進化ボクシング学

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ジャック・デンプシーの動画がYoutubeのおすすめに表示されれていて、そういえば知らないなあと思って見て見たんですよね。
で、「所謂『前傾スタイル』の発端はここか!」と直感しました。
調べてみると大当たり。

デンプシーは、ボクシング史上初めて前傾姿勢の構えで戦ったボクサーとされる。デンプシー以前にもジョン・L・サリバンなど豪腕と謳われたボクサーは存在していたが、彼らは極端に重心を後ろに掛ける構えをしていたため、一撃で試合を終わらせるパンチを持つにいたらなかった。

Wikipedia

沖縄にも戦争で来ていたそうですよ。

どうして20世紀初頭、デンプシーのようなスタイルが要求され、また人気を博すことができたのかにつて考察していきます。

https://www.youtube.com/watch?v=IbSCPWhsKUM
https://www.youtube.com/watch?v=TIRIl0wR5nI

トニー・ジェフリーズ

参考として以下の動画を引用して、当時のボクシング環境がどうだったのかを見ていきます。

https://www.youtube.com/watch?v=E-IBfYq08lQ

19世紀のボクシングのスタンスについて歴史的な経緯から解説しています。
記録が残されているのか、トニー・ジェフリーズ説なのかは不明。

長い動画なので要点をまとめると。

当時のボクシングはグローブなし、試合は週ごと。
またラウンド数に制限はなく、ダウンすると1ラウンド。基本的に時間無制限デスマッチ。
100ラウンドに及ぶ試合もあったのだとか。

そのような背景から拳を守ることに重点が置かれるようになり、以下のようなスタンスに収斂したのだと。
環境が今とは全く異なっていたが故に全く違うスタンス、スタイルだったということです。

https://www.youtube.com/watch?v=6foQEfkFHFM

ある程度納得はいく説ですが、さらにこれに長濱説を加えていきます。
恐らく、ある程度の以下のような姿勢は自然なスタンスなのだと僕は思います。
上の1906年の試合をみてください。
黒人選手はKスタンスですよね。

Kスタンスが自然な殴り合いのスタンスで、20世紀初頭のボクサーは現代型のクロフォード、シャクール・スティーブンソン、メイウェザーと同じ論理によってこのスタンスを実現していたと考えられます。
第一は相手から顔を遠ざける防御的な側面。
もう一つは利き腕側の股関節への荷重が強くパンチが出しやすいこと。
僕のジュニアボクサーの指導への経験から導きだした答えとして、何も教えなければ人は自然とKスタンスになる、です。

https://riku-nagahama.xyz/2022/02/14/%e5%ad%90%e4%be%9b%e3%81%ae%e6%89%8d%e8%83%bd%e3%82%92%e5%a5%aa%e3%81%86%e5%a4%a7%e4%ba%ba%e3%81%ae%e9%86%9c%e3%81%8f%e3%81%8d%e6%94%af%e9%85%8d%e6%ac%b2/

ジェフリーズ説と上記の長濱説が合わさった結果、上のような構えが広がったのではないでしょうか。

アウトボクシングは未開発

上の1906年の試合を見てください。
打ち合いです。「相手が手を出せばこちらも」といった具合で同時にパンチを交換しています。
恐らく、「アウトボクシング」「タイミング」「ディフェンス」などという概念、もっと言うと「ディスタンス(距離)」「ジャブ(強打の準備)」といった概念なかったはず。

「ど突き合ってぶっ倒す」
証明ができないのですが、上記の原始的ボクシングである無制限デスマッチの根底に流れる思想はこうだと僕は推測しました。

パンチを躱してパンチを打ちこむ、攻撃より守り重視。
現代ボクシングの思想は存在していなかったのでしょう。
当然、選手は「アウトボクシング」なんて言われても何のことかさっぱり分からなかったはず。

だからこそ、ジャックデンプシーのスタイルがハマった。
「前進して打ち合い」。これが前提の環境においては、デンプシーの前傾姿勢で顎を引いて顔面を隠すスタイルは一つの最適解だったのでしょう。
だからこそ勝ち続けた。

現代ボクシングにも”当時の環境を前提とした思想”が流れていますね。
特に日本では「前傾姿勢」が基本とされており、「顎を引く」ことを口うるさく言われます。
海外のボクシングでも「顎を引け」は頻繁に聞きます。

しかし現実を見てみるとメイウェザー、タイソン、井上尚弥などなど。
パンチを打つ時に顎が上がる選手は多い。危険どころかむしろ強い。

何故なら。現代では爆発力が要求されるからです。
ダラダラと殴り合いません。一瞬で攻撃は完了します。

瞬間的に踏み込んでパンチをまとめて、反撃を受ける前に安全な位置へ逃げます。
もし20世紀のボクサーがこの戦い方を見たら常識の範疇を超えた動きに驚愕するだろうと僕は思います。
「打っては退く」なんて発想そのものがなかっただろうと想像できるからです。

20世紀初頭のボクシングと今では環境が一変しています。
当時の選手と今の選手を比較してみてください。
スピードとディフェンスが重視され、攻撃は一瞬で終わります。

「打ち合い」といっても極短い時間にパンチを交換する程度。
ダラダラと打ち合うことより、短い数秒間にどれだけ精神的、肉体的、技術的資源を投下できるかをボクサーは重視しています。

爆発力を生み出すには力を抜く必要があります。
だからこそパンチを打つ瞬間に顎が上がる選手がいて、そして彼らは強いのです。
何故なら力が抜けているから。爆発力があるから。

顎を引く、前傾姿勢、が要求された20世紀初頭の環境的な前提は失われ、現代の環境においては顎を引くよりも爆発力が求められる環境へ変化している、と僕は結論しています。だからメイウェザーや井上尚弥のような顎の上がるボクシングであっても、環境によって正当化されているのです。

フリオセサールチャベスのインファイティング
https://riku-nagahama.xyz/2022/01/01/%e3%83%9c%e3%82%af%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%81%ae%e4%bf%a1%e4%bb%b0%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e6%80%9d%e3%81%84%e3%82%92%e9%a6%b3%e3%81%9b%e3%82%8b/

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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