ベクトル空間を定義する加法とスカラー乗法が成立すれば、その世界は例えどんな風に見えたとしてもベクトル空間だと言えます。
そしてもし、その世界がベクトル空間なら、ベクトル空間の公理から導き出せる性質(定理)が適用できます。
ベクトル空間の性質
ベクトルの0倍
命題
$0 \mathbb a = \mathbb 0$
aベクトルに0スカラー倍したら0ベクトルになります。
ただこの条件は公理には含まれていません。
実数の公理より
$0 = 0 + 0$
$0 \mathbb a = (0 + 0)\mathbb a = 0\mathbb a + 0\mathbb a$
$0 \mathbb a = 0 \mathbb a + 0 \mathbb a$
と変形できます。
またベクトル空間の公理のaベクトルとの和が常に0ベクトルになる逆ベクトルa’があるという定義を利用します。
両辺に逆ベクトルを加えます。
$0 \mathbb a (-0\mathbb a) = 0 \mathbb a + 0 \mathbb a -(0\mathbb a)$
整理すると
$\mathbb 0 = 0\mathbb a$
aベクトルの0倍は0ベクトルになることが証明できました。
どんなベクトルであっても0倍すれば、それは0ベクトルになります。
実数の$\mathbb 0$倍
次は実数の0ベクトル倍です。
命題
$a\mathbb 0 = \mathbb 0$
上記と同じ論法が使えます。
公理より
$a\mathbb 0 = a(\mathbb 0 + \mathbb 0)$
$a \mathbb 0 = a\mathbb 0 + a\mathbb 0$
逆ベクトルを加えて
$a\mathbb -(a\mathbb 0) = a\mathbb 0 + a\mathbb 0 -(a\mathbb 0) $
$\mathbb 0 = a\mathbb 0$
実数を0ベクトル倍すると0ベクトルになることが証明できました。
以上が公理から導き出せるベクトル空間の性質です。
実数の定義と性質を学ぶ過程で何となくですが数学のやっていること、やりたいことが掴めてきた気がします。
実数空間と現実世界
ベクトル空間って力学にも応用されていますよね。
ニュートンの運動方程式はこうです。
$\mathbb F = m\mathbb a $
Fとaが太字なのは方向と大きさを持つベクトル空間の要素だからです。
距離を時間の二階微分で求めたaベクトルを質量倍したものがFベクトルです。
力学の力って概念にはこれまで学んできたベクトル空間の定義が当てはめられることを意味しています。ベクトル空間の定理は力学の力の概念にも当てはまるんです。
現実が厳密な定義通りに振舞うのって不思議だなあって思います。
現実世界に当てはめられるように定義しただけと言われればそれまでですけど、でもそれぞれの物質が好きに振舞えばいいじゃないかって思うんです。なぜ秩序だってみんな決まった動きをいているのか。
また、数学の論理を突き詰めていくと虚数って不思議な数とか無限って想像を絶する概念が必要になったりもします。
ベクトル空間のように数学の概念が現実をうまく記述できるのなら、マイナス時間とかマイナス長みたいな人間の感覚を超えたマイナスの量の存在も現実では許されているのかなあって。
もしも数学が現実を操るのであれば、とりあえず僕は過去へ…
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