ハメドはボクシングの教材としてとても価値があります。彼の観察から得られるパンチやディフェンス、戦略性への理解は、きっとあなたのボクシングを強化してくれます。
安全安定と言う名の檻
規格化された超安全な檻の中に閉じ込められた動物達はいつも不安そうにその中をウロウロと徘徊しています。
安全な檻の中にいるはずの彼らの寿命は、危険に晒される野生下よりもはるかに短いのです。
飼育ゾウは野生に暮らすゾウの半分の寿命しかない
動物園の動物は規格化された檻の中で病気や怪我、飢餓とは一切無縁の生活を送っています。しかし、彼らは幸せには見えません。彼らもそう感じていると僕は思います。
ハメドの強さは、ボクシングという檻を抜け、人が本来持っているはずの動物としてのポテンシャルを発揮していることでしょう。
あえてリスクをとるからリスクが抑えられている、と言い換えられると思います。
動物園の動物が野生下の半分しか生きられないように、一見すると正しいこと、あるいは安全なことこそが、危険や矛盾を孕んでいるのです。
アッパーカットの軌道
このブログでは、腰を回すとアッパーカットは当たらない、と再三述べています。
アッパーカットは下の画像に示したのような軌道を通す必要があるからです。
腰を回した場合、必然的に肩の軸が体幹と一緒に回転します。軌道の制御が複雑になるので、下の軌道を通すのが困難となります。
しかし、この手の指導は頻繁に見ます。恐らくは
パンチ⇒腰を回す
アッパー⇒腰を回す
と誤認に基づいた誤った推理、つまり、間違いに間違いを重ねる行為が行われています。
アッパーカットは脇腹を潰して手打ち。因果関係で説明するなら、強くパンチが打てた結果として腰が回る。
閑話休題。
ハメドが体を深く横へ倒しているのは、アッパーカットに相手の腕を迂回させる為です。彼のように思い切り下からえぐるなら、彼のように体を傾けるか、脇腹を強く収縮させて脊椎を大きく側屈させる必要があります。
下の矢印の軌道で通さないとアッパーカットは相手の腕にぶつかります。
股関節ロック
体を傾けてアッパーカットできる為には、ハメドがそうしているように股関節を強く内旋内転でロックする必要があります。
股関節を内旋内転でロックする力が弱い場合は、骨盤の前傾を保てず、かつ大腿骨と脛骨が外側へ開いて関節が噛み合わないので体を支えられなくなります。
赤ちゃんの直立が困難なのは、骨を繋ぎ止めて関節を噛み合わせる為の筋力が発達していないからです。
脚の骨格を床へ向けて真っ直ぐに固定できない赤ちゃんの膝は、重力により曲げられます。
空気椅子と直立の大変さを比べてみてください。骨格を自立させて重力を受け止められない前者は数分間ですら大変になるはずです。
赤ちゃんのように老人の脚がガニ股に開いて背骨が曲がるのは、老化により股関節を内旋内転方向へ締め付ける筋肉が衰えて骨盤の前傾が保てなくなるからだと考えられます。
マイク・タイソンがあの年であれだけ動けるのは、ホルモンなどの影響により床反力の伝達とアウターマッスルの収縮を合理化するインナーマッスルが先天的に衰えにくいからだと考えられす。
成長と共に分泌されるホルモンの受容体がインナーマッスルには比較的に多いのではないかと推理します。
アナボリックステロイドは分子構造がテストステロンと類似している為に、勘違いした筋肉の受容体はそれを取り込みます。だから、PEDユーザは”骨格が”変化するわけです。ヘビーユーザーの体付きとその変化は、同一人物を疑う程です。
股関節を締め付けてロックする筋力が弱い赤ちゃんがそうであるように、股関節をロックする筋力が弱いボクサーはハメドのようには動けないと結論します。
特徴は老人のように後傾した骨盤、曲がった背骨、曲がった膝です。
下に表示したようなボクサーの立ち方は、骨格の構造的に力を出しやすいのです。だから例外なくこの形に収縮するわけです。
ハメドがそうですが、下のアリも仰け反って見えるのだけど、脊椎の湾曲と肩甲骨の外転を伴い、重心は股関節に乗せられています。
構造的な因果関係を追えば、それは股関節を内旋内転ロックする筋力が強いからだと推理できます。
結論。ハメドのようなアッパーカットには股関節の強さが要求される。
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