ガードを上げ続けることの弊害

初心者向け技術

ガードを上げる。
もうこれ、当たり前であるかのように、絶対に常に正しいかのように言われていますよね。
でも本当にそうなのか。
今回はガードを上げ続けようとすることの弊害について考えます。

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因果関係を見誤るな

マイク・タイソン、マニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズ。
ガードなんて無視したパワーとスピードによる正面突破。

彼らは元々スピードとパワーがあるからこれができるのか。これでいいのか。

日本に浸透する常識による説明ならこうです。
「彼ら外国人は身体能力が高い、だからある程度基本をおろそかにしても大丈夫なんだ。
日本人は基本に忠実に戦わなければ勝てない。なぜなら、外国人と戦うための身体能力を持っていないからだ。ガードを上げて、顎を引いて、膝を曲げるんだ。それで不利を克服するんだ。
パッキャオやロイジョーンズを目指してはいけない。基本だ!基本だ!基本だ!」

僕はこれはどの日本のスポーツにも蔓延する信仰だと思っています。
「基本基本」と誰でも簡単に指導者になったつもりで口にできる、形骸化した教義。
この類の形にこだわり過ぎる伝統(ガラパゴス化とか言われるやつ)は権威を守るための文化だと思っているので、一切付き合うべきではないと思っています。

「身体能力が高いからガードが低くてもいい」ではなく「教義に囚われていないから、身体能力が高い」なのかもしれません。
というか、僕はそう思っています。
もしも「ガードを下げてだらだら動く」と「身体能力が高い」が因果関係だったとすれば、日本のボクシングは大きな間違いを犯していることになります。

前置きが長くなりましたがガードを上げることは常にいいことなのかを考えていきます。

サイレントピリオド

サイレントピリオドは強力な筋肉の収縮の直前に起こる筋肉の一瞬の弛緩のことです。
ガードを上げ続ける習慣のある人は十中八九、パンチを打つ直前に腕の落下が起こります。
これは相手に攻撃を察知させるテレフォン動作の典型です。
本人は腕を下げてパンチを打とうなんて考えていません。反射なので勝手に起こっているだけです。

厳しい指導者なら「パンチの前に腕を落とすな!」と指摘するでしょう。
真面目な人なら萎縮し意識的に腕を上げ続けようとして、サイレントピリオドを抑制します。姿勢反射も抑制されバランスが崩壊するので、これだけでほぼ弱々しくぎこちない雑魚ボクサーが完成します。

はっきり言って、ガードを上げ続けるなんてどうでもいいです。
あくまでも局面によって変化する戦術であり、戦略にはなりません。
アウトボクサーはガードを下げることを好みます(動きやすい)し、プレッシャーファイターはガードを上げるのを好みます(敵の射程に入っていくため)。
もしこれらがあべこべだったら、成績は奮わないでしょう。

僕は右手を締めようとかガードを上げようなんて考えていません。
反射により勝手に顎の下に戻ってきてくれます。
バランスを保つための反射が勝手に行ってくれています。

正しいパンチの指導ができればガードは下がりません。

ガードが明後日の方向へ飛んでいくのはバランスが崩壊しているからです。
膝を曲げたり、足を前へ向けたり、踵を上げたり。
いびつな姿勢によって引き起こされる反射です。
指導者はそこを見抜かなければなりません。

素人が素人に教えているのがボクシングの現状。

ガードを上げることの意味

ガードを上げるのはディフェンスとしての機能を果たすためだと説明されます。
確かにその点は否定できません。

それを踏まえた上で想像してください。
ロイ・ジョーンズと普通の腕を上げただけの素人。
どちらが殴りにくいですか。
ガードの低いロイ・ジョーンズの方が殴りにくくありませんか。
素人はタコ殴りにできてもロイ・ジョーンズ相手には文字通り手も足も出ないと思います。
理由は簡単でロイ・ジョーンズは反撃の予感をさせるからです。
パンチには抑止力があります。

スピードとパワーは最大のディフェンスです。
つまりですよ、ディフェンスのためのガードが最大のディフェンスを失わせているのだとするならば、それは本末転倒なんです。

まずはきちんとパンチを打てること。
破壊的なパンチとセットのハイガードは恐怖のボクシングですし、蟻地獄のような戦略は美しいです。

弱く遅いパンチでガードを上げていてもただのサンドバッグ。
きちんとパンチが打てるって前提があってこそ、ガードは生きますし成立します。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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