カネロとカシメロの身体の使い方の共通点

よもやま話
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カネロ・アルバレス選手の立ち方は頻繁に見られますが、この立ち方の利点が分かりやすいアルバレス選手とカシメロ選手を例に、その意味を解説し、どんな動作とどんな筋力が必要なのかを考えていきます。

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カシメロとカネロの共通点

両選手の共通点は股関節の「開閉動作」が大きく強いことです。
別の言い方をするとスタンス伸縮動作であり、大きな体重移動です。
脚を大きく広げて素早く縮める。
後ろから前に大きく体重移動させる。

両選手の動作を抽象化するとこんな感じです。

倒立振子

YouTubeでも解説しています

最初の姿勢から見ていきます。

この姿勢はアルバレス選手だけでなくとも本当に頻繁に見られますよね。

この瞬間は右の股関節に体重のほとんどを預けているので、右の攻撃力が活性化されています。

そしてこの姿勢の利点はそれだけではありません。

相手のパンチに対して頭部を遠ざけることができます。

画像を見てもらえれば分かる通り、ソーンダース選手の右手が完全に伸びても届きません。
届かせようとするなら前のめりになるか、一歩前へ踏み込まなければなりません。

右の力を溜めながら、ディフェンスも担保することができる姿勢なんです。

カシメロ選手も同じような姿勢を作ります。
アルバレス選手と全く同じ原理によって右股関節を活性化しながら、ディフェンスのための距離を取れます。

この画像からも分かるように向かい合った時の足の位置は近いので、距離は近いと錯覚してしまいますが、頭部は遠くなっています。
実質的な距離は遠いんです。

この距離を詰めるためには強い踏み込みのための大きな予備動作が必要となるので、ディフェンスでの対応までの時間を稼ぎ相手の隙を生み出すことができます。

アルバレス選手はこの股関節の奥行きを使ってカウンターを奪うパターンを得意としています。

このカウンターが相手の攻撃への抑止力として機能しています。

これはアルバレス選手がワンツーを打ち込む場面です。

先ほどの姿勢で右股関節に溜めた力を使い、前へ一気に身体を押し出してスタンスを広げながら距離を縮めていきます。
スタンスを広げるとはつまり、内転筋群が引き伸ばされるということです。

股関節を開いて身体を押し出したエネルギーの一部が内転筋群に移動し、股関節を閉め骨盤を回転させるエネルギーとして再利用されます。

ゴムの伸張・収縮のサイクルです。

左足が接地し右足が地面から離れたことにより、内転筋群に蓄えられたエネルギーが一気に解放され収縮、そのエネルギーにより骨盤が強く回転させられ軸脚に引き寄せられることで、後ろから前へ大きな体重移動が起こります。

前の足の向きスネの向きによる、ブレーキ効果を起こし腕を半自動的に加速させます。

この時上の右股関節に乗った姿勢と比較すると頭の位置が大きく動いているのが、分かります。
これは股関節が強く股関節軸でパンチを打つ選手の特徴です。

カシメロ選手も同様に後ろの股関節に乗り頭を遠ざけた姿勢から左脚を広げて一気に踏み込んでいきます。

同時に左手を伸ばしてフェイント。
このジャブを強く打ってしまうと、ジャブの段階で踏み込む前に股関節に溜めた力を使ってしまうので、右を強く打つことができなくなります。

あくまでも左は捨てパンチ、囮でその次の右が本命です。

これもワンツーの場面です。

同じように股関節を強く開き内転筋を引き伸ばすSSC。

股関節の開閉動作によるエネルギー交換を行い、効率的かつ強力な骨盤の回転を起こしています。

ワンツーの場面です。

頭部を遠ざけたポジションから左をそっと前へ伸ばし相手の注意を左へ引きつけます。

この時は右の股関節に乗っているので、右に力が溜められています。

左を捨てて、相手の動きを止めたら一気に前方へ体重移動します。

内転筋群のSSCと右股関節の伸展により強く股関節が閉じ、後ろから前への大きな体重移動、強力なヒップターンを起こします。

この時、上の画像と比べてみると、頭の位置が前後左右に大きく変化しているのが分かります。
股関節軸でパンチを打っている証拠です。

倒立振子ルーティン

奥にある股関節に乗り相手から遠ざかる姿勢をとりながら、攻撃時だけ軸脚への体重移動を行う倒立振子ルーティンは頻繁に見られます。

日本やヨーロッパでは多くないのですが、アメリカや中南米の選手には多く見られる技術です。
代表的な選手だとフロイド・メイウェザー、テオフィモ・ロペス、カシメロ、カネロ、時間をかければいくらでも出てきます。
古い選手には見られない特徴なので、比較的最近開発された技術だと思います。
僕は歴史には詳しくないのですが、メイウェザーから増えたように感じます。
昔から断片的には使われていたとは思いますが、一連の戦術的なルーティンとして確立したのはメイウェザーじゃないかな?と思っています。
詳しい方は教えてください。
強いパンチや瞬間的なスピードでペースを奪っていくスタイルが主流の中南米やアメリカに多いイメージです。

ロマチェンコ選手などのウクライナ勢のスタイルが速いリズムを土台とした移動性と手数を重視する戦略なのに対して、今回の方法はゆったりしたリズムを土台とし、緩急を生かした瞬発力がベースとなっています。
原理上、移動性と爆発力はトレードオフの関係にあるため、また中途半端にやるとそれぞれの良さが生きないため、一流選手はどちらかに寄る傾向があります。
井上選手はキャリアの初期は移動性重視、今は爆発力、階級を上げるごとに局面に合わせて器用にどちらの戦略も使い分ける印象があります。

戦略に関してはパワーや瞬間的なスピードでペースを奪うアルバレス選手のようなスタイルと手数と移動性でペースを奪うロマチェンコ選手のようなスタイルに大まかには分類できると思います。

自分はどんなスタイルを目指すのかの一つの目安になると思います。

アルバレス選手がこの技術の使い手で現役では最も参考になります。
カシメロ選手も使い手ですね。
過去の選手だと本家本元フロイド・メイウェザーがとても参考になります。

必要な能力

必要な能力を見ていきます。

骨格立ち

まずは身体を前方へ強く押し出せるこの右の股関節に乗った姿勢を作ることが重要になります。
深く膝が曲げて前の腿に体重を感じたり、骨盤が後傾した猫背ではこの姿勢は作れません。

背中の中心あたりが丸まるのが骨盤後傾の猫背、肩甲骨のあたりが盛り上がるのが骨盤前傾の脊椎湾曲です。

まずは鏡で見比べて真似している選手と何がどう違うのか比べてみてください。

骨盤後傾の骨格ではこの姿勢のポテンシャルを生かせません。

骨盤前傾を作る腸腰筋トレに関しては記事の最後に貼っておきます。

意識としてはこの姿勢を作ろうとするのではなく、右の脚に体重を乗せようとする意識です。
股関節に乗れば自然とこの姿勢になるはずです。

僕の場合は上半身の体重を右の股関節から背中の右下側で感じ(股関節に乗せる)、ケツで体重を支える(ケツを下から押されるような)感覚が起こります。

右の股関節に体重を乗せることで左図のようにボールペンを上から押さえつけるような構造を作っています。

右股関節の辺りを体重で上から押し付けるので、ケツが張るような感覚になるはずです。

構造で支えるので上半身の力を抜くことができます。

僕は骨格で身体を支える感覚を養うために片脚でのスクワットやクリーン、デッドリフトなんかをやっていました。
骨格で支える感覚がないとバランスの保持に大忙しで運動に筋力を発揮できず高重量があげることができません。
また関節を固定し片脚でバランスを保持するために必要な小さなインナーマッスルの筋力も鍛えることができます。

股関節開閉動作

股関節の開閉動作は僕が定義した動作です。
立体的に動く股関節の動作を表すには閉める(屈曲・外転・外旋)開く(伸展・内転・外旋)の方が一言で表しやすくまた理に適っていると考えたからです。

アルバレス選手やカシメロ選手はかなり強力な股関節の開閉動作とそれに伴う大きな体重移動が特徴的です。

股関節の開閉は主には大臀筋や中臀筋、内転筋群が行います。
内外旋、内外転筋群はマシーンがないと鍛えるのが実は大変だったりするんですが、チューブを使ったトレーニングを僕は取り入れていました。

以下の動画はいろんな種類があり参考になります。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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