【骨盤】ゲンナディ・ゴロフキンの強さに迫る PART6【肩甲骨】

運動理論
運動理論

これまで下半身の使い方に注目してきましたが、今度は上半身について見ていきます。
と言っても掘り進めて行けば結局は下半身(股関節)の動きへと繋がっていくんですが。
当たり前と言えば当たり前の話ですね。下半身と上半身は繋がっています。
もっと言えば全身は繋がっています。

股関節の力は背骨を伝い肩甲骨へ伝わります。
その肩甲骨から末端の拳へ力は伝達されていきます。

股関節で生み出す力とその伝達の上手さがパンチ力の強さです。

長くなってしまうので、結論から言えばゴロフキン選手の背骨はしなります。
故に肩甲骨のダイナミックな動きが実現できます。

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トレーニングから考察

分かりやすいので以下のトレーニング動画を必ず見てください。
骨盤と肩甲骨の連動が理解しやすいと思います。

24:00~辺りです。
骨盤に連動して肩と腕が大きく動きます。

こんな風に腕を開くような動作は肩甲骨の内転と言います。

この瞬間は股関節が伸展しています。

股関節の動きに伴い胸椎が伸展してみぞおちが突き出しているのが分かりますね。
股関節伸展の力が背骨をしならせて、波を打つように伝わり、その力によって肩甲骨を内転させています。

こんな風に肩甲骨を前向きに広げることを外転と言います。

この時股関節は屈曲しています。

股関節で発生させ、背骨をしならせた力が肩甲骨を伝い、最後にダンベルを推進させます。

骨盤が前傾することにより湾曲した背骨のたわみが力の伝達を助けていると考えられます。

それではもっと掘り進めて具体的に見ていきます。

肩甲骨と股関節の連動

下半身まで映っている動画がなかったので僕がゴロフキン選手の骨盤と肩甲骨の連動を再現してみました。

上のトレーニングの動画ではゴロフキン選手は「股関節の伸展と共に肩甲骨が内転」し、「股関節の屈曲と共に肩甲骨が外転」していました。

以下の画像を見ればすぐにご理解いただけると思います。

こんな風に肩甲骨と股関節が連動する理由を考えていきます。

胸郭と背骨

まずは胸郭と背骨の関係についてです。

※胸骨は肋骨を介して背骨と繋がっています。

この図を見ても分かる通り、背骨と胸骨の動きは肋骨を介して連動します。

ゴロフキン選手のように骨盤が前傾すると、それに伴って腰椎が前弯し、胸椎が後弯します。

背骨の動きに合わせて肩甲骨も動きます。

ではどのように連動するのか。
肩甲骨を見ていきます。

肩甲骨は鎖骨を介して、先ほど説明した胸骨へ繋がれていますが、基本的には筋により支えられ、胸郭に張り付いているだけです。

肩甲骨を繋ぐ鎖骨は胸骨を軸として回転運動をします。

肩甲骨は鎖骨を介して胸骨と繋がっています。なので肩甲骨も胸骨を軸として回転運動をするということなんです。

鋭い方ならもうお分かりだと思います。
胸椎と連動して肩甲骨が間接的に動くんです。

理由を解説します。

ゴロフキン選手は骨盤の前傾に伴って胸椎が後弯(後ろに盛り上がる)しています。

その胸椎に押し出されるように背中が盛り上がり、それに伴って肩甲骨が外側へ押し出されます。
既述のように背骨に押された肩甲骨は鎖骨を介して胸骨を軸に前方へ回転します。

この画像ではゴロフキン選手の肩が内向きに曲がるようにアルバレス選手の方に向かってついていますね。

骨盤が前傾すると肩は基本的には前を向くということです。

以上を踏まえた上でさらに深堀します。

股関節との連動

先ほどのトレーニングの場面を見ていきます。

既述のように骨盤の前傾や股関節の屈曲を行うことで、背骨が湾曲すると肩甲骨が胸郭の側面へ押し出されて、肩甲骨が外転します。

逆に股関節が伸展すると背骨が反るようにして伸びます
そしてこの時、胸椎が伸びるように前へ押し出さるので、肋骨を介して胸骨も前へ押されます。
胸椎と胸骨の伸展に伴い、胸椎に押し出されていた肩甲骨への圧力が低下します。
必然的に胸骨を軸に回転する鎖骨に繋がれている肩甲骨は自然と背骨側へ引き寄せられるんです。

胸を張るような動作をしてみてください。
自然と肩甲骨が背骨側へ引き寄せられますよね。
骨盤が前傾するとこの連動が起こりやすくなります。

以上の簡単に流れを要約します。

「股関節屈曲→背骨が湾曲する→肩甲骨が背骨に押し出される→肩甲骨は胸椎を支点に回転し外側に広がる」
「股関節伸展→背骨が反る→肋骨を介して胸椎に胸骨が押される→背骨の圧力が低下し肩甲骨が背骨に引き寄せられる」

「股関節の伸展が肩甲骨を内転させる」「股関節の屈曲が肩甲骨を外転させる」。
これが骨盤と肩甲骨連動のメカニズムです。

以上を踏まえた上でゴロフキン選手のトレーニングをもう一度見てみます。

この場面では胸椎が前へ押し出されたことにより、肩甲骨が背骨側に引き寄せられています。

肩甲骨が背骨側へスライドするので、自然に腕を繋ぐ胸郭、体幹の筋が強い力で伸張されます。

胸や体幹のSSCにより腕が前へ強く振り出されます。
同時に肩甲骨が外転し肩が前を向きます。

骨盤の動きに連動して自然と上半身の大きな筋による伸張反射、腱の弾性を利用していることが窺えます。

次にパンチの連動です。
トレーニングと全く同じような連動が起きています。

股関節の伸展により体幹が回転し、その運動量を受け取った腕が遅れて運動を開始します。

この時股関節の伸展により背骨が伸ばされるので、それに伴い胸椎が前へ押し出されて胸を張るような姿勢になっています。

これにより肩甲骨が背骨側へスライドし肩の可動域を広げます。
それに伴って胸と体幹の筋が強い力で伸張されます。

肩の腱に体幹の大きな運動エネルギーが貯蔵され、また胸や腹部の巨大な筋の伸張反射が起こされ、強い力で筋の収縮が起こります。

体幹の運動エネルギーと胸や肩、腹部の強力な収縮により、拳が加速。

えげつないパンチの衝撃により、分厚い額の頭蓋骨越しからでも脳を揺らしKOしました。

この場面もとても分かりやすいですね。

上記の場面と全く同じメカニズムで拳を加速させています。

股関節との連動による肩甲骨のスライド現象がとても分かりやすい場面です。

股関節伸展による肩甲骨のスライド現象はボクシングのパンチに限らずあらゆるスポーツで見られる連動です。

この水泳のバタフライの場面は股関節の伸展と肩甲骨の内転が連動しています。

僕は小学生の頃水泳の選手をしていたので分かりますが、この時股関節の伸展に伴い肩甲骨は背骨に引き寄せられます。

次に野球の投球動作です。
右脚が伸びて右股関節が伸展しています。
そして、それと同時に肩甲骨は背骨に引き寄せられます。

次の場面には股関節を屈曲させて上半身を前へ倒し、そして肩甲骨はバッター側へスライドするのがご理解いただけると思います。

これが基本的な人間の身体の連動です。

背骨の役割

スポーツにおける背骨の役割は骨盤の力を肩甲骨へ伝えること、そして肩甲骨は拳やバット、ラケットなどの末端へその力を伝えることです。

背骨がしなることの利点は地面反力のロスを小さくできることと体幹の伸張反射を起こせることです。
手元を動かしただけで末端が音速を超えると言われるムチのように、しなりは末端を加速させます。
また伸張反射は随意的な筋の収縮より短い時間で大きな力を発揮できます。

上記のトレーニングにおけるゴロフキン選手の特徴は背骨が波打つことです。

股関節を伸展させた力が背骨を介しいて肩甲骨へ、そしてその力がさらにダンベルへ伝わっているのが目で見て分かるほどです。

なので、このトレーニングを真似をするのなら股関節を意識して背骨をしならせましょう。
肩の運動になってはダメです。
股関節と肩甲骨の連動を感じてください。

これまで骨盤後傾とそれに伴う力み癖の弊害を解説してきましたが、背筋の力みが運動に与える影響は大きいです。
もし力み癖により背筋が骨格化していると、背骨をしならせることができません。

また骨盤後傾背骨で背骨のたわみが少ないとしならせること自体が難しくなります。

世界最高のアスリートと言っても過言はないであろうウサイン・ボルト選手も背骨が鞭のようにしなります。
是非動画で確認してください。

このスローモーションならボルト選手の圧倒的な背骨のしなりが見られます。
股関節の伸展に合わせてみぞおちが縮んで突き出ます。
そして、その背骨のしなりが肩甲骨へ伝わるから自然と腕が振られるのです。

まとめ

股関節の動きと肩甲骨は連動する。

つまり人間の動きを作るのは股関節の動き。
運動が得意な人は股関節から動きを作り始めます。
股関節を柔らかく柔軟に使えるトレーニングをしよう!

※注意
肩甲骨を自ら広げてはダメです。
股関節の操作で自然と肩甲骨が連動するのが理想です。

補足

またしても僕が尊敬する地上最高のアスリートに登場してもらいます。

股関節を伸展した場面では肩甲骨が背骨側へスライドしているのが分かります。

そして屈曲では外側にスライドします。

つまり、骨盤と肩甲骨の連動は四足歩行時代の名残なんですね。

身体能力を上げるには骨格の動物化なんです。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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