

タイソンのディフェンスが胸椎の側屈で完結しているのが分かりますか。
フックから頭を遠ざけて(≒胸椎側屈)でパンチを躱した結果として、それを下へ潜って躱したように見えますが、因果関係としては「下へ潜る⇒下へ潜る」ではなく「パンチから頭を遠ざける⇒下へ潜る」だと考えられます。
パンチから遠ざかる⇒パンチの距離が伸びる⇒衝突までの時間を稼げるかつ衝撃を緩和できる⇒外す確率を高めるかつ失敗した時のダメージを減らす
この推論には妥当性があると思います。
ディフェンスをパンチをもらう確率を減らす、とするなら「フックに対してはダッキング」という認識は誤謬です。

上の推論を敷衍するなら、「フックに対してはスリッピング(≒胸椎側屈)」がより正確な解てす。
要するに、スリッピングもダッキングもスリッピングアウェイも、全ては程度の差があるだけの同じ動作だ、ということです。


さらに敷衍するなら、上のデービスと井上のように、動作だけなら「頚椎の側屈」でほとんどのディフェンスは完結させられると考えます。
また、彼らのような「嫌がる」動きは誰でもやります。
すなわち、嫌がるだけで汎ゆるパンチに対応できます。
ただし、「腸腰筋が太いなら」という枕詞が必要になりませ。
彼らのディフェンスを規定しているのは、その動作から帰納的に考えて腸腰筋です。
腸腰筋が細い平均的なボクサーは、彼らが腸腰筋にやらせる動作を他の筋肉で代償していると考えられます。
ヒトは一歳頃までは二足歩行をハイハイで代償します。
赤ちゃんは、大人を真似しようにも必要な前提が揃っていないのでできません、
一流と比較した場合、平均的なボクサーには多かれ少なかれ、同じことが起こっていると考えられます。
僕が「前提条件を揃えないモノマネは無意味」と判断している理由です。
※才能がある奴だけはそれでいい
ここでの前提条件は「腸腰筋」です。
井上尚弥と4回戦ボクサーに残酷な程の差があるのは、腸腰筋の太さが競技能力を規定する一つの重要な説明変数だからです。
氷と水が0℃で、水と水蒸気が100℃で相転移を起こすようなことが、ボクサーのボクシングシステムにも起こっていると考えています。
話をタイソンのディフェンスに戻します。

太い胴と伸びた脚
タイソンはその体型から、太い腸腰筋を持ってると推察できます。
つまりそれは、タイソンの「危ねッ」と嫌がる反射的な頚椎の動作には胸椎が構造的に連動する、ということ。

胸椎側屈の模式図
赤は腸腰筋、黒は骨格。
腸腰筋が太い場合、反射的な嫌がる頚椎の動作に、上に示した図のように腸腰筋が連動すると考えられます。
この場合は大腰筋の付着の構造から、股関節が内旋させられます。すなわち、大腿骨が噛み合い(≒脚が伸ばされ)、床反力が効率的に骨格を伝達します。
強く床を踏んで速く走るための構造だと考えられます。

胸椎側屈、股関節へよ乗り込み
加えて、上記は大臀筋へ張力を加える姿勢でもあります。張力はSSCにより股関節を強く伸展させます。
以上の連鎖反応は、避けた力がそのままパンチ力へ変換されることを意味します。
同じ階級の井上尚弥と4回戦の差を規定している重要な変数の一つが腸腰筋だと考えらる理由です。
また、上記の論理を敷衍するなら技術を規定するのも腸腰筋です。
ここまで言えば何に資源を投下すべきかは分かると思います。

コメント