【脱力】二足歩行の最優先事項は、転倒防止【骨盤前傾】

運動理論

今回は骨格の構造で身体を支える『骨格立ち』が何故重要なのか少しだけ踏み込んでお話をします。
これまで運動理論編で人間は四足歩行の骨格を無理やり二足歩行へ適応させているとお話してきました。
それにより、広い視野と自由に動かせる腕を手にできたんですが、四足歩行動物が最大の推進力を生み出すエネルギー源として利用していた臀部と裏腿の筋力を失ってしまったんです。

脱線しますが、倒立振り子のように頭を振って位置エネルギーと運動エネルギーを交換しながら歩くのでエネルギーを節約でき、超長距離を歩けるようになったという利点があります。
アフリカで発生した人類が生息範囲を世界中へ拡大できた一つの要因かもしれません。

話を戻します。

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姿勢制御

四足歩行から二足歩行への移行で失ったのは力強さやしなやかさだけではありません。
もう一つが骨格の安定性です。

四足歩行は4つの足、広い支持面で身体のバランスを支えることができ、比較的安定して立つことができます。
二足歩行が当たり前となった僕達は、特にその難しさは感じないかもしれませんが、実はトンデモなく不安定なんです。
二本脚の椅子と四本脚の椅子のバランスを想像すると分かりやすいかもしれません。

ソフトバンクのpepper君です。
二足歩行は大変なのでこんな脚をしているんだと思います。

その他も二足歩行のアシモはご存知でしょうか?
バランスの制御が難しく段差を乗り越えたり、坂道を歩くと転倒します。

完全な二足歩行ができる動物はほとんどいません。
鳥は飛行が主ですし、カンガルーは走行時以外は尾で身体を支えています。

二足歩行がいかに難しいか、なんとなくご理解いただけたと思います。

僕達人類はかなり難しいことをするために色んなものを犠牲にしているんです。
ここまでの回りくどい説明で僕が一体何を言いたいのかと言うと、二足歩行における最優先事項は姿勢の制御だということです。
転倒しないこと。
これが最重要、最優先事項となります。
二足歩行により頭部と地面の距離が遠くなったことで、転倒時の危険度が増します。
だからこそ転倒しないことに関して人間は超敏感なんです。

全力疾走中における人間の最優先事項も転倒防止です。
足場の悪い草原やジャングルで全力疾走中に頭部を石や岩にでも強打すればその場で死んでしまう確率も低くはありません。
頭部を守っても骨折や深い切り傷を負えば、原始時代なら死を意味します。
獲物を追いかけるより転倒しないことを優先する遺伝子が生き残ってきました。

全力疾走中に少しでもバランスを崩せば、人間の防衛本能が機能して速度を抑えようとします。
それ以上速度を上げれば転倒するからです。
そして走動作に動員していた筋力を姿勢制御へ振り分けます。
当然スピードは落ちていきます。

ボクシングも同じです。
姿勢の制御が最優先されるのでバランスが悪ければ、バランスの保持に筋力がまず動員され、パンチ力やフットワークは後回しにされます。
また、姿勢制御に脳の資源が利用されます。
転倒中に考え事が出来ないように、バランスが悪ければそれだけ意識は鈍くなりまます。

防衛本能に脳の資源が割かれていることは意識的に気がつくことはできません。

姿勢が悪いだけで集中力が低下しパンチへの反応が鈍ります。
動いている相手を目で負えません。

防衛本能を抑え込む

転倒防止の防衛本能を抑え込む為には、筋力ではなく骨格で身体を支持する度合いを強めなければなりません。
骨格立ちの度合いが高まれば高まるほど、頭は冴えますし全身の筋力は増加します。

その第一歩が股関節に乗ることです。
股関節を形成する寛骨のくぼみの形状や股関節を補強する靭帯の構造から考えて、骨盤が前傾しなければ股関節に乗ることはできません。

前から見た股関節の靭帯です。
骨盤が後傾しようとすると靭帯が引き伸ばされるような形状をしています。
逆に前傾すると靭帯は緩みます。
靭帯は骨格を守るための組織です。
骨盤が後傾すればするほど靭帯が大腿骨頭に骨盤をひきつける為の負担が増大します。

前傾すれば靭帯により骨盤を引き付ける必要性が低下する、つまり骨格で支えられるということを示していると思います。

引用

上記のように骨盤が前傾すれば股関節の上に上半身を乗せることができます。
そうして上半身の重みで下半身を押さえつけることで安定して立つことができます。

左図のボールペンはそれだけでは自立できませんが、上から押さえつけると立ちます。

同じように股関節に乗ることができれば、上半身で脚を押さえつけて楽に立つことができます。

こんな姿勢はバランスの保持に無駄な筋力を発揮するばかりか、転倒防止の防衛本能を呼び出して、運動に使いたい全身の資源を横取りされてしまいます。

転倒防止の反射

例えば頸反射、緊張性迷路反射と呼ばれる反射など様々なものがあります。
赤ん坊のころには急な転倒や怪我を予防する防衛本能が強く働いているので首や背骨の向きの変化により大人より顕著に脚や腕が動きます。

まとめ

二足歩行における最優先事項は転倒の防止。
姿勢が悪いとそれだけで身体や脳の資源を奪われてしまい最大出力弱く、反応が鈍くなってしまいます。

自然な骨盤の前傾を作る方法については以下で簡単に紹介しています。
母指球荷重もバランスを損ねますね。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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