久しぶりに印象に残る本を見つけたのでご紹介します。
呼んで2日立ちますが、いまだに心には衝撃が残されています。
普段は安っぽい気がして恋愛小説は読みません。が、きらきらした雰囲気とは対照的な儚げな表情の表紙絵が気になってしまって。
分厚い本でもないしすぐ読み終わるだろうってことで。
半日もかかりませんでした。
文体は現代文学という風で直接的で生々しさがある描写なので前半はちょっと引き気味だったんですが、主人公が死へ向かっていくに従い、その生々しさがむしろ現実感を引き立たせていきました。まるで目の前で見ているような。
序盤の元気なんだけど、死を意識して楽しめない主人公。しかしようやく寿命を忘れて楽しめる、楽しませてくれる恋人と出会えたのに。
それは主人公が寿命が迫られ弱っていく様を病室で見守っていると錯覚するほど。体は元気なのに心が縛られる前半と心は自由になったのに体が縛られている後半が自然な対比になっていて、胸が痛くなりました。
それにしてもあまりの現実感に違和感を覚えて調べてみると、作者も作品の主人公と同じように寿命を自覚する病気を抱えていたようで、出版を待たず亡くなられています。
死へ向かうまでに見えた風景、その時に感じた心の機微が詳細に描かれ、すさまじいまでの現実感があります。
そして。
主人公の死後、その存在が少しづつ忘れられてしまうような短い描写があるのですが、これが作者の最後の感情だと想像すると胸が強烈に締め付けられました。
映画化、漫画化もされているようです。
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