【骨格】ゴロフキンの強さに迫る PART 4【制止】

運動理論
運動理論選手分析

前回からの続きです。
骨盤前傾とそれに伴う「骨格立ち」と骨格の構造で立つことによる脱力、それに起因した身体背部の身体を推進し、且つ大きな筋力を発揮できる筋と質量の運動への動員がトップアスリートの動きを抽象化したものであると説明してきましたが、今回は「骨格立ち」に近い話をしていきます。
トレーニングと言えば筋力を強化することばかりを想像してしまいますが、それだけではいけません。

今回の話は骨格の構造で立つ、骨格の構造を意識して技術を習得していくことがいかにに重要であるかにも繋がっていきます。

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骨格による制止

前回の記事が前提となります。
まずはジャブを見ていきます。

ジャブ

この場面を見てください。
右足で地面を蹴って身体を推進し、左足をぴんと張ってブレーキをかけています。
前回はこれが臀部のハムストリングスや大殿筋の筋力を発揮している証拠であると説明しました。

今回はこの動作のもう一つの利点「骨格制止(造語)」の解説とこの動作が身体の勢いを制止する、ひいてはパンチ力を上げる為に効果的であることを解説していきます。

その前に前提となる知識です。

大腿骨と骨盤を繋ぐ股関節を見てください。
接合部では大腿骨は斜めに骨盤と噛み合うようになっています。

大腿骨は骨盤から真っすぐ生えているわけではないんです。
直立した状態では横から挟み込むように身体を支えます。

運動の原動力となる地面反力は骨の構造を伝っていきます。
つまり大腿骨のこの部分で地面反力は骨盤側に曲がるんです。

これを踏まえた上で、まずはジャブから解説します。
先に補足しておきますが、運動する物体にブレーキをかけて制止するには、その物体の運動する方向と真逆の力(ブレーキ)を加えることが最も効率が良くなります。
ジャブで踏み込んだ場合は骨盤の運動方向と逆向きに力を加えるのが効率的です。

ゴロフキン選手はジャブを打つ時左脚を身体より前に出して、脚をピンと張って身体を制止します。
脚を真っすぐ伸ばす利点は大腿骨と脛骨、骨盤を一つの骨として扱うことができることです。
脚全体がつっかえ棒となり、身体の運動を骨格の構造で制止

させられます。
また、そのためには脚を身体より前へ出すことが必要になります。
こうすることで運動の向きと反対の方向の地面反力が返ってきます。
骨格の構造を利用して身体の勢いを止める。
骨格立ちに近い状態なので力みづらく、次の動作が素早く実行できます。

地面反力は骨の形に沿って伝わっていくので、もしも膝を曲げて地面に対して脛が垂直に接していると、脚がつっかえ棒の役割を果たさなくなります

加えて上半身の重みによって回転しようとする膝の回転を防ぐ為に筋力を発揮しなければなりません。
強く踏み込めば踏み込むほど身体を制止させるための大きな筋力が必要になります。
恐らく馬並みの筋力でもなければ、筋力が身体を押す力に負けて膝が前へ押し出されて曲がってしまいますね。
ブレーキ効果も甘くなります。

また股関節を形成する大腿骨の形状(曲がり)からも股関節を少し屈曲させて、脚を伸ばした方が効率よく骨盤へブレーキを掛けられます。
膝を曲げて股関節の屈曲が深くなると力の向きが

こうなってしまうと骨格の構造ではなく筋力で身体を制止していることになります。

上のゴロフキン選手の画像のように脚をつっかえ棒のように伸ばすことで足の裏で受けた地面反力で効率よく身体を制止できます。
身体を制止するのは筋力も大切なんですが、それがベースではいけないんです。
発揮する筋力を最小限に抑えて、骨格で力を受け止めることが大切なんです。

右フック

ジャブと同様に右フックを打つ時も左脚を身体の前へだし、脛は身体の方向へ向いています。
脚の骨格を伝う地面反力の向きは運動方向とは逆向きなので、構造上ブレーキがかかります。

筋力ではなく骨格が主導となり身体へブレーキをかけている証拠です。

骨格の構造により身体を支えているので無駄な力みを排除して脱力できます。

ボクシングに限らず「骨格立ち」、また骨格により身体の運動を制止させる感覚はとても重要です。

接地の場面でボルト選手です。
脚を真っすぐ地面に立てて上半身の重さを支えます。

筋力でボルト選手運動量を制止させようとすると、並外れた筋力が必要になるばかりか大腿四頭筋のブレーキが働いて身体を推進できません。

運動の達人マイケル・ジョーダンです。

跳躍直前の接地の瞬間の脚の角度を見てください。
骨格の構造により助走の方向と逆向きに力を加えてブレーキをかけているので上半身が脱力でき、それにより背筋や臀部の筋力、上半身の重みを推進力として利用できます。
さらに骨格の構造で身体を制止するので、助走のエネルギーへの無駄な筋力の干渉を防いで、効率よく跳躍へ利用することができます。

言及されることは少ないですが、スポーツで高い競技力を実現するには「骨格で立つ」「骨格で運動を制止する」感覚が必要になります。

まとめ

骨格により身体を支えることが重要です。

筋力は関節を回転んさせ、力強い動作のために使うべきです。
もし骨格の支持に必要以上の筋力が動員されると遅く弱い動作になってしまいます。

ゴロフキン選手や一流のアスリートが運動を骨格で支えるのは日常生活が特に影響していると思います。
彼らは骨格立ちが運動のベースなので、筋力で身体を支えようとすると違和感を覚えるはずです。
例えば、他人の車を運転した時のような、普段と違う枕を使った時のよな気持ち悪さです。
普段の動作からかけ離れた動作に違和感を覚え、気持ちのいい快適な姿勢を求めた結果『骨格制止』を行えるようになるはずだと僕は考えています。

もしトップアスリートのような身体の使い方をマスターするなら、日常生活から「骨格立ち」を意識する必要があります。

以下の記事のように僕が母指球過重を理解できない理由でもあります。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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