最近以下の記事にも書きましたが、力を発揮するには色んな戦略があって、それを混合するのが重要なんじゃないかと考えています。
ボルト選手以外の100m走の選手は固いバネを利用した『ピッチ』、ボルト選手は少しだけ柔らかいバネを利用した『ストライド』。
これは先天的な特性もあるのかと思います。
ボルト選手は背が高いし身体の関節も他の選手と比べても柔軟に見えます。
同じように100mを高速移動する戦略にもこれだけの差があるんです。
正解はないはずなんです。
ボクシングは状況が目まぐるしく変化するので、理想は状況に合わせて柔軟に対応すること。戦略ってそういうことだとも僕は考えています。
最善の戦略ってものは存在しなくて、相手や状況に合わせて変えていくことが勝負においては重要。
相手の戦略も本当に千差万別ですしね。
相手に合わせて戦略を変えるってのが本当に難しいんですが。
柔軟性(ストライド)を活かすなら
これは角海老ジムの石原トレーナーがこの戦略に近いのかな?と僕は理解しています。
何故かと言えば石原トレーナーのパンチの打ち方は『重心の移動』を主眼においたの戦略だと感じているからです。
つまりどういうことか説明します。
石原トレーナーはオーソドックスの場合、右足から左足への体重移動を重視しているように思います
つまり身体重心が大きく動きます。
身体重心の右から左への長い滑走は地面から長い時間、地面反力を受ける続けるってことです。
長い時間力を受けると物体(拳)の運動量(破壊力)は増すんです。
また、この時微妙に重心の落下が曲線を描くように指導されます。
最速降下曲線というものがあって、ある地点A点からB点へ向かう場合、降下速度が最速になる曲線のことです。
重力以外に他に力が加わらない場合、直線の斜線を転がるより曲線を描く方が重心の速度が大きくなります。
石原トレーナーがこれを言っているのかは分かりませんんが、『曲線を描いて落下させると身体重心の速さが増すからパンチ力が増すのかな?』って感じで僕は理解しています。
こんな風に石原トレーナーのパンチの打法は大きな重心の移動が伴うので強烈なパンチが打てます。
短所
時間がかかります。
ボクシングにおいてコンマ何秒が大きな差になってしまうんです。
予備動作もパンチの動作も大きいので相手には読まれます。
ただ、大事なのはこの『スキル』を自分の戦略にどうやって組み込んでいくかです。
スティフネス(ピッチ)を活かすなら
スティフネスとは固いバネのことです。
柔らかいゴムボールより硬いピンポン玉はよく弾みますよね。
人間の体もバネなので固いバネにできれば、地面からの反力を受けると強く速く弾みます。
陸上だと接地を短くしてピッチを上げることができますね。
ボクシングに限らずスポーツは全般的に、地面に加える力の強さとその反力を身体の末端へ伝える動作の上手さを競います。
固いバネの戦略。
野木トレーナーの戦略はこれかなと思います。
既述のようにボクシングはコンマ何秒が天と地の差を生みます。
いくら強いパンチが打てても当たらなければ意味がありません。
短所
上記のリンク記事でボルト選手と他の100m走の選手の戦略の違いを紹介しています。
固いバネは接地時間を短くして強く弾むことができます。
逆に言えば長い時間地面へ力を加えられるボルト選手の方が一歩一歩で大きな力を発揮できるということです。
※スティフネスは鍛えれば高めることができます。
まとめ
どっちが正しい戦略だろうと考えて悩みましたが、やっぱりどっちも正しいと思います。
状況や相手に合わせて戦略を変えらえるのが最善です。
もしくはその配合割合を変える。
強い選手達はそれぞれの良さに合わせて配合しているように感じます。
柔軟性を活かして、破壊力を上げるならライアン・ガルシア選手のように距離が遠くしたり、カネロ・アルバレス選手のようにフェイントを使ったり。
スティフネスを活かすならデービス選手やテオフィモ・ロペス選手みたいに一瞬でトップスピードに到達できるので、相手の隙を生み出す方法に労力を注いだり、接地からの切り替えしの速さ(移動性)につなげてポジションをめまぐるしく入れ替えてみたり(マイク・タイソン)。
そして、どの選手もどちらか一方へ偏るってことはありませんね。
上手い具合に配合されていると思います。
それはボクシングが陸上競技とは少し違うからです。
多分、同じ短距離でも直線と曲線が混合する400Mや800Mの選手、さらに直線と曲線、登りと降りが混合する長距離の選手は状況に応じて無意識的にしろ意識的にしろ走りの戦略を変えているはずと思うんです。
ボクシングもそうですね。
どっちが正解かを迷っていましたが、ボクシングは100M競技ほどシンプルではないので、色んな戦略を混合させるのが重要だと結論しました。
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