群論って抽象的な議論が展開される分野です。
なんでそんなこと考えるの?って感じますが、超高度な抽象化が必要な状況があったのだろうと無理やり納得させて前へ進めていきます。
とりあえず群の定義から。
群
定義
群(グループ)は集合です。
群という集合の定義として、空でない群Gに対して、二項演算が適用できることが要請されています。
二項演算とは、ある集合の元に同じ集合から選んだ元を作用させて、同じ集合にある別の元の位置へ動かすこと意味しています。
$G \cdot G\longmapsto G$
演算の結果はGの要素になるという意味。
集合{1,2,3,4,5}には実数集合は実数で使うような二項演算は定義できません。
1+5 = 6で6は集合に含まれていないから。
しかし、上記の集合に演算を定義することができれば群として扱うことができます。
このような一つの集合で議論が完結してしまう群の性質は「閉性」、「閉じている」と呼ばれます。
他にも以下の条件を満たすことも要請しています。
結合法則
$\forall x,t,z \in G,(x\cdot y)\cdot z = x\cdot(y\cdot z)$
単位元の存在
$\exists e \in G,\forall a \in G,a\cdot e = e\cdot a = a$
逆元の存在
$\forall a \in G,\exists x \in G,a \cdot x = x \cdot a = e$
結合法則を翻訳すると「集合Gから取り出した元をどの順番で演算しても結果が変わってはいけない」
これはそのまんまですね。
(a + b) + c ≠ a + (b + c)
a(bc) ≠ (ab)c
となってはいけない。
単位元の存在は「集合のどの要素に作用させてもその位置を変化させない元がある」です。
実数の加法だと0が単位元で乗法だと1が単位元になります。
1 + 0 = 1
1 × 1 = 1
元の位置はそのまま。
逆元の存在は「集合のすべての要素に対して作用させると単位元になるような要素がある」
実数の加法の単位元は0なので2の逆元は-2、乗法の単位元は1なので1/2が逆元になります。
2 + (-2) = 0
2 × 1/2 = 1
aの逆元は$a^{-1}$と表します。
次に上記の定義から必然的に導き出せる定理について。
定理
単位元について考えてみます。
群Gに上記の要請を満たす単位元が二つ、e,e’が存在すると仮定します。
それぞれ、どの要素に作用してもその位置を変化させません。
それぞれの演算を考えます。
まずeから定義通りに
$a \cdot e = e \cdot a = a$
集合の要素aはなんでもいいのでe’と置きます。
$e’ \cdot e = e \cdot e’ = e’$
次にe’の任意の場合。
aをeとします。
$a \cdot e’ = e’ \cdot a = a$
$e \cdot e’ = e’ \cdot e = e$
$e \cdot e’ = e’$で$e’ \cdot e = e$であることが分かります。
結合法則より
$e \cdot e’ = e’ \cdot e$
$e = e’$
となります。
定理1
群Gの単位元はただ一つだけ存在する
逆元について考えます。
集合Gの元aの逆元に$a^{-1},x$があるとします。
定義からこの等式が成り立ちます。
$aa^{-1} = ax = e$
※eは単位元です
aの逆元を両辺へさらに作用させると
$a^{-1}(aa^{-1}) = a^{-1}(ax) = a^{-1}e$
$a^{-1}(e) = e(x) = a^{-1}e$
単位元は作用させても何もしないので
$a^{-1} = x = a^{-1}$
従って群の任意の元(要素)に対して逆元はただ一つだけしか存在しないことが分かります。
定理2
群Gの任意の元に対して逆元はただ一つだけ存在する。
素人考えですが、定義の構造から「一つの集合で議論が完結するように」との意図を感じます。
このように抽象的に定義すれば「数」以外にも群論の議論が適用できます。
もしもの話ですが、言語のような集合にも二項演算、結合法則、単位元、逆元定義することができれば、群論の定理が適用できます。
宇宙という集合にも群を定義できるかもしれませんし、定義できた場合群論の定理が適用できます。
数学の面白い所は抽象化した概念を使って議論をどんどん一般化していくところです。
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