ロマの試合を見て、そして京口 vs 寺地を見て感じました。
やはり、バランスはボクシングの生命線です。
上記の記事でロマが行っていることの全体像をお話しています。
バランスが生む支配力
連続性
連続性は僕の造語ですがその名の通り動作の連続性を指しています。
分かりやすい例で言うとカネロはタメが大きく連続性は低い、一方ビボルやロマはタメが小さく連続性が高い。
連続性が高い方が相手の動作のタメの間を生める形になりやすく、有利に試合を進める傾向があります。
ただボクサーも人間なので、大きなタメに起因した火力の心理的な重圧に飲み込まれることもありますし、ワイルダーの対戦相手のように一度のミスで全てをチャラにされることもあります。
ただ、連続性に特化して完成されたロマのような選手の場合、ミスを迅速にカバーするだけの能力があるので、空振りなどのミスがミスになりにくく、試合全体を通して支配力を保つ傾向があります。
ヘビー級でのウシクの活躍、スーパーフェザー級のロマがインターバルで相手をギブアップさせていた傾向、ビボルの特徴である連続性がカネロの急所にハマったことがその好例だと思います。
バランスの良い姿勢
連続性を担保するのは姿勢です。
バランスが悪い選手は動くたびに体の運動の制止に無駄なエネルギーと時間をロスしてしまい、連続性を保つことができません。
バランスの良い姿勢というのは一流選手に見られるように骨格の構造で体重を支えたような姿勢です。

上半身の重さをドシっと股関節へ乗せ、脚は床へ楽に伸ばします。

ロマは立ち方がキレイですね。

ロマゴンの櫓のように上半身を支える特徴的なスタンス。
反発が強い姿勢で強いパンチ、素早いフットワークが可能です。
ピンポン玉が弾むように動くことができるのは上記のような反発の強い立ち方をしているからです。
床から強い反発をもらえる姿勢がスポーツの生命線です。
手打ち
次に動作のイメージです。
ロマはお手本のような手打ちですね。
骨格一体化して、床からの反力を全身へ流しています。
パンチは体幹で腕を引っ張って加速させるのではなく、反発の強い姿勢で体を弾ませて手打ち。
体重移動のバランスの変化を立て直す必要がないから動作が連続します。
フェイントと後出し
反発の強い姿勢と手打ちで連続性を担保したロマが行うのはフェイントと後出し。
ただ後出しと言っても普通のじゃんけんと違うのは、距離や角度など様々な条件を揃えてから始められる点です。
ロマは自分が有利になる条件を揃えて卑怯な後出しをしてきます。
後出し好きなロマの得意パターンははっきりしていて、連続した動作からフェイント地獄、相手が慌てて出してきたところにカウンター。
カウンターで相手の動きを止めたら接近してタコ殴り。
特にL級に上げてからはレスリング気味の接近戦は大きな戦果を挙げています。
組みついてからの手打ちによるワンインチパンチがL級以降の得意パターン。
ロマは遠距離でのフェイント、駆け引きに時間を使い、相手が何か手を打とうとすればロマは連続性を活かしてそれに先回りするといった感じ。
逃げ道が全て絶たれたことを自覚するから相手は降参したくなるのでしょう。
時間を追うごとに相手を袋小路へと追い詰めていく洗練されて無駄のない蟻地獄戦略です。
京口 vs 寺地
寺地選手も反発の強い姿勢と手打ちにより連続性によるアドバンテージを活かした支配力をラウンドを追うごとに確立していきました。
特に3ラウンドからは圧倒的で京口選手の一つのアクションに対して二つ三つと先を行くような展開が続いていました。
連続性を活かして京口選手の手札を奪い、徐々に袋小路に追い詰めていく展開はロマのようで、芸術性を感じました。
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