対サウスポー
所謂「サウスポー対策」。
「相手の外へ出る」ってやつ。
それを導いてくる実体についての長濱説を展開します。
この記事の主張が理解しやすくなるような簡単な例え話から。
多分、水は意思を持ちませんので、「川」という現象は、それが「川になろう」と思っているからではなく、単に地形と力学的な法則に導かれて起こっています。すなわち必然です。
同じように、所謂「サウスポー対策」も頭でごちゃごちゃ考えたから起こる、ではなく、単に股関節ロックが導く必然だろう、と僕は考えています。
「誰が言うか」と「何を言うか」
「チャンピオンは○○だと言っているよ!」という反論への反論と、その盲目性の危険について少し説明します。
一流プレイヤーは自らの技術を言語化しますが、その大半は思い込みです。原理上は膝でパンチは打てませんが、「膝で打つ」と言われたりしますし、なんなら日本のボクシング技術論は、その意味の想像が難しい理屈が多いと感じています。
足し算の厳密な定義を知らなくてもそれはできます。
仮に足し算ができる人をランダムに連れてきてそれを説明させたら、意味として筋の通らない何かを説明するだけだろうと予想します。
あるいはお金。
大半の人は「お金」を使えるだけです。その成り立ちや通貨としてのお金は説明できません。
「信用」という文脈から「お金」を理解しているのか、または子供がそうするように、物々交換の媒介として「お金」を理解しているのかでは、コロナ以降の対応が異なったはずです。先進各国の財政政策からインフレの可能性を認識し、資産を守るか、あるいは資産を増やす方法をとれたはずです。
以上、くどくどと説明しましたが、数とその計算やお金のように、「それを使えること」と「それを理解し説明できること」の間には雲泥の差があります。というか、使用することと理解し説明することは別の行為で、異なる能力が要求されます。
ボクシングの技術論もそれと同じなので、それができることと、その説明が正しいことは切り離して議論する必要があります。
すなわち「誰が言っているのか」よりも「何を言っているのか」に着目する必要があります。偉い人も間違えますし、嘘をつきます。
※敬意は払う
主張の筋道を追ってその真偽を確かめない場合は、過去の戦争で超優秀な若者が爆弾として駆り出されたようなことが起こります。つまり、命を奪われます。
※死んだ若者にではなく、政府とそれを実行させた大人に責任がある
他人に無条件に従うのは緩やかな自殺ですし、それを強要するのは殺しです。
閑話休題。
話をサウスポー対策に戻します。
上に乗せた井上尚弥の動画は、斜め方向への踏み込みが分かりやすいと思います。
腸腰筋と内転筋の強さに導かれて股関節内旋内転ロックが起こった場合は、脚は必然的に伸ばされます。この場合は膝が内に巻きこまれて脚が伸ばされるので、構造的に大腿四頭筋は弱く、かつハムケツは強くなります。
従って「踏み込む」と思った場合の体の推進は必然的に股関節が優位、すなわち斜め方向となります。
子宮に収まる為には股関節と膝を外へ開かせて体を潰せる必要があります。初期設定はこうなっていて、子宮を出た後からホルモン等で調節する設計になっていると考えられます。加齢と共に老人の骨格が赤ちゃん化していくのは、その分泌が弱まるからで、股関節がロックできずに、上記とは逆の作用を導くから、だと考えられます。
ドーピング後に骨格が変化するのは、赤ちゃんが青年へ移行する過程を強化するからだと考えるなら納得感はあります。つまり、以上の推理が妥当だとすれば、骨格の成長や形成を規定する筋肉のホルモン受容体は、所謂インナーマッスルに多く分布していると考えられ、故に骨格が大きくなる、と。
脱線したので一旦結論をまとめると。
太い腸腰筋内転筋→股関節ロック→大臀筋伸張→股関節を開く筋力の向上→斜め推進
この連鎖反応が起こっているだろうと。
すなわち、「サウスポー対策をしよう」が「サウスポー対策」を導くのではなく、腸腰筋が強い事実が、所謂「サウスポー対策」を半自動的に引き起こしている、という推理です。
この推理が妥当だとするなら、「サウスポー対策」は「外側へ」と頭で考えることやそれを反復することではなく、必然としてそれが起こる構造を作ることだと言えます。
水が流れる構造がないなら、川は発生しません。ただの水たまりです。
二軸
以上の論理は「二軸」までを導かせます。
二軸は、ヌンチャクの原理と筋肉の構造の合理化で攻撃力を高める打法です。また既述のサイドへのポジショニングは相手にもよるでしょうが、ディフェンスを補助します。
つまり、股関節ロックは攻撃力と防御力を同時に引き寄せてくるわけです。
下に載せた一流の技術の規則性は、股関節が強いことが構造的に導く必然であると考えることができます。
彼らは前提(構造)を共有しているからこそ、同じ技術体系を必然的に導出できたと言い換えられます。
これは、表面上に現れた現象をそのまま説明しただけの「サウスポー対策」「サイドのポジショニング」などを否定することにも繋がります。
以上のような「○○対策は□□すること」という類の主張の大半は、”現象が起こる原理”を説明しているのではなく、起こっていることをそのまんま言っただけである確率が高いと思います。
ロシアンスタイルは人差し指のナックルを当てますが、それをその通りに説明したのなら、すなわち握りや骨格などから論理的に演繹しないのなら、それは起こったことのそのままの説明しただけなので、価値はほとんどありません。
要するに「見りゃ分かるわ」。
大腰筋パンチ
既述のように股関節がロックされた場合は、膝の動きが構造的に抑制されます。
この意味は、以下のカネロやメイウェザー、GGGのような一流の姿勢から抽出される規則性と整合的です。
「腸腰筋に規定された股関節ロック」という前提を共有している故に、必然として同じ技術体系が導出された、との推理は妥当だと考えます。
また、股関節ロックが膝関節の動きを抑制した場合、パンチの飛距離を出そうとしたするなら胸椎の側屈が要求されます。
胸椎の側屈を起こすのは大腰筋(≒腸腰筋)です。つまり、大腰筋パンチまでが構造的な連鎖反応が導く必然であると考えることができるわけです。
ブレーキ効果
ここまでくれば説明するまでもないですが、股関節が内旋し踏み込みが斜め方向になる場合は、構造的に膝が曲がりません。脚がつっかえ棒の役割を果たし、体の推進を急停止させます。
それはヌンチャクや鞭の原理で末端の拳を加速させます。
また股関節の大臀筋などの構造を見れば、股関節ロックが強い場合は、前足の接地時の衝撃による伸張反射がより強力に体の勢いを制止し、効率的な運動量の交換が行われると考えられます。
結論。
腸腰筋から始まる連鎖反応がボクサーの技術体系を必然的に形成する。
だとすればやることは決まってくる。
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