手首の背屈ロックトレーニング

トレーニング技術

背屈ロックとパンチ

背屈ロック修正の過程

前半に、”長岡の”パンチの動作に結びついていると予想された、「背屈ロック」を改善する為のトレーニングを載せました。

再び強調しますが、”長岡の為の” トレーニングです。”あなたの”ではありません。

長岡を観察して得られたパンチの特徴から逆算し、
反動動作に違和感⇒大げさなSSC⇒腕の落下エネルギーを筋腱の弾性エネルギーへ変換する効率が悪い⇒筋肉に張力がかけられていない⇒肩甲骨ロックが利いていない⇒握りが悪い⇒背屈方向に非合理がある⇒背屈ロックの認知が歪んでいる
と推理しました。

次に以上の仮定から、それを改善させると予想されるトレーニングを長岡にやらせました。

徐々に強くナックルを当てられるように動作が改善され、裸拳でサンドバッグを強打できるようになるのが分かると思います。

ついでに問題の因果関係を見極め、それを追跡する大切さも強調しておきます。

問題は現象として起こります。
台風を起こすのは気圧差、寒暖差です。「うちわ」で直接あおいでもどうにもなりません。

川の流れや道路の交通を変化させる場合も、水そのものをひっかくか、道路を行き交う一々の車へ、直接アプローチすることはしないはずです。非常に効率が悪いか、無駄です。

あなたは、その流れをより効率的なものへと変化させようと考えた場合、地形や道路などに手を加えるはずです。すなわち、構造へアプローチするはずです。例えば川の溝の形を変える、信号を設置するなど。

ボクシングも同じです。
現象として現れているだけの問題へ直接アプローチするのは、水たまりをひっかいて流れを起こそうとするようなもの。
それをするはアホだけです。

子供が勉強をしないのは、もっと楽しいことがあるから。叱って、力付くで席につかせた所で、その子は暴力的に他人を支配する方法を学ぶだけ。

そんな子は大人になって勉強の大切さを子供達へ伝えるでしょうか。むしろ力付くで上下関係を押し付けるでしょう。そして、それはまた次世代へ受け継がれてしまいます。負の自己強化てす。

つまり、長い目で見るなら、「勉強しない→じゃあ勉強させよう」は逆効果でしょう。

何故勉強が嫌いなのか、何なら楽しそうにやっているのか、その楽しそうにやっていることと勉強には共通点はないか。もしかすると、その子は野球が好きかもしれません。
速い球を投げる方法を見つける為なら本を読むかもしれないし、難しい問題を諦めないかもしれません。

指導者と大人がやるべきは、この世界には、誰も知らない未知の可能性があることを子供に教えてあげること。

例えば、子供の能力に合った本を探し、さりげなく置いてみるとか。ユーチューブで簡単なバイオメカニクスの説明を探してみるとか。一緒に速い球を投げる方法を試行錯誤するとか。

子供やボクサーに、この世界には人々に知られていないなだけの、より効率的な手段があることを知らせられれば、彼らにはそれを探す動機が生まれます。その未知に対して、我先にと努力するはずです。

すなわち、大人や指導する立場の人間に要求されるのは、力付くで理想を押し付けることではなく、どのような構造ならば意図したことが導かれてくるのかを推理し、子供やボクサーが楽しみながら、自覚すらせずに、そこへたどり着けるようにしてあげることです。

全てが終わった後で、子供やボクサーは「あの人はこれを意図していたのか」と、その思慮の深さに感謝し、その態度を次世代へ継承する為に大きな労力を払ってくれるはずです。逆も然り。

例えば、「ガードが下がる」という問題へ直接アプローチすると、反射的な反動動作が抑制され、運動の力強さが失われることがあります。
そうやってパンチが弱くなると相手は伸び伸びと自由に戦うので、むしろディフェンスは難しくなります。
このように、因果関係を追跡せずに短絡的に結論を導いてしまうと、問題が上積みされてしまうことがあります。

そして往々にして、人はその重みにつぶされます。
「ああ…もう疲れた。全然上手くならない。もうやりたくない」と。

僕の経験上では、簡単に結論を導こうとする悪癖は、必ず自らへの呪いとなります。

深く調査して情報を吟味しない投資とか。ユーチューブやSNSでタダで何かを知ろうとする、あるいは教えてもらおうとする行為とか。いつか、神はその自分自身に対する無責任のツケを支払わさせます。

ディフェンスを改善しようとした行為がそれを損なうような認識の罠は、至るところでボクサーを囚えています。

今のやり方や環境が無駄が無駄を生む負の自己強化自己増殖になっていないかを確かめる必要があります。

根本にある構造を変えずに場当たり的に対処するなら、負債だけが積み上がり、最後はその重さに潰されて身動きが取れなくなります。

テノデーシスアクションによる背屈ロック
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この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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