股関節をロックできない場合、すなわち腸腰筋内転筋群中臀筋が弱い場合、大腰筋パンチは打てません。
大腰筋パンチの利点
1.バランスが崩れにくく打ち終わりにデフェンスしやすい
2.脊椎側屈に伴い頭が相手の射程から逸れる
3.軸足に体重が乗り、ブレーキ効果による拳の加速が起こる
一番右が股関節の閉じた骨格。一番左は所謂インナーマッスル、コアの筋肉が衰えた老人や未発達の赤ちゃんの特徴が現れた骨格。
股関節ロックが弱い場合は、踏み込み時に膝関節の屈曲方向と体の進行方向が一致し、その勢いに押される形で膝関節屈曲が起こり、ブレーキ効果による運動量の交換が効率的に行えません。
股関節内旋内転による股関節ロックが強く起こる場合、膝関節の屈曲方向と体の推進方向が一致しない為に脚がつっかえ棒のように踏み込んだ勢いを制止します。その勢いは脊椎を折り曲げます。すなわち大腰筋パンチになります。
一流の股関節がロックされていることと大腰筋パンチが起こることは因果関係であると考えられます。合理が合理を引き寄せる自己強化です。
逆を言えば、股関節がロックできずに膝曲がる場合は上記の連鎖反応が起こりません。むしろ非合理が非合理を引き寄せる自己強化が起こると考えられます。
また、以上から「パンチを打つ時に頭がずれる」のは、意識的にそれを練習したからではなく、生来的な必然としてそうなっていると結論するのが妥当と思われます。
この推理はアスリートが大きな腸腰筋(≒股関節の強さ)を備えている事実とも整合的です。
残酷ですが、以上は遺伝的素質のある人はスポーツが上手くなる運命にあり、そうでない人は下手になる運命にあると言言い換えられます。
しかし、人には知性があります。自分が他人より劣っていることを客観的に認識できます。また、それを克服する忍耐力も与えられています。
※できないか、あるいはしない人もいる
自らの劣等感を克服しようと藻掻く行為こそが、社会を発展させてきたとも言え、それこそが人としての強さだと僕は信じます。劣等感のない奴やそれと向き合わずに逃げる奴は、戦う気のない奴とも言い換えられ、男として、あるいは人としては、文字通り終わっています。
神学科の落ちこぼれのダーウィンがキリスト教支配を終わらせたのはある意味必然と言えます。
チャールズ・ダーウィン(1809-1882)は、ケンブリッジ大学で神学を学びましたが、博物学者として活躍しました。
ダーウィンは、父親の希望に反して神学を学びましたが、ペイリーの自然神学を熱心に学んだと言われています。その後、博物学の分野に転向し、地質学者や生物学者として活躍しました。
閑話休題。
以上の股関節ロックを起点とした物語は、スポーツの技術とそれを身につける為の練習への示唆を与えてくれると思います。
一つは、「技術」は意識的な訓練によってではなく、生来的な骨格や練習の構造から演繹されてくる、ということ。
そうだとするなら、練習中にゴチャゴチャと考えたり、ウダウダと細かく指導するのは時間と体力の無駄です。
競技力向上に要求されるのは、自らが理想とする姿にはどのような前提があり、それらがどのように絡み合って導かれているのかを考えるのこと。それは練習中ではなく家で。ジムは実験所。
また、以上の推理が妥当であると仮定するなら、ボクシングに半世紀近く、武道から数えるなら数世紀近く受け継がれてきた価値観とは何なのか。ひいては、日本で受け入れられている社会通念には、一体どんな意味があるのか、を再考する必要があるでしょう。
また、今、あなたが起こっているトレーニングもそうです。盲目になっていないでしょうか。
学校で教科書を覚えたみたいに、その原理を理解しないままに行われていないか、あるいは、承認欲に駆動されたトレーナーをドヤ顔させるだけになっていないか、に注意を払う必要があります。
僕は長岡を見ていて常々感じます。これでもかと努力できる奴は本当に貴重です。
あなたがそうであるなら、ドヤ顔したいだけの人に脚を引っ張らせないように気をつけてください。
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