
ワイルダーの骨格
ワイルダーの脊椎のS時の湾曲は、主には強靭な腸腰筋と小胸筋、前鋸筋により形成されていると考えられます。
前鋸筋は頻繁にスポットが当てられますが、小胸筋は無視されがちです。しかし、構造から推察するに、肩甲骨の前傾に寄与しているのは主にそれだと考えられます。
肩甲骨の前傾はワイルダーの「背中の盛り上がり」と言えば分かりやすいと思います。肩甲骨が上から覆いかぶさるように背中に張り付いています。
前鋸筋は小胸筋とは逆の作用を起こしますから、この二つは上腕二頭筋と上腕三頭筋がそうであるように、互いが主働筋-拮抗筋の関係にあると考えられます。
すなわち、肩甲骨ロックを強めるには両方をバランスよく鍛えるのが合理的です。

アジア人最速のソヘイテン
また、前鋸筋と小胸筋による肩甲骨の前傾外転が強調された場合は、GGGがそうであるように、上腕の内旋が構造的に強調されます。
クリロナは手の甲を前にして腕を振リます。同じように、アスリートが手の甲を前向きに振るのを見たことはありませんか?
ワイルダーは通常の構えから腕の内旋が強調されるほどです。すなわち骨格が合理化されています。
これが所謂コークスクリューパンチの文脈だろうと。漫画などでは、弾丸のジャイロ回転がその破壊力の説明に利用されますが、パンチの飛距離と速度に対してそれを用いるのは頼りない。
ジャイロ回転云々ではなく、単に強い骨格を持つ奴が殴っているだけ、と考えるのが妥当に思います。
前鋸筋小胸筋が弱い場合でも、見様見真似でできないことはないでしょうが、ロシアンフックがそうであるように、破壊力には雲泥の差が生まれるでしょう。つまり似て非なるもの。
ロシアンフックを自然体で習得できる日本人は超少数派ですよね。それと同じようなことがワインダーのワンツーにも言えるだろうと。
まずはコークスクリューパンチをを導く骨格を手に入れること。
また、ワイルダーは上腕の内旋、前腕の回内により拳を縦に変化させて相手のガードを無力化しています。GGGもこの手の技巧を多用します。
GGGの超絶技巧を見てください。ボディーフックにガードを迂回させています。そして、その判断は一瞬で行われます。

ワイルダーやGGGの技術、ないしは認識(≒世界観)の差を導く因果関係を考えるなら、それは骨格です。
すなわち、それは撃力の高さに加えて実現可能な軌道や角度の差も生んでいると考えられるのです。
さらに言及するなら、ワイルダーの骨格は常にこの可能性へアクセスできますから、常人とはボクシング技術空間の認知の仕方に差を与えているはずです。
中世ヨーロッパが何百年も貧困生活に耐えたようなこと、ないしはそれを美徳とする文化を生み出したようなことが、個々のボクサーにも起こります。





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