無駄な重心移動を減らして高速化 パンチ力の強化

運動理論
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今回は陸上のアサファ・パウエル選手のスタートをヒントに僕が考えている重心移動の方法についてです。
実はつい先日野木トレーナーにも偶然、「もう一段階上の…」ということで指導されました。

「偶然が重なる」ことがあれば僕は必然だと考えるんですが、今回のことはボクシングの神がボクシングのことしか考えない僕にこれを覚えろ、考えろと命じているんだと思います。

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アサファ・パウエルの爆発的スタート

重心移動を減らすという話について、まずは僕が驚愕したアサファ・パウエル選手の爆発的スタートの動画をご覧ください。
パウエル選手の爆発的なスタートを生み出す身体制御は後述する通り、本当に化け物です。

youtubeで「asafa powell」と入力すると、検索サジェストに「asafa powell start」とありますね。
陸上を知っている方にとっては常識ですが、アサファ・パウエル選手のスタートは超爆発的です。

スタートブロック(スタートの蹴り板)を破壊したというのは有名なエピソードですね。

ただ今回はスタートブロックの破壊ではなく、重心移動の側面から見ていきます。

パウエル選手がスタートブロックを蹴ってスタートを切った瞬間です。

つま先を見てください、気持ち悪いくらい地面スレスレです。
隣の選手との足の上げ方をみればその違いは一目瞭然ですね。

加えて地面と接地する立脚以外の遊郭と上半身からは無駄な力は抜けていて無理なく自然体です。
スローで見るとお化けが宙を浮いて水平移動しているかと錯覚してしまいそうなほど、奇妙で気味の悪い動きです。
僕が化け物と表現した理由がこれです。
しかし、このお化け移動だからこそ世界一の加速ができるんです。
僕はそう考えています。

そしてその技術はボクシングにも生かせると思いました。

身体重心の移動

このブログでは何度もお話していますが、身体重心は関節を動かし質量を移動させることで変化します。

こんな風に腿を上げると重心は上とやや前方へ動きます(重心は身体の外へ出る)。

重心が高くなると、軸足にかかる力が大きくなります。

倒れようとする力が大きくなるので、姿勢を制御するのが大変になります。

パウエル・選手の脚の重心移動に焦点を当てると、つま先が地面スレスレ、腿は上ではなく前方へ移動しています。

つまり、腿の質量の移動が矢印の向き(進行方向)なので、無駄なく前方への推進力となっているはずです。

この時、首もやや丸めて頭部の質量を下へ移動させています。
これは一つには力の水平方向の成分を大きくするため(水平方向の大きさが推進力)、もう一つは力を受けやすくするため(推進するなら重心に力を加える方がいい)に身体重心を力のベクトルへ近づける走りの戦術だと僕は考えています。

以前に以下の記事で腿を上げて身体の回転力(トルク)を増すという方法をご紹介しましたが、今度はパウエル方式の重心移動のアドバンテージを考えてみようと思います。

動きが読めない

僕がパウエル選手のスタートがお化けみたいだとお話しました。
普通走るために地面へ力を加えると、それによって重心の上下動が起こります。
パウエル選手はそれがとても少なく見えます。
上方方向への力がもったいないし、大きな上下動は人間の本能の注意を引きます。

動物は激しい動きには本能的に注意が向かいます。
激しい動きで近づいてくるやつは大抵が捕食者だからです。

我が家のネコも慌てて捕まえようとすると逃げていきますが、ゆっくりそっと近づいていけば簡単に捕まえることができます。

もし、パウエル選手のようにスピードはあるのに上下や左右の大きな重心移動が起こっていなければ動物の本能が危険だと認識するのに時間がかかります。
本能による危険の警報が鳴らずに反応が遅れてしまうんです。

例えば踏み込んで行く時にパウエル選手のような、足の裏が地面スレスレの無駄のない重心移動でができれば、見た目の変化が少なく相手の本能の裏をかけるはずです。

力のロス

重心の無駄な運動がなくなるので、地面からの力のロスが小さくなるはずです。
パウエル選手のように地面スレスレであれば地面を蹴って受けた地面反力で重心を真っすぐ前方へ推進できます。
上や横への無駄な力の分散を防げます。

まとめ

パウエル選手の超人的なスタートの重心移動。
これはあらゆるスポーツに応用できる半端ない技術。

しかし、注意が必要。
重心移動を減らすと言ってもどこを減らすのかは選手の戦略によって様々、戦略に合わせた無駄の削減が必要。

ライアン・ガルシア選手の腿を上げる動作も当然一つのやり方。
間違ってはいない。

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僕みたいに尋常ならざる数学や力学に関する興味がないと読み進めることはできません。
でもこれより身の回りの現象を合理的に説明する方法はありません。

Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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