技術的な制約を取り払い、心を解放する

戦略

以下の記事でボクシングの最終形態についてお話しました。
人間の運動原理上、ボクシングが自然淘汰を経た先は「瞬発力に特化したデービス」と「移動性、連続性に特化したロマ」の両極ののスタイルへ収束するだろうと予想しています。

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技術的な制約が戦略的な制約になる

例えば速く強く動く技術がなければ、それが戦略的な足枷となり選手が取り得るスタイル(戦略)を限定します。

生き残る道は持久力に特化した打ち合い、手数によるポイント奪取と判定勝ち。
心身の打たれ強さが無ければまず上へはいけず、キャリアを通して消耗し最悪の場合は健康問題へ発展します。

国内の4、6回戦は上記のような戦略で溢れています。
速く強く動く技術を身に着けた、または早い段階から発見し戦略的な足枷がなかった選手から8回戦、10回戦、12回戦へと進んでいきます。もしくは生まれつき心身が頑丈で振るい落とされかった場合。

以下の動画の岩下は4回戦。
デビュー戦は負け。
3/27沖縄豊見城市にて再起戦を予定しています。
ボクシング歴は2年程度。
半年前までは本当にありふれた4回戦ボクサーといったスタイル、悪く言えば1年半ほど練習してその程度だったとも言えます。
厳しい言い方ですが、下手になる練習をして下手になっているのはある意味当然です。

手打ち、首振り、凝視を粘り強く指導して半年、ようやくですね。
1年半かけて岩下は体得した体当たりや前傾などの古い経路から抜け出し始めていると感じています。

心が知っている

タメが短く破壊的な手打ち打法が磨かれるにつれて体力、時間、精神などの戦略的資本の余剰が捻出されていきます。
その余った資本をどこへ再投下するのかは岩下の心が決めます。

具体的には岩下のリスク許容度に合わせて無意識が資本を分配します。
全く同じチャンスであっても選手それぞれのリスク許容度によって、そこへ飛び込むストレスが異なります。
同じ状況を「まだ危険だ」と判断する選手もいれば「千載一遇のチャンス到来!」と決断する選手もいますよね。
同じように手打ち打法を教えても、余った資本を打ち合いへ投下する東大河のような選手がいれば、岩下のように移動性と連続性へ投下する選手もいます。

幼少期からの経験によって培われた選手の傾性に逆らわせてはいけないと考えています。
当然、アウトボクサーのリスクへの耐性を強化するために敢えて打ち合いの練習をすることは大切なことです。
打ち合いの耐性を上げてストレスを小さくすることで失敗が減り、アウトボクシングがより機能しやすくなりますから。

しかしながら全体的な傾性に逆らうことは避けなければなりません。
心が拒絶したらドーパミンが抑制されて技術的な向上が妨げられます。それこそボクシングが嫌いになるための、下手になるための練習です。

指導者として僕が心がけているのは、スパーリング中や普段の言動の端々に現れる選手のリスク許容度を見逃さないことです。
本人がどう言っているのかではありません。
自らの臆病さから目を背けたい選手もしますし、鈍感すぎて自分のことを知らない選手もいます。
というか基本的に人間はそうだと思っています。

手打ち打法で捻出した余剰をさらなるタメに費やして破壊力を高める選手もいますが、岩下は余剰を連続性、移動性へ費やしました。これが岩下の心が出した答え。
選手のリスク許容度が評価できたら、それに合わせてスタイルを構築していきます。
完成形はロマスタイルかな。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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