「悪癖」を直したら「長所」が消えた

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人間という物理的・神経学的なシステムにおいて、特定の出力や機能を特化・突出させた場合、構造的にその「裏の顔(副作用)」が別の局面での非効率やエラーとして観察されるのは避けられません。
この「機能のトレードオフ(システム的必然)」を無視して局所だけを切り取り、「悪癖」と一蹴する思考がいかに浅薄であり、システムを破壊するかを分解します。
例)短距離に特化した体は長距離に向かない。逆も然り。
デービスにロマの動きを求めたら、彼の良さは失われます。逆も然り。
有限の資源をどう配分するか?が戦略であり、スタイルです。
デービス、お前の大振りは悪い癖だ。無くせ。
が「デービスから何を奪うのか」まで考える必要があります。
指導者は生来的に短距離向きなスプリンターに長距離を押し付けてしまう可能性を排除する必要がありす。
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構造の立体性

1. 「長所」と「悪癖」は単一アトラクターの表裏

システム論・ダイナミカルシステム理論の観点から見れば、人間の運動や行動のスタイルは、特定の優先課題(タスク)を解くために脳と身体が作り出した単一の「状態空間(アトラクター)」です。
表裏一体となる具体的な構造は以下の通りです。
単一のシステム構成(状態) 局面Aで表出する「長所(機能)」 局面Bで表出する「悪癖(エラー)」
高剛性・強出力型アライメント

 

(関節の自由度を固めて力で押し切る)
爆発的な直進出力・インパクトの強さ

 

(「剛性が高く力強い」)
柔軟な軌道修正の不全・疲労の速さ

 

(「動きが硬い」)
高い固有受容感覚・過剰危険回避

 

(自律神経の警戒水準が高い)
危険察知の速さ・事故の回避・精密さ

 

(「繊細・緻密である」)
限界領域での運動抑制・動作のフリーズ

 

(「臆病・すくむ」)
慣性・重心移動の優先

 

(身体全体を大きく使って位相を遅らせる)
圧倒的な到達距離・伸び・タメ

 

(「スケールが大きい・ダイナミック」)
細かい時間軸でのレスポンス遅れ

 

(「大雑把・出遅れる」)
これらは「長所」と「悪癖」が別々のパーツとして存在しているのではなく、同じ一つの物理的・神経学的アライメントが、評価される文脈(環境・タスク)の切り替えによって正反対の極として解釈されているだけです。
https://riku-nagahama.xyz/2024/09/12/%e5%8b%95%e3%81%8d%e3%81%8c%e3%81%8e%e3%81%93%e3%81%a1%e3%81%aa%e3%81%84%e3%81%93%e3%81%a8/

2. 「トレードオフ」を無視した指導が引き起こす致命的破壊

「悪癖」とされる挙動が強力なメイン機能(長所)の物理的・神経学的な担保(前提条件)である可能性を無視し、局所的な「悪癖」だけを力ずくで排除しようとすると、システム全体が崩壊します。
  • 強力なエンジンの破壊:
    「大雑把だ」として動作の振れ幅(慣性)を強引に削り落とせば、その選手の一番の強みであった「圧倒的な出力やタメ」のポテンシャル面そのものが平坦化され、「癖はないが何の武器もない極めて平凡な低出力システム」へと退化します。
  • 防衛機構の解体による破断:
    「臆病だ(すくむ)」とされる反応は、過負荷から自らの組織や関節を守るための神経学的な「安全弁(ブレーキ)」である場合が多くあります。そのブレーキを「気合で解除しろ」と命じれば、待っているのはブレーキの効かない状態での不可逆な組織の損壊(大怪我)です。
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3. 指導側の「文脈依存性(コンテキスト)」に対する解像度の低さ

指導者や親が「悪癖だ」と断じる背景には、「あらゆる局面で無謬(ノイズゼロ)かつ万能に機能するパーフェクトな動作が存在する」というナイーブな錯覚が存在します。
  • 物理的現実:
    力学においても生物学においても、すべての局面で最適に働く万能な構造は存在しません(速度を求めれば安定性が落ち、安定性を求めれば速度が落ちる)。
  • 指導側の怠慢:
    「その出力特性(癖)が、どの局面で最大の機能(長所)を発揮し、どの局面でボトルネック(悪癖)になるのか」というシステムの出力特性と適用文脈の解剖学的な分析を怠り、単に自分が望む「単一の局面の都合」に合わせて削り落とそうとします。

結論

「悪い癖」と言い切る行為は、その人間が持つ「強力な機能(長所)」を成立させている物理的・神経学的な構造的前提を解明することを拒否した、無知による暴力になり得ます。
真の指導・教育とは、表面上の「歪み(癖)」を平坦に削り取ること(機能の去勢)ではありません。
そのシステムが持つ特異な出力特性(長所であり悪癖である構造)のポテンシャルを認めた上で、その特性が「長所」として爆発する最適なタスクや環境(文脈)を設計すること、あるいは長所(メインエンジン)の出力を殺さない最小限の境界条件(制約)だけをそっと添えてあげることに他なりません。
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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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