し、ゴロフキンのプレッシャーを押し返すことで、ゴロフキンの戦略の大部分を無力化したと僕は考えています。
プレッシャーをかける心理戦とパワージャブがゴロフキンの戦略の核なので、ジャブを無力化するサウスポースタンスに対しては戦略が機能しづらいはずです。またゴロフキンのプレッシャーをかける心理戦が機能しない場合も戦略のフィードバックループが起こりません。例えば村田戦序盤。
ところで、左をフェイントとして右を振り抜くような、カネロタイプはサウスポーを左程苦にしないと考えられます。
※サウスポーの右手はオーソドックスのジャブの軌道にある為にオーソドックスは使い慣れた軌道を封じられます。サウスポーはオーソドックスの左手の位置に慣れているので有利です。
話を戻します。ゴロフキンの決め手はフックですが、それを警戒していてもジャブで削られて結局は警戒していたはずのフックで沈められます。本当に警戒すべきはその起点となるジャブとプレッシャーの起点となるのは心理戦です。具体的には表情と態度によって相手を飲み込んでいきます。ここで簡単に引き下がるとパワージャブでバランスを崩されてフックを捩じ込まれる展開は避けられません。
ゴロフキンの戦略を機能させない為には彼の心理戦(ジェスチャー、表情)に屈しないだけの強靭な精神力が必要なのですが、彼のアマチュアとプロの実績からも分かる通り、並の精神力なら蹴散らされます。サウスポーはかなり有効だと考えます。
ここまでゴロフキンの例に挙げて長濱説を解説してきましたが、まとめると。
起こっている現象をただ語るような対策を用意しても効果は薄くなります。因果関係を解き明かし、その現象の裏にある戦略のストーリーの起点(重心)を潰すのです。
その為の練習の価値観が対応力の強化。
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