股関節”軸”ディフェンス

技術運動理論

他の記事でも「股関節によるディフェンス」については解説していますが、今回はそれらの内容よりも具体的に、なぜ「股関節のディフェンス」が重要なのかを解説します。

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膝関節ディフェンス

ディフェンスでよく言われるのが「膝を使え」です。
確かに膝は大切ですが、膝に意識を向けるのは間違っていると僕は考えています。

膝は一軸の関節で直立した状態では上半身を上下にしか動かせないからです。

膝を主体とした動作ではディフェンスの達人のカネロアルバレス選手のように上半身を回転させたり、立体的で大きな奥行きを作り出すことができません。

股関節ディフェンスの重要性

簡単に股関節について復習します。

復習なのでここは飛ばしても構いません。

股関節は立体的な関節

股関節は立体的に動かせる関節なので、その大きな可動域を利用して上半身を大きく動かすことができます。

骨盤方向には制限があるものの軸が3つあることが分かりますね。

股関節は強靭な関節

股関節は腸腰筋や大殿筋、ハムストリングスなどの巨大な筋群により支えられています。
ディフェンスの時にはこれらの大きな筋群が動員されるので上半身を強く速く動かすことができます。

骨盤が前傾した姿勢でその真価を発揮する関節です。
黒人種がこの特徴が顕著に現れ、他の人種より深く前傾しています。
人種関関係なく運動が得意な人は骨盤が深く前傾していると考えられます。

股関節は上半身と直結した関節

股関節は上半身と直結された関節なのでその力が直接上半身の回転力に変換され、素早く上半身を動かすことができます。

人の骨格は股関節に導かれるように上半身が連動する構造となっています。
股関節から骨盤、骨盤から背骨へ、背骨から肩甲骨、最後に腕などの末端へと力が伝達していきます。

股関節の機能不全がすべての動作の機能不全、つまりしなやかな連動を失わせます。

だからこそボクシングのディフェンスやオフェンスに限らずスポーツにおいて重要です。

以上が運動において股関節をベースとする理由です。

『股関節軸』の重要性

今度は股関節”軸”について解説します。

中心軸より回転半径が大きい

股関節軸のパンチの記事での説明したように、中心軸と比較して股関節軸は回転半径が大きく、骨盤を大きく強く回すことができます。

股関節は最も身体を強く大きく回転させられる関節なので、どうやってこれを回転させるか、ベースとして運動するかがスポーツでは重要になってきます。
ディフェンスも全身の関節の複合的な動作なので股関節軸による回転動作がとても重要になります。

バランスが保てる

頭の位置を変えるのは首や背骨、股関節の動作で実現できますが、最も重要なのは股関節の回転になります。
何故なら転ばないことを最優先する人体の防衛本能は、首や背骨が曲がってバランスが崩れそうになると強制的にバランスを復元しようとするからです。
バランスを保持するために筋力を動員するので、パンチやディフェンスなどの運動へ利用できる筋力が低下し、遅く弱い動きになってしまいます。

上半身を動かすにしてバランスが崩れる背骨を反る伸展や横に曲げる側屈のような動作はなるべくしたくありません。

以下で解説しますが、股関節の立体的な構造を利用すれば背骨と首の側屈や伸展を行わずとも頭の位置を大きく変化させられます。

スリッピング

それでは股関節ディフェンスを具体的にいくつか見ていきます。

スリッピングは頭を横へずらしてパンチ避けるディフェンスです。

画像で見ていきます。

右のスリッピングは右の股関節を軸にして骨盤を回転させ、頭の位置を買えます。
大きな回転半径で骨盤を回すので頭部を大きく相手から遠ざけることができます。

同時に弱点の集中した上半身の正面を隠すことができます。パンチを読み間違えてボディーブローが飛んできても大丈夫です。

やり方:
オーソドックスなら右脚(右股関節)に体重を乗せながら、左股関節を内側へ捻ります。
上手く軸足の踵に乗れると臀部がピリピリとストレッチされるので、その姿勢を探してください。

ポイントは股関節を斜めの軸にすることです。
股関節軸でも縦軸だと頭の位置の変位小さいので危険です。

左へのスリッピングは左股関節を軸にして上半身を回転させます。

回転半径の大きさを生かして相手に近づきながらディフェンスできます。

やり方:
左の股関節に体重を乗せながら右の股関節を内側へ捻ります。
これも同じように踵に乗れて安定できる姿勢を探してください。

右へのスリッピングと同じように斜めの股関節軸を使います。

左右のスリッピングどちらも回転半径の大きさを生かして、避けながら距離が取れること、または一気に距離を縮められることが分かると思います。
また頭が大きく前後左右上下に動くので相手は的を絞りにくくなります。

強調したいのは股関節の軸は”縦”の軸だけではないということです。

ボール&ソケットの構造をしている三軸なので股関節は「前後」「縦横」「上下」を組み合わせ、”立体的”に回転させることができます。

ディフェンスに限らずパンチでも色んな軸があります。

斜め軸にするときのポイントは軸となる股関節に体重をかけるように意識することです。
両脚にバランスよく乗っていると、股関節が縦軸で回転してしまいます。
パンチも同じですが、コツは
軸とする股関節に乗る』。
これを意識してみてください。
自然と股関節が軸になるはずです。

股関節に乗ることができれば同時に大殿筋とハムストリングスを伸張できるのでエネルギーが貯蔵でき、素早い反撃に繋げることができます。

ダッキング

ダッキングは股関節の横軸を使います。

膝でダッキングするとほぼ躱せません。
ダッキングで躱すのが苦手な方は膝でダッキングしていると考えられます。

以下の画像から股関節ダッキングは大きく頭を動かすことができるかが分かるはずです。

加えて股関節は三軸で動くので頭は前へも動きます。

一番右は”膝”ダッキングです。
真ん中は股関節ダッキング。

股関節と膝関節のダッキングを比べると頭の位置の変化が分かりやすいと思います。
もしも膝ダッキングで股関節ダッキングと同じだけ頭を動かそうとするとかなり不自然な姿勢になってしまいます。

さらにそれだけではなく、膝は上下にしか頭の位置が変わりません。
しかし股関節ダッキングは前後にも大きく頭の位置を変えることができます。

上下、前後へ大きく頭を動かせる股関節ダッキングの利点はそれだけではなく、股関節の屈曲が同時に行われるので臀部と裏腿に力がタメられるというのも挙げられます。

「膝を使え」がオフェンスだけでなく、ディフェンスにおいても間違っていると僕が考える理由です。

膝を使えば使うほど、膝を意識すればするほど、ボクシングっぽいリズムが作れてシャドーボクシングやバッグ打ちなんかではなんだか上手くなっている気がします。

しかしいざ実戦になるとうまくいきません。

スウェイバックなど

今回はスリッピングとダッキングに限りましたが、他のディフェンスも股関節が主導となります。
膝関節、足関節は全てその補助です。
膝が深く曲がりすぎると、クッションのように股関節の力が吸収されてしまいます。

脚をつっかえ棒のようになるべく骨で身体を支えて下さい。

すべては股関節の活性化から

ディフェンスに関するトピックは注目度が高いので少し脱線して大切なことをお話します。

人体は骨の結合部となる関節を回転させて複雑な動作を行っています。
それぞれの関節の回転が合成され、全身の生みだす合力の大きさとその身体で取りうる動作が決められます。
人体最大、最強の股関節が弱ければ、その代償が上半身の関節のどこかに表れてしまいます。

その動作が目に見える、分かりやすい悪い癖とし現れていることもあります。
例えば「力み」「動きがギクシャクしてぎこちない」「遅い」「弱い」「バランスが悪い」などです。

しかしそれらの問題はあくまでも股関節機能不全の結果です。
直接、”結果”に働きかけても問題が改善しません。
解決したと思えば別の無駄な動作が出てきます。

スポーツに関する上記のような「運動が苦手」であるといった問題の根本的な原因は股関節の機能不全であることが大半だと僕は考えています。

だからまずは股関節の活性化が大切なんです。
股関節が動かないままいくら練習してもそれを補う代償動作が増えていくばかり、問題が増えていきます。

股関節軸でディフェンスするためには、まずは股関節が活性化され、股関節で動き出しが作れる必要があります。

股関節が活性化していないと軸もくそもありません。
まずは以下の記事のエクササイズで股関節の強さ、可動性を脳みそに叩きこんで無意識レベルで股関節を運動に動員できるようにしてください。

股関節軸のパンチ、ディフェンスは一朝一夕ではできません。
徐々にできるようにもなりません。
努力を続けたある日、突然できるようになります。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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