仰け反りの話
プルカウンターは一般には上のアリやメイウェザーのようなパンチを指します。
カウンター、ないしはボクシング技術は、みぞおちが潰れないと全て中途半端になります。
「みぞおちが潰れる」は、みぞおちが潰れる≒胸椎後弯≒肩甲骨外転≒腰椎前弯≒骨盤前傾≒股関節内旋です。
すなわち、骨格をあるべき形に戻し、動物としてのヒトが持っている本来の力を解放することを指します。
パラエストラ天満長濱クラスの参加者は、仰け反りながら強く腕をスイングできているのが分かると思います。
現時点では、10分ほど教えれば、基本的には100%、女性やある程度の年齢であっても、その人の能力に見合うだけのアリやハメドの技術が再現されることを僕が確認しています。
繰り返しますが、性別と年齢を問わず誰でも、です。寝たきりの高齢者や赤ちゃんや幼児には試していませんが、平仲ジムの経験を踏まえるなら、小学生を越えているか、あるいは日常的に運動をこなしているならおじいちゃんでも、再現されると考えられます。
長岡の例を一般化できると仮定するなら、長濱式のトレーニングを継続すれば、すなわちハメドやアリと同じ骨格へ近づけられれば、彼らの動きに近づくことができます。
アリの仰け反りからは腸腰筋を感じます。背中が盛り上がり、胸椎が後弯しています。
その構造から、腸腰筋がアリの仰け反りの実体を形成していると推察できます。
頭の中で腸腰筋を強く収縮させるのを想像してみてください。胸椎の後弯と腰椎の前弯が構造的に起こることが分かるはずです。
アリの仰け反りは腸腰筋による仰け反りです。
従って、股関節は伸びますが、背骨は伸びません。
それはボクシングで危険とされる、所謂「後ろ重心」や「仰け反り」とは異なります。
大半の日本人がやってしまうのは、後者の仰け反りです。アリのとの差は、背骨で仰け反るのか、股関節で仰け反るのか、です。
ハメドやメイウェザー、アリが仰け反っても問題ないのは、その為の前提が彼らに共有されているからで、普通の黄色人のそれとは根本的に異なります。
同じように見えても、それを行う関節も身体重心も異なります。
アリの場合は背骨がS字に湾曲するので重心は股関節に乗り続けます。
姿勢の細部を捨像し、骨格の構造と重心を抽象しイメージにしたのが下です。
アリやハメドが仰け反っても倒れないのは、腸腰筋が背骨を丸め、身体重心が股関節の外へ抜けて行かないからです。
一方、ボクシングジムで禁止される仰け反りは下の後者です。構造的に重力に押されて倒れます。転倒防止の防衛本能はそれを防ぐために体を力ませますから、動きがぎくしゃくと固くなります。
プルカウンター
プルカウンターは、動画で説明しているようにみぞおちを潰します。それができない場合は既述のように似て非なるものです。
上の模式図で示したように、腸腰筋で背骨をS字に丸めて股関節へ上半身を押さえつけられる場合は、床に対して鉛直方向へ力を加えられるので、体が床を反発し動作が機敏となり、相手の攻撃を避けて即座に切り返すことができます。
腸腰筋で背骨をS字に丸められない場合は、股関節に対して力学的に上記とは異なる作用が起こり、それに連鎖する形で転倒防止の姿勢反射が起こり全身が力みます。
従って、アリやハメドなようには動けません。
みぞおちが自然体で潰れているか、あるいは練習でその感覚を掴まなければ、アリやハメドの、ないしは一流ボクサーの気持ちは理解できません。つまり、彼らの技術にはたどり着けません。
長岡やパラエストラ天満の参加者が証明してくれているように、僕の主張には一定の再現性があります。妥当な推論が重ねられているからだ、と自信を深めています。
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