肩甲骨ロックと二軸
これまでの議論である「二軸による斜め方向への投擲」「肩甲骨外転前傾ロックによる大胸筋の水平内転力が最大となる至適角※とリリースポイントの一致」の理解が前提となります。
※以後は便宜上大胸筋の筋力が最大化する範囲を「至適角」と呼びます。
一軸によるエネルギーの漏出
二軸においては、骨盤と上腕の位相のズレ※が腕の並進運動を強調し、それが腕への力積を増加させ、投擲物ないしパンチに与える運動量を増大させる、と説明しました。
※回転のピークのリズムのズレ
力積
質量m の質点を考えると、時刻$\displaystyle t_{\mathrm {A} }\to t_{\mathrm {B} }$を経たときのその質点に働く力と運動量の変化の関係は、$\displaystyle {\boldsymbol {I}}=m{\boldsymbol {v}}_{\mathrm {B} }-m{\boldsymbol {v}}_{\mathrm {A} }=\int _{t_{\mathrm {A} }}^{t_{\mathrm {B} }}{\boldsymbol {F}}dt$である。
次はパンチの終了時におけるエネルギーの漏出を考えます。
「股関節と肩関節の二軸回転の合成による並進運動の近似」が起こるのは短い時間だけです。
頭の中でイメージしてみてください。



骨盤の回転力を上腕の回転力へ変換するのが遅い場合、つまり、骨盤を回転させすぎた場合、擬似的な並進運動は崩壊し、骨盤の回転は腕の並進への干渉を起こします。
視覚的なイメージで例えると、波の山が重なれば増幅、山と谷が重なると減衰、です。パンチでも似たようなことが起こります。
ある地点から腕を並進運動させていた骨盤の回転運動は、上腕を横方向へ引っ張る一軸的な力へ移行します。
従って、後述するように、体重移動が大きい場合は、斜め方向へのパンチの射出(二軸打法)が崩れます。

二軸並進

一軸
一軸の黄色のベクトルは合成するとCOSθ倍されます。COSθはベクトルの向きが一致(平行)した時に最大で1となります。この時にベ合成クトルは最大となります。
そして平行から少しでもズレるとベクトルの大きさ1未満倍されます。すなわち、パンチ力は上記と比較して低下します。
引っ張り打法(体重移動)は二軸を崩壊させる。
小括します。
斜め方向にパンチを打つ二軸でない場合は、エネルギーの漏出(※)が起こる。
※ハンドスピードとパンチ力の低下
「体重移動が大切なんじゃないの?」と思っているあなた。
後々述べますが、体重移動による「引っ張り打法」は、成長初期の資源と成長余地が有り余る場合にのみ正当化されます。
熟練するほど運用コストだけが増加する構造があります。
閑話休題。
次は肩甲骨ロックと二軸打法を論理的に接続します。
肩甲骨ロックと二軸打法
小胸筋と前鋸筋による肩甲骨の外転前傾の強調(肩甲骨ロック)は、肩甲骨の剛性を高め、かつ大胸筋の筋力を高めます。
それは伸張-収縮サイクル(SSC)を短くすることを意味します。
前回、前々回の記事で説明したように、太い前鋸筋と小胸筋による強力な肩甲骨の外転前傾ロックは、肩関節と股関節の物理的、生理的な回転リズムの差により生じたエネルギーを大胸筋の筋腱に弾性エネルギーとして保存するのを助けてくれます。
すなわち、肩甲骨ロックはパンチの射出のタメの時間を短縮します。
この場合は骨格内のエネルギー循環である
運動エネルギー(体幹の先行)→弾性エネルギー→(大胸筋の弾性)運動エネルギー(パンチ)
は高速で行われます。
一言で言えば、肩甲骨ロックは、
タメ→リリース
のSSCが一般的なそれより早くします。
前鋸筋と小胸筋が弱い場合は、肩甲骨のロック(剛性)が弱くなります。すなわちエネルギーが漏出し、投擲に必要なエネルギーを集めるのに長い時間が必要になります。
この場合は代償として、前鋸筋と小胸筋が強い場合と比較すると余分な体重移動(エネルギーの調達)が必要になり、二軸打法が崩壊します。
ある意味では「体重移動」は肩甲骨ロックを生理的に実現できない弱者の認識です。

AIに上の主張をまとめさせました。
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剛体の衝突: 体幹が加速した瞬間に、固定された肩甲骨を介して慣性力がダイレクトに大胸筋の腱を直撃します。
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ラグの解消: 遊びがないため、体幹の加速開始とほぼ同時に大胸筋のチャージが完了し、幾何学的に有利な「45°〜60°」の地点で、弾性エネルギーの射出(SSC)をリリースと同期させることが可能になります。
メジャーリーガーが手投げ、かつクイックな理由、ロイ・ジョーンズやベテルビエフの手打ちかつクイックかつ破壊的な理由。
別の記事でさらに「体重移動論」の誤りについては言及していきますが、今日は↓を理解してください。
肩甲骨ロックが強い⇒弾性エネルギーの高速チャージ⇒爆速SSC⇒股関節と肩関節の同期⇒並進運動の維持
肩甲骨ロックが弱い⇒低速SSC⇒エネルギー不足⇒体重移動(骨盤の余分な回転)による代償⇒二軸の崩壊⇒並進運動の崩壊⇒巻き込むようなフック
以上が下のゴロフキンのような前へ飛ばすパンチの構造です。
日本は無知な指導者が巻き込むようなフック教えています。
それはボクシング村全体の認知を形成し、元々才能のあるボクサーを弱者の打法へ引き寄せます。
なぜ外側を殴れるのか
あなたが先天的強者でないなら、「外側を殴る…外側を殴る…」と念仏を唱えるのは時間の無駄です。大概はそう。
既述のように、外側を殴れないのは腕を強くスイングするエネルギーが足らないから。
本能的な体重移動が骨盤と上腕の回転のリズムがズレを生み出し、リリースポイントを前ズレさせてしまっています。
この場合、やることは長濱式懸垂とディップス。
肩甲骨ロックができないボクサーが外側を殴った所で、エネルギーが足らないヘナヘナパンチになるだけです。

二軸のレンジ
拡散よろしくお願いします。
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