【母指球?】踵で立ち脚を伸ばすからケツで打てる【踵?】

Twitterのつぶやきの通り、今回は踵で立つということについてお話します。
厳密には踵ではなく、足首の数mmか数cm先なんですけどね。
骨格なんかでも変わってくるとは思うんですが、僕の場合は感覚的にその辺です。

踵で立つのが自然

何となくこの辺かなーなんて思ってるんです。
もう少し足首側な気もするなー。
この真上に重心がくると脛骨で体重を支えらえるので脱力できます。

母指球で立てってよく言われるんですが、残念ながら僕はその意味があまり理解できていません。
むしろ踵(の少し前)で立った方が脱力してハムストリングスと大殿筋でパンチが打てます。
力も骨盤に上手く伝えられます。

今回は踵で立てという話をしますが、決して母指球で立つというのを否定する記事ではありません。
あくまで僕の感覚と理屈をお話します。

そもそもなんですが、人間の骨格から見て踵に体重を乗せて立つのが自然です。
上半身の重みが大腿骨に乗って、その重みが脛骨を伝い踵を押し付けてくれるので自然とバランスが取れ、無駄な力が抜けて脱力できます。

母指球に体重を乗せると重心が前へ移動するので、身体が倒れないように脛に力をいれる必要が出てきます。
当然足首を伸ばす為にふくらはぎも緊張しますよね。

で、そうなると腿も緊張します。
体重を前へ預けるということは既述の通り重心も前になるわけですから、重力が股関節を軸に前方向に回転させようとします。
今度はそれを支える為に背筋と腹筋を緊張させる必要が出てきます。
下半身と背筋、体幹の筋を体重を支える為に使うので身体能力が死にます。

と言うか本当にこれで話が済んでしまいますが、そもそも直立する時につま先立ちしているのは不自然ですよね。

パンチを打つ場合はどうか

じゃあ直立ではなくパンチを打つ場合の母指球過重はどうなんでしょう。

前へ重心を移動する時に母指球で体重を支えるということを考えていきます。
簡単に右ストレートで考えてみます。
右ストレートを打つ時パンチを打つ方向へ重心が少し移動しますよね。
この時に左の軸足で体重を支えることになります。

もしこの時母指球に体重を乗せようとすると少し踵が浮き、それに伴って膝が屈曲するような感じになりますよね。
こうなると勢いに負けて前に身体が倒れないように、ふくらはぎの腓腹筋と大腿四頭筋を緊張させてる必要があります。
つまり骨格でなく筋力で身体の勢いを受け止めるような形です。

この時体重を支えるのは主に大腿四頭筋です。
この筋を収縮させると膝関節が伸展されて前方向の力(ブレーキ)が地面へ加えられます。
つまり、母指球過重だと大腿四頭筋による膝関節伸展で身体の勢いを止めるってことですよね。

で、思い出してほしいんですが大腿四頭筋の収縮は膝関節の伸展だけでなく。股関節の屈曲もさせます。
脚が地面に着いている場合は上半身を腿へ近づけるような姿勢になります。

つまり母指球過重の場合、膝関節を伸展させて体全体へはブレーキをかけるんだけど、股関節が屈曲するので上半身は前へ引っ張られてしまうんです。
下半身だけブレーキがかけられます。

拳を加速させるブレーキ効果を起こしたいのに上半身は前へ力が加えられるからブレーキにならない。

体幹と腕のブレーキ効果が起こせず体を投げ出すような形になって拳へ上半身の運動量を伝えきれません。


僕は右ストレートを打つ時は左足の踵(より少し前側)に体重を乗せます。
敢えて母指球に体重を乗せようとはしません。
膨らんで地面に引っかかって摩擦が大きくなるような母指球の形状からしても踵に近い位置に荷重してブレーキをかけることが主な目的だと考えられます。
跳躍前や走行中に足が滑らないように。

あくまでも母指球の役割はストッパーです。
そして以下の図のように、ストッパーとしての役割を果たすのは踵荷重の場合です。

もし走行やパンチ、跳躍で母指球に乗ろうとすると膨らみを軸に脛を体に対して前方向へ回転させる力に変わってしまうはずです。
つまりブレーキにならないんです。

身体を推進する使い方ができると間違えてほしくないので、補足します。
既述のように母指球で荷重しようとすると膝が屈曲するので、大腿四頭筋のブレーキを働かせる筋力が発揮しやすくなります。
さらに、身体を推進する作用のあるふくらはぎの腓腹筋、裏腿の大殿筋とハムストリングスも縮み筋力が発揮しづらくなります。
そもそも身体を推進するために用意された構造ではないので、母指球で荷重して身体を推進しようとすると無理が出てきます。

僕は身体の推進以外でも上半身にブレーキをかける時も大殿筋とハムストリングスで行うようにしています。

何故かと言えば、ハムストリングスは股関節を伸展するからです。

足が地面に着いている場合は上半身を起こすような力が加えられます。
つまり上半身にブレーキをかけられるので拳が加速します。

それに筋が伸張されるので、伸張反射も起こせますし、骨格で身体の勢いも止められます。

ジャブの方が分かりやすいかもしれません。
こんな風に脚を伸ばしたまま軸足を接地させると、臀部の筋の伸張反射で上半身が起こされるのでブレーキ効果で拳が加速します。

加えて脛骨から大腿骨にかけてが真っすぐ地面に接地するので、脚が固い棒のようになり地面反力他の力に干渉させずに上半身のブレーキに使えます。

これも母指球でやろうとすると体の勢いを筋力で止めなきゃならないんですよね。

まとめ

母指球で立とうとするとどうしても膝が曲がります。
僕は踵立って脚を張った方が臀部の筋を使えて、且つ骨格の構造で体重(衝撃)支えらえれるので推進とブレーキの両面において理にかなっていると思うんです。

もし母指球で立つ合理的理由を知っていれば是非コメント欄で教えてください。

【トップファイターは】ゲンナディ・ゴロフキンの強さに迫る PART 3【なぜ棒立ちになる?】

今回はゴロフキン選手のジャブを例として下半身の使い方を解説します。
かなり前置きが長くなりますが、今回はジャブだけでなくボクシングや運動の本質的な部分を記述していこうと思います。

長くなってしまうので先に結論から言うとゴロフキン選手はハムストリングや大殿筋による股関節の伸展が主導となって身体を推進させています。
だからこそジャブが強く相手はゴロフキン選手の動作が読めません。

この場面はほとんど膝が伸びた状態で力を溜めてジャブを放っています。
膝関節の伸展ではなく、股関節の伸展でパンチを打ちだしているということです。

今回は日本人の直感に反する膝を伸ばすという姿勢の優位性ついて解説します。

GGGは何故膝が伸びる?
何故GGGのジャブは強く、高確率で当たる?

こんな風にトップファイターの脚が伸びている理由にも繋がっていきます。

何故カネロの脚は伸びる?

姿勢にもパフォーマンスアップに関連した深い意味があります。

何故ロマゴンの脚は伸びる?

ただ形だけ真似するだけでは彼らのような強さには繋がりません。
それどころか理解不足による弊害が出てしまいます。
深く理解することでしか実践できません。

何故トップファイターの脚は伸びる?

トップファイターの脚が伸びるのは偶然ではなく必然です。

なるべくしてそうなっている。

今回の記事を最後まで読めば、上記の姿勢になる理由とこの姿勢に由来したゴロフキン選手のような股関節伸展によるパンチがボクシングにおいて有利であることが理解できるはずです。
そして同時に黄色人種の選手に多い「骨盤の後傾に起因した猫背とそれに伴う膝関節屈曲」がボクシング、ひいてはスポーツに不利である理由が理解できると思います。

股関節の構造で立つ

その前に前回の補足です。
骨盤前傾により骨格の構造で立つ』とはどういうことなのかを説明します。
以下の図を見てください。

説明を簡単にするためにまずは簡単な例を使って力学的な知識を説明します。

同じ体重の人を両端に乗せたシーソーを持ち上げる為には重心に力を加える必要があります。

力を重心に加えることができた場合、シーソーは回転せず持ち上がります。

逆にこんな風に重心からずれてしまうとシーソーは回転してしまいす。

重心に力を加えないと物体は真っすぐ進まず回転をしてしまうんです。

もう一つ別の例です。
黒い点がバットの重心です。

ボールの位置(力点)がバットの重心から離れれば離れるほど、バットを回転させようとする力は大きくなります。

骨盤が前傾していると上半身の重心の垂線(重心から真っすぐ引いた線)が丁度股関節の上にきます。
股関節に上半身の重みが乗るような形になり大腿骨を上から押さえつけるので、バランスが安定します。

逆に後傾していると上半身の重みに押されて骨盤は後ろに回転しようとします。
その回転を防ぐために筋力を発揮する必要が生じてしまいます。

次は股関節の構造を見てみます。
左側の一番下にある骨盤の股関節が収まるくぼみを見てください。
前側より後ろ側の方がくぼみが広くなっていますよね。

骨盤が後傾すると大腿骨と骨盤のかみ合わせの接触面積が小さくなり、接合が浅くなってしまいます。

接合部の接触面積が小さいとバランスがとり難くなります。

鉛筆を立てて、直立させる時は指先で抑えるより、指全体で抑える方が安定しますよね。

骨盤は前傾した方が大腿骨と骨盤の接触面積が増えて安定するんです。

かなり長くなりますが、次にハムストリングスによる股関節伸展についてです。

骨盤の前傾とハムストリングスの伸展

最初に骨盤の前傾の復習をします。

筋は引っ張られて伸張した状態で筋力を発揮しやすく、逆に縮んで収縮した状態では筋力を発揮できません。

腸腰筋の収縮により骨盤が前傾しハムストリングスが伸張された状態はハムストリングスの腱に弾性エネルギーが蓄えられ、また筋繊維が伸張された状態なので筋繊維が収縮しやすく、伸張反射が起こりやすい状態であると言えます。
常にアクセルがかかっている状態です。

股関節の屈曲と伸展

人間の股関節は直立した状態では伸展しにくく屈曲しやすいという重要な性質を簡単に説明します。

股関節を進展させるハムストリングスは股関節が伸びた状態、つまり直立した状態ではほとんど縮んでしまっているので筋力をほとんど発揮できません

しかし、この画像のように人間の股関節は常に伸展した状態にあるんです。
直立した状態なので脚はそれ以上ほとんど伸展(反らせる)することはできません。

逆に直立した状態は屈曲なら容易くできます
体が柔らかい人なら脚と上半身がくっついてしまうはずです。
これは後の説明で使うので覚えておいてください。

何故、歩行や走行で重要になる股関節の伸展がこれほど行い難い骨格の構造をしているかと言うと、これには実は進化の過程が関係しています。
四足歩行動物の骨格を無理やり二足歩行適応させた結果、ハムストリングスが使いにくく弱くなってしまったんです。

理由を簡単に説明してみます。

四足歩行の動物は人間でいう上半身を倒した四つん這いの姿勢です。
なので股関節は常に屈曲しハムストリングスが伸張され縮みやすくなっています。
だからこそ四足歩行動物は力強く地面を蹴り上げて身体を推進できるんです。

逆に人間は常に股関節が伸展した骨格なので、ハムストリングスや大殿筋といった身体を推進する筋を使うためには一度股関節を屈曲させる必要があります。

例えば垂直跳びをする時です。
高く跳ぼうとすると、力を溜める為に一度屈んで股関節を屈曲させますが、あれは大殿筋やハムストリングスを伸張するためです。
このように人間は骨格の構造上、身体背部にはる強力な筋の力を発揮する為に一度股関節の屈曲動作が必要になってしまいます。

しかしながら動物はそれが必要ありません。
力をハムストリングスや大殿筋が伸張された状態が普通の姿勢なんです。
ごく簡単に言うと、動物は人間の垂直飛びの脚力を連続して発揮できるからこそ、あんなに速くて力強く走ることができます。
逆に言えばハムストリングスを使う動作は動物的で力強くなります。

四足歩行の動物が人間のように上半身を起こして二足歩行に移行するためには股関節を伸展させる必要があります。
大昔の四足歩行の動物の骨格を無理やり二足歩行として利用しているため、人間の運動には解剖学的な矛盾が生じてしまい、四足歩行の動物のような強靭でしなやかな動きが実現できません。

しかしながら二足歩行へ移行したとはいえ、狩猟が組織化され農耕が発達するまでの間は人間も動物と同じように狩猟を続ける必要があり、速く走る必要がありました。
そこで人間は四足歩行動物のように速く走るため、骨盤を前傾させたんです。

四足歩行の動物のような股関節の屈曲位ほどではないにしても骨盤を前傾させることでハムストリングスに張力をかけることができます。

ハムストリングスによる推進の戦略をとることで太古の人類は四足歩行の動物がとるような戦略を少しでも再現し、爆発的な脚力を維持しようとしました。

しかしアフリカを出た人類は農耕を開発しました。

座り仕事や腰を屈めた田植えが仕事の主となると、強い腸腰筋が邪魔して腰を屈められなくなります。

次第に田植えに必要のない骨盤の前傾を強調する腸腰筋は弱まり、モンゴロイドのそれはネグロイドの1/3にまで退化してしまったのです。

※農耕民族に生まれたことを卑下してはいけません。
農耕民族の優位性についても今後お話していきます。

こんな風に進化的な違いによりモンゴロイドは運動が苦手になってしまったんですね。

ここまで読んでいただければもう理解していただけたと思います。

運動をするのなら狩猟時代の骨格と筋力を再現する。

それをさらに深めていくと、四足歩行動物の身体を再現することに繋がっていきます。

あた骨格を再現することと同時にそのアドバンテージを生かす「感覚」を覚える必要があります。

人間の推進力を生むのに有利なハムストリングス

動物が股関節を屈曲させてハムストリングスの筋力を利用するように、腸腰筋が強く骨盤が前傾するとハムストリングスを使いやすくなるので、スポーツに有利になります。
骨盤前傾は動物的な骨格で四足歩行の動物の体の使い方に近いと言えます。

ここからはハムストリングスによる股関節伸展が何故スポーツに有利なのかを少し解説します。

地面を押す作用があるのは主に「大腿四頭筋」による膝関節伸展と「ハムストリングス」による股関節伸展の動作です。
黄色人種は大腿四頭筋を運動に動員する傾向にあると言われます。

ハムストリングスと大腿四頭筋の二つには矛盾した機能があり、その矛盾がパフォーマンスに大きな違いを与えます。

まずは大腿四頭筋から見ていきます。

大腿四頭筋の主な役割は膝関節の伸展と股関節の屈曲です。大腿四頭筋が付着しているのは骨盤と膝の皿辺り。
少し頭の中で大腿四頭筋を収縮してみます。

すると膝が伸展しながら股関節が屈曲するのが分かると思います。

ハムストリングスは骨盤から脛を形作る脛骨と腓骨にかけて付着しています。

それではハムストリングスを頭の中で収縮させてみす。

すると膝を屈曲させながら股関節を伸展します。

大腿四頭筋とハムストリングスの矛盾した関係

二つの関節による違いを図にしてみました。
ホント下手くそな画像で申し訳ございません。

大腿四頭筋による膝関節の伸展は地面に対して下向きとやや前方向に力を加えることになります。
作用反作用によって上向きとやや後ろ方向の力が返ってきます。
つまり、進みたい方向とは逆向きの力になってしまうんです。

※下半身の前屈度や足首の使い方と強さ、筋を上手く連動させればその限りではないと思います。
むしろ強くなるかも。
また近い距離であれば膝の伸展でも強いパンチが打てると考えます。

ハムストリングスはどうかと言うと。
地面に対してやや後ろと下方向へ力を加えます。
地面から返ってくる力は逆向きの前と上方向です。
進みたい方向の力が返ってきます。

このように身体を推進するにはハムストリングスによる股関節の伸展が有利で、大腿四頭筋による膝関節の伸展はハムストリングスによる股関節の伸展を阻害してしまう可能性があるんです。

では、どんな場合に膝関節伸展が優位になってしまうのか。
それは「骨盤を後傾させた時」です。

骨盤の前傾はハムストリングスに張力をかけ筋力を発揮しやすくし、大腿四頭筋を緩め筋力の発揮を防ぎます。
骨格の構造上、骨盤の後傾では真逆のことが起こります。

猫背で身体能力は死ぬ

骨盤が後傾していると大腿四頭筋に張力がかるので力が発揮しやすくなります。
逆にハムストリングスは緩んで力が発揮しづらくなります。
なので猫背は身体を前へ推進するのスポーツでは不利な姿勢になってしまうんです。
逆に後ろ向きに走るスポーツなら有利かもしれません。
聞いたことありませんが…

以下重力による位置エネルギーを利用しようとした場合の骨盤の前傾と後傾の違いを図にしました。

「力をタメる」とはを「重力による位置エネルギーを下半身の腱の弾性エネルギーとして貯蔵する」ことです。
人間はその腱に貯蔵されたエネルギーを利用して身体を推進したりパンチを打ちます。

上図の左のように骨盤が前傾した状態で上半身の落下させると、上半身の重みにより骨盤の前側が押されるので、さらに骨盤が前傾しハムストリングスが伸張されます。
これにより腱に位置エネルギーが貯蔵され、また筋繊維が伸張されることによりハムストリングスの筋力が発揮しやすくなります。
同時に大腿四頭筋が緩むので筋力の発揮を防ぎます。

今度は上図の右、骨盤が後傾した場合を考えていきます。

骨盤が後傾している状態で力を溜めようと上半身を落下させると、骨盤の後ろ側が押されてさらに骨盤が後傾します。
大腿四頭筋に腱にエネルギーが溜められ、また大腿四頭筋が伸張され筋力が発揮しやすくなります。
逆にハムストリングスが緩み、ハムストリングスの筋力が発揮しづらくなってしまいます。

骨盤の後傾の影響はそれだけではありません。
不要な力みを生み出します。

今度は骨盤の後傾に伴う猫背の弊害である「力み癖」ついて解説します。

既に述べた股関節は「直立した状態だと伸展しづらく屈曲しやすい関節」ということを思い出してください。

骨盤を後傾した姿勢で力を溜めようとすると上半身の重みはさらに股関節を伸展しようとするんです。
股関節はそれ以上伸展できないので、それをかばう為に膝が曲がり屈曲します。
この場合、後ろに倒れようとする身体を大腿四頭筋の筋力により引き付けてバランスを保つ必要が出てくるので身体が力みます。
これが僕の言う「力み癖」であり、骨格の構造ではなく筋力により立った状態です。

大腿四頭筋の力みはふくらはぎ背筋の力みに繋がり体幹と上半身の大きな筋の可動性を低下させます。
骨盤が後傾するとハムストリングスばかりか、全身の筋の機能が死んでしまうんです。

骨盤の後傾により腰椎から頸椎にかけての後弯が強調されています。

このような骨盤が後傾に起因した猫背、それをかばうように膝が折れた姿勢は非力でしなやかさに欠けたファイターの典型だと思います。

残念ながら国内レベルでは頻繁にみられる姿勢です。

一方でトップファイターの姿勢はどうかと言うと、脚が伸びてすらっと立っています。

メイウェザー選手が棒立ちで突っ立ているような印象を受けたことありませんか?

これこそが骨格の構造で立ち、体幹や身体背部の巨大かつ身体を推進する作用を持つ筋を運動に動員できる姿勢なんです。

ロマゴンも棒立ちしているような印象を受けると思います。

この両選手も突っ立って棒立ちしているように見えますね。

アルバレス選手は顕著だと思います。
膝が伸び股関節で身体を支えています。
ゴロフキン選手も後ろ足がピンと立っています。

体幹が強いトップファイターのほとんどは特に奥脚がピンと張ります。

ここまでくるとすぐにでも真似てみたくなると思いますが、注意が必要です。

これらの姿勢だけ真似しても意味がありません。
ハムストリングスの使い方を知らないとほとんどの場合は大腿四頭筋による膝関節伸展で力を発揮しようとする「癖」によってむしろ力が出にくくなるばかりか、バランスが悪くなります。

この姿勢の重要なところは骨盤が前傾し後ろ脚のハムストリングスや大殿筋に張力をかけて、股関節を伸展させることです。

世界のトップレベルの選手を俯瞰してみると棒立ち、特に後ろ足が突っ立っている印象を受けます。
いわゆる棒立ちというやつで、日本では注意される傾向にあるそれらの姿勢ですが、実は人体の構造上、特に体幹が強いトップアスリートになってくると自然なんです。

後楽園ホールレベルの試合だとほとんどの選手の膝が曲がって腰が引けている印象を僕は受けます。
これには当然人種、骨格の違いもあるとは思います。
しかしそれらを考慮しても僕はこれに大きな違和感を覚えます。
恐らくは、相撲取りのような姿勢(強い相撲取りは股関節で立つが)がスポーツに適した姿勢(当然状況にもよる)であるという指導の現場の思い込み、根本的な理解不足が起因していると感じています。

僕はこの場面にアルバレス選手のフィジカルの強靭さを感じます。

股関節と骨盤の構造により身体を支え、脚がピンと伸びて力が抜けています。

マイク・タイソンにも似たような印象を受けます。

骨格の構造により支えられ、力の抜けた上半身。

ここまでを簡単にまとめます。

まとめ

骨盤が前傾することで身体を推進する作用を持つハムストリングスや大殿筋といった筋が活性化され、また骨格の構造により安定して立つことができます。
それに伴い上半身が脱力し、体幹や身体背部の巨大且つ身体を推進する作用を持つ筋を運動に動員することが可能になります。

極端に言うと動物的な骨格を目指すことにより、身体能力は向上させられます。

ハムストリングスによる推進がトップアスリートの鍵

長くなりましたがゴロフキン選手の解説です。

簡単な復習です。
動物の例や股関節伸展による力の向きの図で示した通り、腸腰筋による骨盤前傾とそれによる大殿筋とハムストリングスの活性化、それに伴う大腿四頭筋の非活性化は股関節伸展による前方への大きな力を生み出せます。

それではゴロフキン選手のジャブを見ていきます。

股関節伸展による推進

簡単にゴロフキン選手の動きを抽象化すると。

強靭な腸腰筋による骨盤前傾と、それ伴う大殿筋やハムストリングスなどの活性化で身体を推進する筋力を高めている。
また「骨格立ち」で脱力することで肩甲骨付近の上半身が持っている質量のエネルギー(重み)をパンチへ利用し、拳の運動量を大きくしていると考えています。
これを簡単に言うと脱力して肩甲骨までを腕のように扱うことで、左上半身の重みを拳へ乗せているということです。

次にジャブにおける股関節の使い方を見ていきます。
基本的にボクシングの推進力を生むのは後ろにある脚です。
オーソドックスなら右の股関節の伸展動作と膝関節の伸展動作の強さがパンチの強さや踏み込みの速さに繋がります。
ゴロフキン選手の後ろ脚を見てみます。

この場面では左足を完全に浮かせて右足で体を支えています。
膝の屈曲は浅く、ほとんど伸ばしたままです。
膝を曲げ過ぎると前の腿が伸張されてしまうので、大腿四頭筋による膝関節伸展が優位になってしまい、踏み込んでジャブを当てる時には不利になると考えられます。
この場面を見ても分かる通りゴロフキン選手は踵に体重を乗せ、股関節の伸展を主導として踏み込んでいます。

左足を浮かせて全体重を右足に乗せるのは上半身の質量で臀部の筋を一端伸張させてから収縮させる『SSC』のテクニックです。
このテクニックにより筋の強力な収縮を起こす伸張反射と腱の弾性により上半身の位置エネルギーを利用することができるので、股関節を強力に伸展させて身体を前方へ推進させることができます。
力をタメるという部分で解説したように骨盤が前傾していることで臀部と裏腿に力をタメることができます。
骨盤後傾の猫背で力をタメると上半身の重みで背骨が曲がり、また膝が屈曲することによる大殿筋優位かつ骨盤がさらに後傾してハムストリングスが緩んだ状態になります。。
※SSCについてはリンクの記事をお読みください。

SSCは脱力するとその効果が高まります。
実際にどれくらい脱力しているかは見てわかる部分がとても少ないですが、ゴロフキン選手は骨格の構造からしてもかなり脱力しやすいと考えられます。
脱力して筋を緩めると全身の筋(水分を多く含む)自体が重力に引っ張られて落下しますし、また以前の記事で解説したボルト選手がやっていた肩を落下させていた技術のように腕や肩の位置エネルギーを利用し、大きな力を地面を加えられます。
加えて脱力した状態の方が「SSC」による強い筋と腱の収縮を起こすことができます。
ゴロフキン選手は脱力による位置エネルギーの利用とSSCの強化により強い力を発揮しているはずです。

左足のブレーキも股関節伸展

ジャブを打ちだした瞬間の左足を見てください。
脚を伸ばしています。
これにより左足が接地した瞬間の慣性力(身体の勢い)により股関節のハムストリングスが伸張され、ハムストリングスの伸張反射が起こり股関節が強い力で伸展されることになります。
股関節の伸展、つまり上半身を後ろに引くようにしてブレーキをかけられるということです。

股関節の伸展による強いブレーキ効果により腕が加速し、高速で拳を前方へ打ちだすことができます。

またこれは別の記事で解説しますが、骨格の構造で身体を支える「骨格制止(造語)」を行っています。
ゴロフキン選手は骨格制止とブレーキ時の臀部のSSCにより強いブレーキ効果を起こしています。

https://riku-nagahama.xyz/2020/08/30/%e3%80%8e%e5%8a%9b%e5%ad%a6%e7%9a%84%e3%80%8f%e3%80%8e%e7%94%9f%e7%90%86%e5%ad%a6%e7%9a%84%e3%80%8f%e5%81%b4%e9%9d%a2%e3%81%8b%e3%82%89%e8%84%b1%e5%8a%9b%e3%81%ae%e9%87%8d%e8%a6%81%e6%80%a7%e3%82%92/

もう一つの股関節伸展の利点

ハムストリングスによる股関節の屈曲と伸展を主としたパンチの利点は推進力のみならず、膝関節の屈曲と伸展を主とした動きと比べて頭の高さが変化したり力を溜める動作が分かりにくいという面もあるので攻撃に移ろうとしていることを相手に読まれにくくなります。
上の画像を見てもらえればお分かりになると思いますが、力を溜めているのがかなり分かりづらいはずです。

ゴロフキン選手のジャブが強く命中率が高いのはハムストリングス主導による動作が一つの要因として挙げられるはずです。

まとめ

何度も述べてきましたが、ネグロイドがスポーツに強い理由の一つとして体の前面ではなく、体を推進する作用を持つハムストリングスや大殿筋などの背面の筋や身体の大きなエンジンである体幹の腸腰筋といった筋を運動に動員する傾向が強いからだと考えられています。
加えて骨格構造により立つことの脱力。

骨盤前傾だけ真似すると背中の筋を収縮させて背骨を反るような姿勢になり、身体背部の筋が緊張してしまいます。
脱力の効果はこのブログでお話してきたのでお分かりだと思いますが、背中の筋で立ってしまうのは本末転倒で逆効果になってしまいます。
まずは股関節や骨盤、背骨を腸腰筋の収縮で操作する感覚を覚えることが先決です。

僕は試行錯誤により腸腰筋の収縮で骨盤を前傾させハムストリングスに張力がかけられる状態、身体背部の筋がピリピリと緊張する感覚を掴んできています。

このブログで紹介してきた方法を統合し体系化して実践していくと骨格構造による脱力と身体背部のSSCが覚えられると思います。
メンタルトレーニングも実はフィジカルトレーニングになります。

この辺の関係はまた別の機会にお話します。

今回は臀部の筋を使った股関節伸展によるパンチが有利である理由を解説しました。
ケツで打つコツを簡単に解説すると、僕の場合は腿で地面を押す感じではなくケツで地面を蹴る感覚でうす。
骨盤前傾でなくとも、後傾を防げればできると思います。

次回は『骨格制止』や右のストレートについても解説していきます。

【腸腰筋】ゲンナディ・ゴロフキンの強さに迫る PART 2 【構造的脱力】

ゴロフキン分析パート2です。
前回はジャブが当たる理由とフックが強い理由について分析してみました。

今回はゴロフキン選手の骨格からパンチ力の秘密や下半身がスーパーボールのように跳ねる理由について解説してみます。

「パンチを強く打つためのトレーニングをしたい」「身体能力を上げたい」という方の参考になればと思います。

https://riku-nagahama.xyz/2020/09/17/%e3%82%b2%e3%83%b3%e3%83%8a%e3%83%87%e3%82%a3%e3%83%bb%e3%82%b4%e3%83%ad%e3%83%95%e3%82%ad%e3%83%b3%e3%81%ae%e5%bc%b7%e3%81%95%e3%81%ab%e8%bf%ab%e3%82%8b%ef%bc%81/

ゴロフキン選手はスピードはあまりありませんが、僕はその動きから物凄いバネを感じます。
特に下半身のバネです。

今回ゴロフキン選手を観察し分析して、やっぱり下半身の強さを再認識しました。
ジャブの時や強いパンチを打つ時に身体が強く弾んでいるように見えます。

ゴロフキンのスポーツ向きの骨格

骨盤の前傾

まず一つはゴロフキン選手の特徴的な骨格について解説します。
ネグロイド(黒人)にはほぼ見られる特徴で、コーカソイド(白人)やモンゴロイド(黄色人種)に少ない特徴があります。
それが骨盤の前傾です。
ネグロイドが陸上などのスポーツ分野に強い一つの要因となっています。

史上最速のボルト選手は骨盤が前傾しみぞおちが突き出しています。

少し解剖学的な話になってしまいますが、がんばって解説してみたいと思います。

図は腸腰筋です。

腸腰筋は背骨のみぞおち辺りから骨盤と股関節の付け根の付近に付着しています。

収縮すると腿を持ち上げて股関節に腿を近づける働きがあります。

ハムストリングスは人間の後ろ側の筋肉で、骨盤と膝の裏辺りに付着しています。

この筋肉が収縮すると後ろ向きに腿が回転しながら骨盤に引き寄せられます。
エビ反りみたいな感じですね。

地面を蹴って体を前へ進めてくれる筋肉です。

腸腰筋が強いと骨盤が前腿側に引っ張られるので、骨盤が前傾します。
すると骨盤の裏側についている拮抗筋であるハムストリングス引っ張られてハムストリングスの腱に張力がかかります。

バネを引っ張ると縮みますよね。
腸腰筋が強いと常にハムストリングスのバネを引っ張った状態になります。

つまりハムストリングスに常にアクセルがかかった状態です。

ネグロイドがスプリントに強い理由ですね。

ゴロフキン選手は異様な身体の形をしていると感じたことありませんか?

この画像のゴロフキン選手は猫背に見えますが猫背ではありません。
真逆です。
アジア人に多い骨盤が後傾したいわゆる猫背は運動に不向きな体型ですが、ゴロフキン選手は骨盤が前傾し、それに伴って背骨が湾曲しています。
明らかに運動向きの体型です。

この画像では驚くほど背中が湾曲して分厚い体をしています。
ロマチェンコ選手もゴロフキン選手と似たような体型をしています。
ネグロイドも骨盤が前傾し背骨が湾曲していますが、それと比較すると微妙に違います。
肩が丸まって肩甲骨が内側に曲がっているように見えます。

これは以下で述べていく前鋸筋が強く収縮し肩甲骨を外転させているからだと考えています。
ゴロフキン選手のような分厚い骨格はコーカソイド(白人)のトップアスリートに多い骨格かなあと思っています。

この画像を見ただけでゴロフキン選手は腸腰筋が強く収縮していて、ハムストリングスに大きな張力がかかり常にアクセルがかかった状態であることが窺えますね。

分厚い上半身

腸腰筋の強い収縮により背骨が湾曲していることの他に、ゴロフキン選手が分厚い体をしている要因について考えてみます。

前鋸筋(ぜんきょきん)は、胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうちの一つ。肋骨(第1~第9)腱弓を起始とし、肩甲骨と胸郭との間を後上方に走りながら、肩甲骨に停止する。
肩甲骨を前外方に引き、肩甲骨が固定されていると肋骨を引き上げる作用がある。

Wikipedia

前鋸筋がボコっと盛り上がっているのが分かるでしょうか。

僕はゴロフキン選手はこの前鋸筋がかなり強いと考えています。
肩甲骨と肋骨に付着している前鋸筋が肩甲骨を強く引き付けるので肩が内側に向かって曲がるので楕円形の分厚い体になります。

肩甲骨はパンチの衝撃を受け止める骨になります。
これを引き寄せる力が強いということはパンチの衝撃に負けにくいということです。
パンチの衝撃に負けて肩甲骨が押し返されたりグラついてしまうとパンチの衝撃が分散してしまいます。

ゴロフキン選手は前鋸筋が強いので、パンチの衝撃を効率よく伝えられるのだと考察しています。
またPART 1で取り上げた上半身によるSSCにおいてもゴロフキン選手の前鋸筋はパンチ力に起因しているはずです。

骨格の構造による脱力

もう少しだけ骨格の話を深めてみます。
身体を前へ進める強さと上手さを競う陸上競技では特にネグロイドの骨格的な特性が有利に働くので、トップレベルの選手の身体的な特徴の類似性は顕著になります。
その好例としてウサイン・ボルト選手を挙げます。
お暇なら以下の動画を見てみてください。
やる気なさそーにダラダラと位置について立ち走り出します。
日本なら怒られそうな場面ですが、これが速さの秘密です。

以下ウサイン・ボルト選手の背面です。

湾曲した背骨に押し出されるように外側に広がり外転した肩甲骨。
胸郭は湾曲した背骨に上からかぶさるような形になっています。
肩甲骨はその胸郭の上にのっかるように付着。
これにより腕を筋力で持ち上げる必要がないので僧帽筋が脱力します。
必然的に腕が垂れ下がったなで肩です。
長い腕が腿の辺りにまで伸びてさらに長く見えます。

この画像は頭は前向きについていて、いわゆる猫背のように見えます。
しかし全く違います。

骨盤の前傾に合わせて腰椎が前弯し胸椎が後弯、頸椎が前弯するので頭部は前へ突き出るのがボルト選手の骨格であれば自然なんです。
骨盤の前傾により背骨がS字に曲がっているから猫背に見えるんです。

外側に盛り上がった背中も特徴的ですよね。

胸郭は背骨について内臓を覆うような構造をしています。
骨盤が前傾し背骨が直立せず湾曲が強調されると丁度肋骨が背骨にぶら下がるような形になります。

これにより胸郭を筋で支える度合いが低下し無駄な筋の脱力に繋がるはずです。

この骨格の特性により背中が脱力するので、肩甲骨や肩関節の可動域が広がります。

日常生活においても無駄な筋の緊張から解放されるので、「力み癖」がつきません。

逆に言うとこの骨格になり難いモンゴロイドは「力み癖」がつきやすいとも言えます。

肩甲骨と上腕を繋ぐ肩関節は股関節と同じ球関節です。
球関節なので股関節と同様に3Dに動きます。
そして肩関節は人体最大の可動域のある関節なので本来であれば腕はダイナミックに動かせます。

しかし上半身を乗せて安定させる股関節と違い腕は肩にぶら下がっているだけです。
なのでダイナミックに動かせる反面、安定性が低いんです。

肩関節と繋がっている肩甲骨も上半身との関節は有さず、鎖骨によって上半身に繋がれて張り付いているだけなので、基本的には周囲の筋によって支えられています。
なので、重力に逆らって安定させる為に筋を動員しています。

骨格の構造で重力に抗えず、筋力によって上半身を支える「力み癖」による緊張が長期間にわたって続くことにより血行が低下し、肩こりや肩が上がらなくなる四十肩へ繋がっていきます。

この画像のボルト選手は力が抜けてスラっと立っている印象を受けます。
上半身を筋肉で支えず股関節の上に上半身の重さを乗せて、骨格の構造で支えるので力みが生まれにくいのだと考えます。

無駄な力が抜けるからふにゃふにゃと歩いている、走っているように見えます。
構造的に体重を支えるから上半身の力が抜け、肩甲骨、ひいては上半身を使ったダイナミックで力強い動きに繋がっていきます。

力み癖があると手先や足先によるちょこまかとした小手先に動きになり体幹の大きな筋を動員できないのでパワーとスピードが出せません。

全ては繋がっています。

ネグロイドのアスリートが脱力しダラダラ動いているように見えるのはこの骨格が強く影響していると僕は考えています。

力み癖のないボルト選手はこの場面では僧帽筋や肩甲骨を支えるその他の筋群の脱力により驚くほど肩が落下しています。
腕や肩甲骨周辺の質量の落下により利用できる位置エネルギーを増やせるので、地面へ大きな力を加えられます。
地面から返ってくる反力が大きくなるということです。

逆に今度は異様なほど肩が上へ移動します。
上の画像とは逆に肩甲骨や腕を含む質量の運動エネルギーにより身体が持ち上げられ推進力を生み出すことができます。

ボルト選手はネグロイドのアスリートの中でも特に脱力してふにゃふにゃ走っているように見えますが、この脱力があるからこそ効率的にエネルギーを推進力へ変換でき、世界最大のストライドを生み出すことができるのだと僕は考えています。

これはサッカーをするボルト選手なんですが、タコ踊りしてふざけているように見えますよね。
でもこれがボルト選手の本気で、フィジカルエリートたる所以です。
背中が脱力してぐにゃぐにゃに動かせます。

肩甲骨の重心移動のエネルギーを活用することで初動が速くなり、また重心移動を相手にも読まれにくくなります。
上半身の脱力によりダイナミックな動きを実現しています。

ゴロフキン選手もやたらメリハリのある身体をしていて、反った背骨にぶら下がるように肋骨が繋がり、その上に肩甲骨がのっかっています。
そして背骨に押し出されるように肩は内側に曲がっています。

ボル選手やゴロフキン選手の持つこの骨格は『動物的』なんです。

馬の骨格です。
湾曲した背骨と楕円形の胸郭、それに沿うように前へ(足側)向かって肩甲骨が付着しています。

股関節は常に屈曲位(骨盤の前傾位と同義)なので、常にハムストリングスには張力が加えられています。

四足歩行動物の場合は前鋸筋(腹鋸筋)は肩甲骨から胸郭に張り付いて身体を支えるかなり強靭な筋になります。
ゴロフキン選手が動物的と言うのは楕円形の上半身を作っているであろうこの前鋸筋の強さも表現しています。

骨格を見ても動物がしなやかで力強いことは納得できます。

骨格を変えろ

既述のように骨格的な構造により体重を支え、体幹部の大きな筋や深層筋、身体背部の筋を運動に動員するのが得意なネグロイドと比較するとモンゴロイドは体幹部を運動に動員するのが苦手で手先や足先の小手先の運動になる傾向があります。
よって末端のふくらはぎや足首、前腕の筋を運動に動員する傾向にあるため末端が太くなる傾向にあります。
見た目としては手足が太く体幹や背中が平ぺったく凹凸が少ない体型をしています。

身体の末端の質量が増加するとそれを動かすのに大きな力が必要とされ、脚振りや腕振りが遅くなります(重りを巻いて走るようなもの)。
これが一つ日本人などのアジア人が運動に不向きであるとされる理由です。
また、これは僕の考えと感覚的な話になってしまいますが骨格の構造で身体を支え切れないので無駄な筋力が必要となり、『力み癖』があるためさらに運動が苦手であると考えています。

モンゴロイドで運動が得意な人は手足が細く体幹が強いネグロイドの特徴を高確率で持っています。
特に身体が大きくなればなるほど、それが顕著です。
日本人ボクサーだと村田諒太選手や内山高志さんが楕円形でメリハリのある身体をしています。

まとめ

ゴロフキン選手は運動に不利な猫背に見えますが、実はその逆で明らかに運動向きの骨格をしています。
逆に言えばゴロフキン選手の骨格に近づけるためトレーニングの開発が一つの解ではないでしょうか。

そして腸腰筋やハムストリングス、前鋸筋のトレーニングでゴロフキン選手の骨格に近づけるだけでなく、鍛えた筋を使う『(コツ)感覚』も掴まなければなりません。
具体的にはハムストリングスのSSCと脱力の感覚です。
「ハムストリングスを使え!とか脱力しろ!」で脱力できれば苦労しません。

僕はこの感覚を掴むのにとても苦労しています。
でもずっとこれに取り組んできて、今年くらいからこの感覚を少しづつ掴み始めました。
脱力とそれに伴う股関節のバウンドです。
感覚を研ぎ澄ませて、感覚を掴みやすいトレーニングを実践すればできます。

具体的には感覚を覚えるトレーニングを一部紹介すると体重の6割くらいのハイクリーンやスナッチが効果的です。
他にも股関節バウンドを意識した走りと縄跳び、デブスジャンプなども感覚を掴みやすいと思います。

https://youtu.be/Y28c3J0imCo
ある日のトレーニングをまとめました
https://riku-nagahama.xyz/2020/06/19/%e7%ab%b6%e6%8a%80%e5%8a%9b%e5%90%91%e4%b8%8a%e3%80%80%e3%82%af%e3%82%a4%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%95%e3%83%88%e7%b3%bb%e3%83%88%e3%83%ac%e3%83%bc%e3%83%8b%e3%83%b3%e3%82%b0/

マイケル・ジョーダンの跳躍から学ぶ身体操作

僕はボクシングに限らず色んなスポーツをすることと見ることが好きです。
時々ボクシングに生かせる発見があります。

僕の父親はバスケットボールの国体出場選手だったので、よくバスケットボールの話をしていました。
スポーツの駆け引きについても教えてもらった覚えがあります。
バスケットボールの選手はみんなそうかもしれませんが、マイケル・ジョーダンのビデオが家にありました。
何度か見せてもらったことがあって、その時思ったのは「マイケル・ジョーダンってふにゃふにゃしてんなー」です。
特に相手を抜き去るとかダンクシュートを決める時です。
舌は出しっぱなしだし、跳びながら空中を走るかのようにふわふわ動いていました。

達人マイケル・ジョーダン

疾走する時に舌を出すのって危険ですよね。
噛むと千切れます。

ジョーダンはきっと顎の力すら抜けていたんだと思います。

舌を出すと力が抜けるという科学的根拠もあるみたいです。

その時は見た目の印象をそのまま感じていただけでしたが、今ではその理由が何となく分かります。
ジョーダンは別に意識して舌を出していたわけではないそうで、自然と出てしまうと発言しています。
今回はジョーダン跳躍から学びたいと思います。

映像を見返して思うのはマイケル・ジョーダンは爆発的な瞬発力だけではなく、ネコ科の動物のようなしなやかさを持っているってことです。
ジョーダンはシュートを遮ろうとした相手のディフェンスの腕を空中で躱します。

しかも一度ならず2度も3度も相手のディフェンスの腕を躱します。
シュートを放つ複雑な動きをしながら、相手のポジションや動きなど視界から入力される情報を処理しているってことです。
推測の域を出ませんが、脚がふわふわ動いていることからジャンプした後のジョーダンは脱力し慣性によってゴールまで身体が運ばれるのを待つだけなんだと思います。
身体も脳もリラックスしているので脳の資源には相手のディフェンスに対応できるだけの余裕があるはずです。

これができるのも無駄な反射による情報処理を削減してくれる脱力のお陰だと考えます。

ジョーダンの跳躍

跳躍について見てみます。

普通高く飛ぼうとすると大きく屈んで足に力を溜めますよね。
バスケットボールは相手との駆け引きを行う対人競技なので行動の迅速さが求められます。
ジョーダンの身体捌きは一瞬です。
一瞬で相手を抜き去りダンクシュートを決めます。

時間をかけて丁寧にやればジョーダンくらい跳べるアスリートは普通にいると思いますが、ジョーダンが凄いのは走りながら、ディフェンスを躱しながら、ボールを持ちながら、短時間であの跳躍ができることです。

走りながらの小さな屈曲だが、強力な股関節伸展を起こす

画像にしてみて驚きましたが、ジョーダン跳躍は本当にはんぱじゃないですね。
時間にして0.1~0.5秒くらいの股関節屈曲だと思います。
しかし、そのわずかな時間にこれだけの跳躍を生み出す股関節伸展の力を溜めているんです。
この跳躍を実現している股関節と膝関節をよく見てください。
僕が一番驚いたのはここで、1m近く(それ以上かも)跳躍しているのに膝関節は殆ど曲がっていないことです。
このことから分かることは、ジョーダンの跳躍は股関節による屈曲と伸展動作が主であり、膝関節の役割は力向きとスティフネス(脚の硬さ)の調節であろうということです。
何故股関節伸展だけでこれほどの跳躍ができるのか、その理由を脱力をベースに少し考えてみます。

https://riku-nagahama.xyz/2020/06/13/%e3%83%91%e3%83%95%e3%82%a9%e3%83%bc%e3%83%9e%e3%83%b3%e3%82%b9%e3%82%92%e7%99%ba%e6%8f%ae%e3%81%95%e3%81%9b%e3%82%8b%e6%88%a6%e7%95%a5%e3%82%92%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b%e3%80%80%e3%82%b9%e3%83%86/

大腿四頭筋による膝関節伸展

跳躍を行うのは股関節と膝関節の伸展です。

大腿四頭筋というのは体の前面にある筋で骨盤と股関節、膝関節をまたいで脛骨(すね)に付着しています。
大腿四頭筋が収縮すると骨盤側に脛骨が引き寄せられ、膝関節が伸展します。

この時地面から返ってくる力の向きはやや後ろと上向きになります。

ハムストリングスによる股関節伸展

もう一つ、そして最重要なのがハムストリングスによる股関節伸展です。

ハムストリングスは骨盤と脛骨と腓骨(どっちもすね)の裏に付着し、これが収縮すると脛骨が骨盤へ引き寄せられることにより、股関節後ろ向きに伸展します。
※ハムストリングスが収縮するとエビぞりみたいな感じになる。

この時地面から返ってくる力の向きは前と上向きです。

同じように跳躍を行う方法にも大まかに2通りの体の使い方があり、大腿四頭筋とハムストリングスの筋力の配合方法は無限です。
ハムストリングス主動でもいいし大腿四頭筋主動でもいい。
しかしながら、研究や実験により走行や跳躍などの競技で結果を出している選手はハムストリングスの活動が大きいと報告されてます。
一つの要因としてハムストリングスの地面へ加える力の向きが挙げられます。
股関節の伸展は上と前方向に身体を推進してくれますが、膝関節の伸展だと上と後ろ方向になり進みたい方向と逆向きの力(ブレーキ)をかけてしまいます。

大腿四頭筋の脱力とハムストリングスによる股関節伸展

ジョーダンはハムストリングスによる股関節伸展がメインです。
ほとんど膝関節は屈曲させていないことからも明らかです。

大腿四頭筋とハムストリングスは対の関係になっています。
ハムストリングスを強く収縮させて股関節を伸展させようとする時に、力みがあると大腿四頭筋は股関節を屈曲させようとするので、ハムストリングスによる伸展を阻害してしまいます。
ハムストリングスの力を効率よく股関節の伸展に使えません。

既述のように人体の構造的にも走りや跳躍、またボクシングにおけるパンチの特性からもハムストリングスを主動にして、大腿四頭筋はあくまでも補助的な役割として利用する方が効率的です。

次にジョーダンの背骨を見てみます。

脊椎の脱力

以下の記事でも脱力によって重心が移動し、それが地面へ加える力の総量を大きくし跳びあがる時の推進力になっていると説明しました。

https://riku-nagahama.xyz/2020/08/26/%e3%83%8d%e3%82%b3%e7%a7%91%e3%81%ae%e8%84%b1%e5%8a%9b%e3%81%ab%e5%88%ae%e7%9b%ae%e3%81%9b%e3%82%88/

上の記事で猫の脊椎のしなりの話をしました。ジョーダンの背骨もしなります。

地面を蹴って反力を受ける瞬間です。
この瞬間は下半身の筋に力を入れて下半身は硬いバネになっているはずです。

この次の場面では脊椎がぐにゃりと曲がってみぞおちが突き出しています。

何が起きているかと言うと、下半身の重みが上へ動いているんです。

きっとジョーダンの体は下半身の勢い押されて少し高さを稼いでいるはずです。

もし跳びあがる瞬間も身体が固いままだと、重心の落下が起こらず地面へ加えられる力が小さくなります。

重いハンマーを振り回すとそれにつられて身体が引っ張られますよね。

あれと同じように下半身が上下へ移動するとその分だけ重力を利用できて身体を推進してくれます。

意識により筋をコントロール

とは言ってもハムストリングス主動の跳躍や走行をしろなんて言われても困りますよね。
どの筋を使っているかなんて普通は意識しません。
大腿四頭筋をとかハムストリングスを使い分けるという意識はとても難しいんです。

でも僕はコツを掴みました。
ポイントは姿勢です。

どうやってこれを優位にするか、どうやって鍛えるかはまたの機会に解説します。
鍛えることは比較的簡単ですが、使うのが難しい筋です。
ハムストリングスのSSCが使えること、その感覚を覚えることが各種のスポーツにおける一段階上のレベルへの入口だと僕は考えています。

ハムストリングス主動と思われるボクサー

沢山いると思いますが、パッと思いついた選手を挙げます。

ゲンナディ・ゴロフキン

今度解説しようと思います。
ゴロフキン選手の脚がスーパーボールのように跳ねる理由でもあります。

ガーボンタ・デービス

攻める時も守る時も腰がぐるぐる回ります。
これはハムストリングスによる左右の股関節伸展が行われているからだと思います。
デービス選手のバランスがいいのも、動作のベースが上半身の前後移動ではなく骨盤の回転運動がメインなのでパンチで上半身が流れにくいんじゃないかと考えています。

まとめ

脱力はパフォーマンスの底上げをする超高度な技術でコツを覚えるのが難しいです。
でもトップアスリートはみんなこれが上手いんです。

ハムストリングス主動の股関節の伸展を覚えると競技力が圧倒的に上がります。

悪い時も、良い時も永遠には続かない

僕は最近心理的な面と肉体的な面の両面において過去一番調子を落としています。
今回は災難や不調の捉え方を共有させてもらいます。

確率の不思議な偏り

YouTubeも本当はできるだけ更新したいんですが、まずは調子を戻すことに集中しようと決意して、休み休み投稿しようと思っています。
チャンネルを登録していただいた方には本当に申し訳なく思います。

そう考えていた矢先に練習中に拳を痛めてしまいました。
嫌なことは重なります。

最近の練習は100%どころか60%ですら満足に出せていないと思います。
でも僕はそんな状態でも前向きです。
それはある法則を知っているからです。

今回は僕の人生における幸運や不運の捉え方を共有しようと思います。
捉え方を変えるだけで、メンタルを鍛えることができます。
「なんで嫌なことばかり続くんだろう…」と悩んでいる方や「今、幸せの絶頂にいる!」という方、不運の時期でもモチベーションを維持したい、今の幸せから転落したくない方の参考になればと思います。

先に結論から言うと出来事には偏りがあります。
どんなに悪い時期でもどんなに良い時期でも永遠には続きません。
これからお話する事実を知って、僕は悪い時期や良い時期はそれが「反転」した時に備えるための期間だと考えられるようになりました。

今回紹介する「逆正弦法則」とか「大数の法則」を知っておくだけで悪い時でもメンタルがかなり落ち着きますし、いい時期でも浮かれることなく堅実な計画が立てられます。

逆正弦法則と大数の法則

聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実はこの宇宙では現象が起こる確率には偏りがあります。
統計学や経済学、力学など色んな分野で確認されています。
「逆正弦法則」や「パレートの法則(8:2の法則)」、「正規分布」など確率の分布には奇妙なことに形があるんです。
多分僕の言っている意味が分からないと思うので簡単な例を上げます。

逆正弦法則を簡単に説明する為に用いられる例えとしてよくギャンブルが挙げられます。
勝ち続ける時は勝ち続け、負け続ける時は負け続けるとする法則です。
ギャンブラーはこの法則に経験的に気がついていて、その世界では「リードの法則」と名付けられているみたいです。

驚くべきはこれがギャンブルの世界だけに伝わる根拠のない俗説だとか「たまたま」ではなく、事実であることです。

そしてなんと「リードの法則(逆正弦法則)」を紐解いていくと、分子などの運動を扱う「ブラウン運動」にたどり着くんです。
「は!?なんでギャンブルが熱力学に繋がんの?」って思いますよね。
僕も思いました。
ただこの辺は深掘りしてしまうと夜が更けてしまうので話を先に進めます。

サイコロを投げた時も同じ目が連続して出続けることってありますよね。
でも何度も何度も投げ続けていると、結局はある目が出る確率は1/6に収束します。
コイントスも同じです。
表が出続ける時もあれば、裏が出続ける時もあります。
だけど何度も投げ続けると1/2に収束していきます。
経験的にご存知だと思いますが、表と裏の出る確率が1/2だからと言って裏と表が交互に出るわけではないんです。
どちらかに偏ります。
サイコロも同様ですよね。

「2回連続で裏だったから1/2にするためには次は表だな」みたいな感じでコインが過去の表と裏のデータを覚えているわけはないですよね。
でも、結果は誰かがまるで覚えて確率を操作しているかのように収束するんです。

これは義務教育で習った「大数の法則」ってやつです。
詳しくはリンクを見てください。

コイントスに限らず、出来事には偏りがあります。
確率通りには出ないんです。
サイコロでずっと同じ目が出たかと思えばその目が全く出てこなくなったり、スポーツだとバスケットボールで急にリバウンドが一方に流れるようになる、とかです。
流れとか勢いとか言われたりします。

人生においてもこの感覚が僕にはあります。
嫌なことって何故か続くような気がするし、いい時は本当に勢いがあります。
でもこの確率には何故か不思議な偏りがあるって考えると納得できます。

人生においても良いことも悪いことも続きません。
いつかその流れが逆転する時が来ます。

悲観に暮れていてはチャンスは見えない

悪いことが続いている時期に悲観に暮れていては、流れが変わった瞬間に気がつくのが遅れてしまいます。
最悪の場合、流れが変わっているのを見過ごしてしまうかもしれません。
そしてそのまま不運のサイクルに再突入です。
不幸な人生だったと悲観したまま死を迎えます。

もし、不運な時期でも目を凝らしていれば身の回りの些細な変化に気がつくことができるはずです。
偶然転がり込んでくるチャンスを逃がさずつかみ取ることができれば、それまでの流れが一気に逆転するはずです。

僕は不運が重なる時期や成長が滞ってしまった時期でもそんな風に考えるようにしています。
宇宙の現象には不思議な法則があり、短期的には確率通りには物事が起こらないことを知っていれば「絶対に逆転のチャンスはやってくる」と確信できるので気持ちが楽になります。

株価も好不況を繰り返して成長していきます。
人間の成長も同じです。
幸運と不運を繰り返しながら成長していくんです。

来たる不運の時期に備える

調子が良い時期ほど、自分を戒めて来たる不運に備えられるようにもなります。
絶頂がずっと続くと思っていると、いざ転げ落ちた時に落胆して総崩れになってしまいます。
心理的な落差で何もかも嫌になって、一生懸命取り組んでいた物事を投げ出してしまうことにもなりかねません。

幸運がずっと続くことはありません。
いい時ほど来たるべき苦難の時に徹底的に備えて力を蓄える時です。
これを怠っていると流れが変わった時に立ち直れないほど深手を負ってしまいます。

OPBFウェルター級タイトルマッチ

タイトルマッチでもこの心構えが生きました。
それまでは完璧に試合を進めていましたが、5ラウンドと10回ラウンドにピンチがありました。
5ラウンドのピンチの時はそれまでのラウンドをフルマークで、このままなら勝てると直感したラウンドでもあります。
でも僕は頭の中で常にピンチがあると想定してました。
このまま平坦に終わるわけがない、どこかで谷がくると。
そしてその予想通りピンチが訪れました。

でも僕は慌てることは一切ありませんでした。
半ばこうなることは確信していたからです。
だからこそ、ピンチの時もこう考えていました。
「この後にチャンスが必ず訪れる」と。

実際にその次のラウンドで左ボディーを決めてクドゥラ選手を失速させることに成功し、ペースを完全に奪い返しました。

その後も似たようなサイクルで10ラウンドにピンチが訪れましたが、心構えをしていたこともあり耐えることができました。

もしもピンチに備える心構えがなければ、そのまま慌てて失敗を重ねて負けてしまっていたかもしれません。

まとめ

出来事には不思議な偏りがあります。
悪いことも良いことも続きません。

このことを知っているだけで心の用意ができます。
良い時期が必ず終わることを知っていれば落胆して物事を投げ出してしまうことを避けられます。
悪い時期でもそれが永遠に続かないこと、それが必ず好転することを知っていればそれに耐えることができます。

– 兵は詭道なり - ボクシングは騙し合い

最近ジムの若い選手から「YouTube見てます」って声をかけられることが増えました。
僕は練習中に私語をする甘さは試合に必ず出ると考えているので、練習中はほとんどしゃべりません。
なので話したことのない選手からすると怖いし不気味だと思います。
以下のTwitterの鎮宇(ジヌ)は人懐っこくてよく話かけてくれます。

https://riku-nagahama.xyz/2020/06/16/%e7%b7%b4%e7%bf%92%e3%81%ae%e7%94%98%e3%81%95%e3%81%af%e8%a9%a6%e5%90%88%e3%81%ab%e5%87%ba%e3%82%8b/

集中している時は気を使ってか、僕が気がついていないだけか話かけてきません。

僕は表情に乏しいし、基本的に怒ったり笑ったり感情を表に出すことがないので良く誤解されれることがあります。

でも、これは感情を試合中に表に出さないための訓練でもあるんです。

今回は、というかこのブログではいつもそうですね。
兵は詭道なり』についてお話します。

嘘つきが勝つ

ボクシングは騙し合いです。
相手の持っているカードがお互いに見えないゲームだからです。
これは本当に重要なことで、手の内を見せない見えないというのはつまりハッタリが有効なんです。

基本的に正直者である僕がこのことに気がつくまでに本当には時間がかかりました。
正直者が損をする社会は最低ですが、残念ながら正直者はボクシングでは勝てません。
如何に相手を出し抜いて自分の思惑を進めていくか。
これが勝利のカギです。

相手がこちらの思惑に気がついていても抗えない、またはこちらの土俵へ引きずり込まれたことにすら気がついていない。
こんな状況を作り出すことが重要なんです。

例えば打ち合いた時に打ち合いたいという強気な雰囲気が出ていたら相手は打ち合いません。
そんな自信満々な奴と打ち合うなんて嫌です。

打ち合いたくないフリをする。
相手は大喜びで打ち合いにきます。

逆に打ち合うフリをしながらアウトボクシングする。
逃げ腰で弱々しいアウトボクサーを追いかけるなんて苦になりません。

相手を欺いて真の目的を達成する

この考え方が勝負の鉄則です。

裏の裏は表

「おい長濱、お前手の内明かしているぞ?」と思ったかもしれません。
よく聞かれます。
「そんなに手の内を明かしていいのか?」と。

既述の通りボクシングは相手の手札が見えないゲームです。
例えば。
僕の狙いが裏の裏、つまり表である可能性を相手は捨てきれません。

そして、僕の最終的な狙いは相手のパニックです。
慌てて外出するとカギを閉め忘れたり、電気がつけっぱなしだったり。
普通なら絶対にしないミスを犯すんです。

僕は騙し合いのスキルを磨いています。
相手を騙すための方法を常に考えて、そしてその為の勉強を欠かしません。

どうやって相手の『無意識』を欺くかを考えています。

分かっていても止められない。
藻掻けば藻掻くほど、状況が悪くなる蟻地獄』です。

こんなスキルセットを僕を目指しています。

まとめ

『兵は詭道なり』
勝負の鉄則は相手を欺くこと。

混乱の蟻地獄へ相手を引きずり込む戦略(計画)を構築する。

【最大筋力】スポーツのパフォーマンスと姿勢【至適筋節長】

今回の記事は極簡単に姿勢とパフォーマンスについてお話します。
少しまとまりがない記事ですが、『姿勢を意識しよう』という内容になっています。

関節の角度と最大筋力

左図のように、筋は関節の角度によってその発揮される筋力が変わります。
姿勢とは全身の関節の角度が合成されたものです。
そして、各関節の力を合算したものが人間が発揮できる限界の力です。

それぞれの関節の発揮する筋力の違いは合計されると大きな違いになります。
最高の姿勢と最低の姿勢ではパフォーマンス、キャリアにおける結果に大きな違いをもたらすはずです。

至適筋節長と筋力

関節は筋肉が伸び縮みすることで回転しています。
そして、筋肉は一本一本の細い繊維で構成されています。
その筋繊維をさらにさらに細かくすると筋節と呼ばれる最小の組織によって構成されています。

この筋節の長さが関節の角度による筋力の違いをもたらします。

至適筋節長

筋節はサルコメアとも呼ばれる筋繊維の収縮を行う最小単位です。
至適筋節長とは筋力が最も発揮される筋の長さのことです。
関節が最も力を発揮する角度と言うこともできます。

筋節の長さによる収縮力の違いはその構造に由来しています。

筋繊維の短縮はミオシンがアクチンにくっついて引き寄せることによって起こります。
互い違いに並んでいるミオシンとアクチンの重なりが大きいと強い力で引き寄せることができます。

フィラメント滑走説

基本的には重なり合いが大きい(関節を曲げると)と強い力を発揮できますが、一方で筋が収縮しすぎて(関節が曲がりすぎると)アクチン同士が重なり合ってしまうと、反作用によって力が打ち消し合ってしまうので強い力は発揮できません。

グラフを見ても筋力のピーク短い。
曲げ過ぎず、伸ばし過ぎず、丁度いい筋力発揮の角度があるんです。

ミクロで見るとこんな理由があり、マクロである関節の角度による筋力の差を生み出しています。

伸ばしきった状態や曲げきった状態で強い力を発揮できると関節を破壊してしまうこともあるので、至適筋節長は丁度いい長さ以外での筋力発揮を抑えて関節を守るための合理的な仕組みです。

腱の付着位置

腱の付着位置も関節を回す力に関係しています。

同一人物が同一の骨を持ち上げようとした場合、上の図の方が簡単に骨を持ち上げられそうなのが分かると思います。

この図は極端過ぎますが、腱の付着した位置は個人差があり、その位置によって発揮される筋力が異なります。

以上の簡単に解説しましがたが、筋の収縮の強さには筋繊維の構造と筋腱付着部の影響を受けます。
至適筋節長が一体どれくらいかと言うと、個人よって微妙に違ってくるはずです。

関節には最大の力を発揮するための理想的な角度があり、それぞれの関節筋力の合算として大きな力が出るわけなんです。

脊椎(背骨)の地面との角度

地面からの反力を受けて末端へ伝える体幹の役割も見過ごせません。
力の伝え方の記事でお話していますが、拳の衝撃を無駄なく伝えるには手首の角度が重要です。
それと同じように地面反力を上手く拳へ伝えるには脊椎の角度が重要になります。
基本的にスポーツの力の源は地面反力です。

もし背骨が猫背に湾曲してしまうと地面からの力が分散してしまいます。
よくあるボクサーのイメージの猫背な姿勢だと力が上手く伝えられないんです。
※何故そのイメージがあるかは謎

猫背だと地面反力を脊椎で吸収、分散してしまって力を上手く伝えられません。

関節を回転させる筋力だけでなく、それを支える筋力も重要です。

関節を回転させる大きな筋が強くてもそれを支える小さな筋肉が弱いと姿勢が制御できず力の伝達を損ないます。

先ほどの話から続いて、スポーツには理想的な姿勢があるはずなんです。それは個人差が当然あると思います。筋力も骨格も違うからです。

感覚を研ぎ澄ます

至適筋節長とか力を伝える姿勢ってのは練習で磨かなければいけません。
精密検査や解剖でもしない限り、感覚的にしかそれは分からないからです。

パンチを打って強い衝撃が身体へ伝わるとそれに伴ってドーパミンが分泌されます。
脳はその時の身体連動のリズムや全身の筋力の状態を覚えます。

練習中に感覚を研ぎ澄ませていないと、これらの感覚は見過ごされます。

一流のアスリートは最高の姿勢をどんなバランスでも維持できる優れた感覚を持っているはずです。

まとめ

至適筋節長、脊椎の角度は理想がある。
人それぞれ違うそれを覚えるには感覚を研ぎ澄ませて、自分の内面に意識を向けなければならない。

パンチを芯で受けない ディフェンスの原則

今回はディフェンスについてです。
『あの選手はパンチを芯で受けない』ってよく言いいますけど、それがどうして効果的なのかってことはあまり言及されません。

あまりジムでは教えないけど大切なことについて、フロイド・メイウェザー選手やカネロ・アルバレス選手のディフェンスついても少しだけ触れます。

今回は基本中の基本でもしかしたら当たり前のことかもしれません。

重心

その前に必要な知識を先に解説しておきます。
『重心』という言葉はボクシングでよく使いますが、それが何なのかについてはとても漠然としていいます。

今回は厳密な定義の説明ではないので、簡単なイメージが分かればOKです。

重心に釘を打ち付けて紐を取り付けたシーソーです。
何となくイメージできると思いますが、この場合力は釣り合います。

シーソーは回転せず二人は無事です。

この場合はどうなるかと言うと、シーソーが反時計回りに回転して二人は振り落とされてしまいます。

バットの重心でボールを捉えた場合と重心から離れた位置でボールを捉えた場合はどうなるでしょうか。

重心で捉えた場合バットはボールの衝撃をまともに受けて打者は手ごたえを感じ、ボールは彼方へ飛んでいきます。

重心を外した場合はバットは重心を軸に回転し、ボールはそのままどこかへ行ってしまいます。
重心の一点に受けた時だけはバットが回転せず、まともに衝撃を受けます。
芯でパンチを食った状態です。

そして頭部に打撃を受けた時も同じようなことが言えます。

この場合衝撃をまともに受けることになってしまいます。
とても危険です。

顎ならどうか。
もし、顎側に打撃が当たってしまうと、重心を支点にして頭蓋骨が回転してしまいます。
『てこの原理』によって脳が頭蓋骨の内壁に叩きつけられます。
これが顎にパンチをもらってはいけない力学的な理由です。

こんな風に僅か1、2cmだけ軸を外すことができれば、頸椎が横に回転してして衝撃を逃がすことができます。

つまり顔面を相手に正対させ、相手から『顔面』の軸が見えているととても危険なんです。
パンチは見てから避けるのは不可能だからです。
始めからパンチに備えて『顔面の軸』を相手に見えないように隠すことが大切になります。

カネロ・アルバレス

アルバレス選手を例に見てみます。

パンチを空振りした場面。
ゴロフキン選手がカウンターの用意をしています。

ゴロフキン選手のフックが来る前に顔面を左へ向けて顔面の軸を隠します。

この場面のパンチに対して顔面の軸が隠れています。

これこそアルバレス選手がゴロフキン選手のパンチに耐えられる理由でもあります。

派手にのけぞっているので見栄えは悪いですが、上手く衝撃を頸椎などの関節で吸収しているとも言えます。

この場面も顔面を正対させず、顔面の軸を隠してジャブを側頭部で受けています。

強いジャブの衝撃を脊椎や股関節、膝関節で衝撃を吸収しています。

アルバレス選手は相手と正対しません。
この場面も顔面を斜めにして相手から顔面の軸を隠し、狙いにくくしています。

ボディーブローの時も顔面の軸は相手から見えないように隠しています。

フロイド・メイウェザー

マルケス選手のジャブに対して顔面はコーナーポスト側を向き、顔面の軸を隠しています。

メイウェザー選手も基本的に相手に顔面を正対させず、顔面の軸を隠します。

メイウェザー選手もアルバレス選手もパンチに対して軸を隠して常に相手のパンチ備えているから、仮に対応が遅れても衝撃を殺すことができます。

僕の観察から得られた統計ではジムの若い選手達を見ていても相手に対して顔面が正対している危険な選手が多いです。

パンチを避ける時に相手に対して顔面の軸が晒されていると危険。

アルバレス選手のように相手に対して顔面を斜めに傾けて備えるようにすべきです。

なので相手を見る時の目線は常にやや斜めになります。

まとめ

重心にパンチを受けると衝撃を吸収できない。
顎に受けるとてこが働いて脳が頭蓋骨に叩きつけられてしまう。

相手と正対して顔面の軸を見せてはいけない。

強打の技術 『ブレーキ効果』

僕が『ブレーキ効果』と勝手に読んでいる現象があるんです。

名前を付けると物事を考える上で効率がいいんですよね。

ただ、僕がそう呼んでいるだけなので、今回の話はもしかしたらスポーツでは常識で他の呼び方があるかもしれません。

今回はボクシングにおいて、パンチ力の面からどうして体を流さないことが重要であるかをお話しようと思います。

https://youtu.be/JT1Ww4CZuiI

ブレーキ効果

まずは理解を早める為に以下の図を見てください。

この図の四角い板の重心に釘を刺して軸とします。
この場合、下端から左向きに押しても上端から右向きに押しても回転する方向は緑の矢印のように時計周りに回転します。

もしも同時に上下の両端からそれぞれ逆向きに力を加えたら、一方から力を加えるより速く回転するのが何となく分かると思います。

ブレーキ = 逆の加速度

別の例です。

1.軸に左向きに力を加えて動かします。

2.板全体が速度を持って動き出しますよね。

3.動き出した板の上の端を掴んで急にブレーキをかけます。

4.すると板が軸を支点に回転しますね。

つまり、慣性によって運動する物体の端を急停止させてブレーキをかけると反対の端に力を加えた時と同じように回転するんです。
『ブレーキ効果』による加速です。

※画像を追加しました。
こっちの方が分かりやすいかも。

振り子の糸と球の間に釘を置きます。
振り子を離して落下させると、糸が釘に引っかかりブレーキがかかって勢いよく球が回転すします。

僕が言いたいのはこれです。

車も急ブレーキすると左図のように後方が浮き上がって、前輪を軸に回転しますよね。

慣性によって運動する物体の端に運動方向と逆向きの力を加えると軸を中心に回転するんです。

ボクシングのパンチ

ボクシングのパンチも体幹を軸にして腕を回転させますよね。

雑な図で申し訳ないんですが以下の図を見てください。
上から見たパンチの動作です。

大きな円が体幹です。
体幹を回転させると肩関節が一緒に回転します。
つまり肩関節が反時計回りの角速度(回転運動の速さ)を得ます。

ある程度、肩関節が回転し、反時計回りの角速度を持たせてから体幹を急停止(ブレーキ)させます。
すると今度はさっきの体幹の回転(反時計回り)とは逆向き(時計回り)の力が肩に加えられます。

既述の『ブレーキ効果』によって腕の両端(肩と拳)にそれぞれ逆向き向きの力が加わるので、末端(拳)が回転して高速で左方向へ振り出されます。
※厳密に拳にかかるのは慣性力なので力は加わっていません。
便宜上こう説明しています

これが僕が『ブレーキ効果』と呼ぶものです。
分かりにくかったら申し訳ありません。

つまり、体幹が回転して角速度がトップスピードへ到達した瞬間に体幹の回転を急停止させると慣性によって高速で腕が前方へ振り出されるんです。

最初に述べたように、パンチを打ちだした後に体を流さないことの重要性、つまり体幹を制止することの重要性が何となく理解していただけたと思います。

これは『運動連鎖』というしなりを生み出す動作へ繋がっていきます
それはまた別の機会にお話します。

まとめ

体幹の力を腕へ伝えたら体幹を急停止させることで拳が加速される。
身体を流さないのはディフェンスとオフェンスの両面において理にかなっている。

【尊大】100kgのデブが新人王になるまで【傲慢】

体重100kgあった俺が新人王になるまでの話を聞いてくれ。

この時は60kgくらいだ。
2か月ほどで100kgに到達してしまった。
小学生の頃は太っていた。
昔から体重が減ったり増えたりで安定しなかったんだ。

6年前、当時体重が100kgありました。
僕はその時幸いにも結婚することができたんです。
ただちょっと妻の目が気になるというか。
優しい妻は『痩せろ』とは言わないんですよ。
だけど、なんか人に会わせるのを躊躇っているのを感じていたんですよね。

高校生の時1年半ほどボクシングを経験していた僕は一念発起して近所の白井・具志堅スポーツジムに入門しました。
ダイエット目的でボクシング始めたので週に1回のペースで通っていました。
ある日サンドバッグを打っていたら具志堅ジムの元会長である具志堅用高氏に「プロでやりなよ」と説得されたんですよね。
多分本気で言ったとは思えないんですが、当時なんの根拠もなく「世界一才能がある」と信じていた僕は本当に軽い気持ちでプロテストを受けました。

そして合格するとすぐにデビュー戦です。

ろくに練習なんかしてないのに何故か勝てると信じていたんですが、試合が近づくにつれてだんだん怖くなってきました。
「うわぁ、なんて馬鹿なことしてんだ」と何度も自分を責めました。

新人王戦

デビュー戦

大間選手。背丈は変わりませんでしたが、確か3勝2KOの選手だったと思います。

試合当日グローブをはめた瞬間。
人殴っちゃダメな大きさだ大怪我しちゃう。」
と。

試合は恐怖を振り払うかのようにとにかくフックを振り回しました。
インターバル中は『当たりますように』と願いを込めたのを覚えています。

確か2ラウンドか3ラウンドにボディーブローがヒット。
大間選手の動きが落ちました。

いける!やっぱり俺、天才じゃん!

とにかく慌てて攻めましたが、練習不足もあって4回で失速。
自分の浅はかさを恨みましたが、幸い大間選手も効いていたのか攻めてきませんでした。

判定の結果は引き分け。
新人王の特別ルールが適用されて勝者扱いで次へ進むことができました。

2戦目

2戦目は渡邊選手。
4勝2KO1分のアマチュアは国体か何かで3位とかでしたね。
ジムではトレーナーが『アマチュア3位かあ』と言っていたんです。
僕は1戦1分という戦績にも関わらず何故か傲慢になっていて『なめやがって俺の力を見せてやる』と決心していました。
渡邊選手は独特なスタイルでフィリーシェルスタイルみたいな感じでしたね。

試合は決意通り序盤から全力疾走。
2ラウンドまでに2度ダウンを奪う展開でしたが、またも練習不足もあって3ラウンドでまたもガス欠。

息切れで倒れそうになり、またも自分の浅はかさを恨みました。
最後はロープにもたれてレフリーを確認、止められそうになったら暴れる、レフリーが離れたらまた休むの繰り返し。
自滅寸前だったんですが、ダウンもあったのでなんとか判定で勝つことができました。

ガス欠のトラウマは大きくて、1年くらい引きずりました。

東日本決勝

次がアルティン・ペパ選手。
この日の試合のパンフレットか何かに選手のプロフィールが乗っていたんですよ。
好きな選手とかスタイルとかが記載されていて、「ボクシングを始めた理由」って項目があったんです。

長濱陸
ボクシングを始めた理由:ダイエット

アルティン・ぺパ
ボクシングを始めた理由:母国アルバニアは治安が悪く、身を守りたかった。

あぁ…モチベーションがおかしい。やばい奴だ

こう思いました。

片や命を守るためにボクシングを始めた。
片や痩せるためにダイエットで始めた。

あまりに差がありすぎます。
恐怖通り越して笑いました。

ぺパ選手もフィリーシェルスタイルでしたが変則的な渡邊選手より標準的でした。
渡邊選手のスタイルを経験したのと疲労困憊したトラウマを活かして上手く戦えたと思います。
少しでも息が上がると、渡邊戦がフラッシュバックするので。

ジャブが強かったのを覚えています。

全日本決勝

決勝はロックハート・ブランドン・シェーン選手が相手でした。
僕の戦績が2勝1分だったのに対してロックハート選手は6勝5KO3敗で僕の3倍のキャリアがあったんですよ。

いや、新人じゃねぇじゃん。卑怯じゃん

ずっと思ってました。
で、youtubeの試合見るとムキムキで動きもキレキレなんですよ。

絶対に、絶対にパンチはもらいたくないので「塩漬けにしてやるわ」と決意しました。

危険な距離を避けてひたすらボディーを狙い。
後半はボディーでロックハート選手が失速。
計画通り判定勝ちできました。

この試合では一発しかもらいませんでしたが、そのパンチがかなり強かったのを覚えています。
試合が終わった後で眩暈に襲われました。

その後

新人王の頃は一人で練習していたんですが、その後は野木さんと一緒に比嘉大吾と木村吉光と共に練習するようになりました。
ジムはばらばらになってしまいましたが、なんだかんだ未だにみんなで一緒に練習するので5年以上の付き合いになっています。

野木トレの走り込みでスタミナをつけて、自信をつけていったんですがこれがまた別の失敗の始まりでした。
新人王の頃はスタミナと経験不足の不安からかなり頭を使って戦っていたんです。
だけど、スタミナがついて疲れなくなると頭を使わなくなってしまったんですよね。
本当に大失敗でした。

練習でもゴリゴリスタミナで押せました。
でも今になってみると大失敗の始まりだったんだと思います。

この辺の話はまた別の機会にお話します。
あ、そういえば中谷選手も新人王の同期です。

https://riku-nagahama.xyz/2020/06/02/%e4%b8%ad%e8%b0%b7%e6%bd%a4%e4%ba%ba-vs-%e3%82%b8%e3%83%bc%e3%83%a1%e3%83%ab%e3%83%bb%e3%83%9e%e3%82%b0%e3%83%a9%e3%83%a2/

自分の弱さを認める そこからが勝負の始まり

勝負強いとは本番で練習の力が出せること。
言うは易く行うは難し
こんなに難しいことはありません。

僕は悩みました。練習ならできるのに試合でできない。
悩み抜いて少しづつ勝負強さの正体がおぼろげながら掴めてきています。
今回は「勝負で勝つ、メンタルシリーズ」です。

https://riku-nagahama.xyz/2020/04/27/%e8%a9%a6%e5%90%88%e3%81%a7%e7%b7%b4%e7%bf%92%e3%81%ae%e5%8a%9b%e3%82%92%e5%87%ba%e3%81%99/

メンタルが弱くて試合やスパーリングで力が出せないと悩んでいる方には参考になると思います。

臆病なのもバカなのも悪いことじゃないよ

ボクシングにおいては『臆病』であることは蔑まれている性質です。
でも、以下のページでも述べているように臆病であるとは「リスクに敏感で変化をつぶさに感じ取れる能力」だとも言えるのです。

普通は感じ取れない危機を察知しそれを避けることができる。
完成系はフロイド・メイウェザー選手(世界最強)でしょう。

https://riku-nagahama.xyz/2020/05/03/%e4%b8%96%e7%95%8c%e4%b8%80%e8%87%86%e7%97%85%e3%81%a7%e4%b8%96%e7%95%8c%e6%9c%80%e5%bc%b7%e3%81%ae%e7%94%b7%e3%80%80%e3%83%95%e3%83%ad%e3%82%a4%e3%83%89%e3%83%bb%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%82%a6%e3%82%a7/

「バカであること」も悪いことじゃありません。
これも裏を返せば普通の選手が嫌うリスクを冒すことができるということにもなるからです。
第一ラウンドにチャンスが来たらどうしますか?

「残りのラウンドを考慮して体力を温存しますか?」それとも「このチャンスに全てを駆けますか?」

もしその試合で実力差があるなら。
それは千載一遇、二度と来ることのないチャンスかもしれませんね。

https://riku-nagahama.xyz/2020/05/19/%e5%a4%a7%e7%95%aa%e7%8b%82%e3%82%8f%e3%81%9b%e3%82%b8%e3%83%a7%e3%82%b7%e3%83%a5%e3%82%a2vs%e3%83%ab%e3%82%a4%e3%82%b9/

「バカだから勝てた」という試合は毎年沢山あります。
第一ラウンドから何にも考えないで攻め続けたら勝てた。
オリンピックで世界記録を出すような勝負強い選手達は、
疲れたらそれまで、なるようになる
こんなマインドを持っていることが多いようです。

逆に長期的に勝ち続ける人はリスクを嫌う傾向にあります。
長所と短所は常に表裏一体なんです。

大切なのは自分の短所を認めること

大切なのは自分の短所から目を背けたり、不要な荷物だと切り捨ててしまわないことです。
長所と調和させればそれは大きな武器となります。

臆病なくせに臆病はダサいと考えて、勝ち気で大胆な性格だと自分自身を誤認していたり、本当は大胆な性格なのに繊細なスタイルにこだわり無駄に手間暇かけて戦っていたり…など。
臆病なら臆病で大胆なら大胆でいいんです。
それは『長所』なんですから。
自分の長所を短所だと誤認していると失敗するんです。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

大昔から世の淘汰を勝ち抜いてきた格言です。
それだけ価値があります。
何故そう言えるか。それは僕が何度も何度も失敗してきたからです。

だけどそこから少しづつ学びながら『勝ち方』がおぼろげながら分かってきました。
その第一歩は自分の本質に逆らわないことです。

以下のページでもお話していることなんですが、戦略遂行のための戦術が矛盾していてはいけないんです。
『性格』も戦略遂行のための戦術でありスキルです。

臆病者がどつきあいを中心に据えてはダメです。
馬鹿なくせに繊細なスタイルを中心に据えるのも良くない。
局所的に使くことはあっても『核』となるのはあくまで自分の本質です。

本質は何

性格は戦略の根幹となる『スキル』です。
これがグラつくと全て崩壊してしまいます。

必要な時に「バカになる」とか「臆病になる」といった訓練は当然必要になります。
だけど、根幹になるのは自分の本質なんです。

「メンタルが弱い」「勝負弱い」と自認している方は自分の本質に目を向けてください。
あなたの内側にこそ『勝利のカギ』が隠されています。
僕はこれに気がつくのに本当に時間がかかりました
本当に多くを犠牲にしてきました。

まとめ

話が大きくなってしまいそうなのでここで区切ります。
大切なのは自分の弱さを認めることです。
怖ければ怖い、バカならバカでいいんです。
それを認められないから僕は失敗してきました。

https://riku-nagahama.xyz/2020/06/12/pfp%e3%81%8b%e3%82%89%e5%ad%a6%e3%81%b6%e3%83%9c%e3%82%af%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%81%ae%e5%bf%85%e9%a0%88%e8%a6%81%e7%b4%a0-%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%9f%e3%83%8a/
https://riku-nagahama.xyz/2020/05/09/%e8%a9%a6%e5%90%88%e3%81%a7%e5%8b%9d%e3%81%a4%e3%81%9f%e3%82%81%e3%81%ab/
https://riku-nagahama.xyz/2020/06/09/%e9%9b%86%e4%b8%ad%e5%8a%9b%e3%82%92%e9%ab%98%e3%82%81%e3%82%8b%e6%96%b9%e6%b3%95/

戦略と戦術、スキルセットとスキル

スキルセット

ここでの『スキルセット』とは『スキル』と区別して使います。
その人が持つ全てのスキルを組み合わせたものを『スキルセット』とここでは呼びます。
パワーやスピード、持久力や打たれ強さ、性格なんかもその人の持つ広義の『スキル』です。

今回は戦略と戦術、その為に必要なスキルセットに関して考えていこうと思います。
例えばガードが高いというのは常にいいことだとされています。
確かに大体においていいことだとは思います。
でも『ガードを上げるってことに全く欠点はないのか』ということに関しては盲目的で全く議論されていないんじゃないかと思います。

もう一つ別の例え話をします。
パンチが強いのはいいことだと思います。
でも『パンチが強いことは常にいいことで、欠点はないのか』ここについてはあまり議論されません。

戦略と戦術

ここでの『戦略』とは最終的な目標を達成するための計画だと定義しておきます。
目標が『判定で勝つ』なら色んな戦略があります。
「インファイトの手数で押し切る」「アウトボクシングのヒット数で上回る」などなんでもいいです。
戦術は戦略を遂行するための具体的な実行上の手段です。

例えてみると『判定勝利』が目標なら戦略は「ヒット数で上回る」、その為の戦術は「足を使って距離をとる」とか「クリンチでインサイドを封じ込める」などです。

戦略に合わせた戦術、そしてそれを遂行できるだけのスキルセットを構築すべきだと僕は考えています。
戦略と戦術が矛盾してもいけませんし、戦略を完遂する以外のスキルは必要ありません。

選択と集中

ガードが高い

ガードを上げるってのは相手に打たせないため『戦術』です。
足を使って左右に動くのも打たせないための戦術です。

メイウェザー選手は足を使って左右に相手を揺さぶります。
足で距離をコントロールします。

この時高く腕を上げていると動きにくいですよね。
脚と腕は連動して動きやすいバランスを作るようにプログラムされています。
本能的に行われる動作で、例えば歩くときに「前に出す足と手が逆になる」、転びそうな時に「腕が動いて身体重心を変える」、チーターのような四足歩行の動物が高速で移動している時に「しっぽを動かして重心移動させることよってバランスを保つ」ような動作のことです。
身体重心は関節により質量を移動させることで大きく変化します。

フットワークをスムーズにそして素早くするためには腕と脚の連動が不可欠です。
だからこそガードを上げたままより下げた方が動きやすいのです。
腕を上げたまま走ると速度がでないのと似たような理由です。

また左手を下げることにはさらに利点があります。
パンチが出しやすくなります。
パンチが出しやすいことには利点があります。
カウンターの速さと強さを補強します。
カウンターは『物理的』意外に、『心理的』にも相手の攻撃を抑止します
例えば鋭いカウンターを持つ選手には簡単には踏み込めません。
相手に考える時間を作らせます。
その時間で危険な状況を脱する時間を稼ぐことができるのです。

つまりカウンターと組み合わせれば、「腕を下げる」戦術は相手の攻撃を心理的に防ぐディフェンスに寄与します。
さらにメイウェザー選手のフィリーシェル(ショルダーロール)スタイルは左手を下げることで腹部を守り、顔を相手から遠ざけることにより頭部を守っています。

つまりフィリーシェルにおいて左腕を下げた状態は『ガードを上げた状態』なんです。
メイウェザー選手はディフェンスの戦略上、戦術的に腕を下げているだけです。

また、メイウェザー選手は状況に応じて戦術を変えます。
プレッシャーをかける時には腕を上げます。
プレッシャーファイターであるカネロ・アルバレス選手や村田諒太選手がハイガード戦術を使っているのと同じ理由だと思います。

ロマチェンコ

力積

ロマチェンコ選手は軽いパンチを高い回転力で繰り出していきます。
これを基準に強いパンチはの欠点は何か考えていきます。

パンチの強さは要するに拳の運動量(質量×速度)です。
運動量は『力積』により変化します。

力積(I)力(F)×時間(t)

で表されます。
力積で表されるようにパンチを強く打つ(力積を大きくする)には強い力(F)を一瞬で生み出すことも重要ですが、長い時間(t)拳へ力を伝えるというアプローチも関係します。

運動量は物体の運動の激しさです。
運動量の変化は力積の大きさで表せ、左図のピンク色の四角形の面積が力積です。
Fは力の大きさ、tは時間。
大きな力か、長い時間物体に力を加えると力積(面積)が大きくなります。

選手は当然、力学には逆らえません。
時間から『力積』へアプローチるも必要なんです。
つまりパンチを繰り出して拳を目標に衝突させるまでの時間は足を止めて地面から反力を受け続ける必要があります。
ロマチェンコ選手が打ちながら動ける、速いコンビネーションが打てるのは力積の時間の部分をある程度犠牲(このようなトレードオフは常に起こる)にしているからだとも僕は考えています。
そしてその時間的なアドバンテージを活かして相手の死角となるポジションへ移動します。

つまりパンチを受けないための戦略として強いパンチを使わないのです。
パンチを強く打たないことで素早い動きを担保しています。
強く打つとあのフットワークは難しくなり今のような変幻自在の動きは難しいはずです。

ロマチェンコ選手もメイウェザー選手も同じです。
戦略に戦術を適合させているんです。
戦略と戦術を矛盾させてはいけません。

戦略とスキルセット

戦略を遂行するために必要なスキルを集めるべきです。
がむしゃらに「あれもこれも」と取り入れていては時間を浪費します。
自分の戦略は何で、その戦略を強化する為には一体どんな戦術足りていないのか。
それらの組み合わせがスキルセットであり、あなたの『強さの正体』です。
どんなスキル組み合わせて、スキルセットを構築すれば戦術間の相乗効果を起こせるのか。
同じ人間とは思えないPFPの強さの正体は一つ一つのスキルの練度とスキル間の相乗効果です。

練習と同様にただ漠然と自分の核となる戦略を考えてはいけません。

まとめ

戦略に戦術が適合しているか?
これもしっかり考える必要があります。
戦略と矛盾した戦術の組み合わせでは相乗効果は起こりません。
むしろ損ねてしまっている可能性すらあります。

何を戦略の中心に据えるかはまた別の機会にお話ししたいと思います。

そして戦略は計画です。
予め用意しておかなければなりません
当然計画は上手くいかないことばかりです。
戦略を完遂する為に、必要な戦術は一つではありません。

長くなりそうなので今日はこの辺にしておきます。
もっと踏み込んだ話は別の機会にお話します。