筋肉へのエネルギーの供給とそのトレーニング

トレーニング

今回はエネルギー供給系の話。
この話の大枠は掴んでいるのですが、細部を覗こうとすると化学物質の合成の過程やそれによって起こる生理的な反応など専門的な知識が多く要求されるので苦手なんです。
ただ年齢的にがむしゃらな練習が恐くなってきましたので、勉強してコンディショニングについて学んでいきます。

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ATP代謝

ATP

ATPは日本語だと「アデノシン三リン酸」と呼ばれます。
以下のような分子構造をしている、人体を動かすガソリンです。

アデノシン三リン酸 - Wikipedia

左図のようにATPはアデノシンに三つのリン酸がくっついた構造をしています。

加水分解によってリン酸を一つ外し、アデノシン二リン酸(ADP)に変化させ、エネルギーを放出させます。

$ATP + H2O → ADP + Pi$

ATPとH2Oを反応させてエネルギーとADP(アデノシン二リン酸)、Pi(リン酸)を放出します。

ATPは体内にはほとんど貯蔵されていない為、運動が始まるとすぐに貯蔵されていた分は枯渇してしまいます。
人体は運動をしながら取り込んだ酸素、糖、脂質を分解しATPを再合成、産生し続けることで、運動を継続します。

クレアチンやBCAAがATPの合成を促進するためのサプリメントとしてアスリートに好まれている理由ですね。
BCAAの摂取はさらに筋肉を構築するタンパク質の合成も促進する効果が期待されています。

閑話休題。
人体のATPを再合成する回路には主に3種類があります。

ATP-PCr系

人体に貯蔵されているATPを分解して生成されたADPはATP-PCr系に回され、クレアチンリン酸(PCr)を触媒として迅速にATPに再合成され、Cr(クレアチニン)を排出します。

$ADP + PCr \Leftrightarrow ATP + Cr$

主に運動の立ち上がりに機能しますが、筋肉内に貯蔵されているクレアチンリン酸(PCr)は8秒程度で枯渇すると考えられており、爆発的な運動を持続することはできないことの説明にも使われます。

爆発的なコンビネーションを数秒打ちこむとガクッと力が落ちるのはこの為です。
クレアチンリン酸の再合成には約30秒を要し、完全回復には数分を必要とすることもあるため、爆発的な攻防を得意とする選手はラウンドのほとんどを休んでいます。

クレアチンを経口摂取することで爆発力が向上するため、アスリートにそれは好まれています。
試合前に摂取する、というよりは普段から体内のクレアチンの濃度を高めることで高強度のトレーニングを実現、継続させる目的で使用されます。
当たり前ですが短期間で競技力を向上させるようなものではありません。

この回路は爆発的な運動を行う時に意識するのが良いかもしれません。
既述のようにクレアチンリン酸の再合成には時間がかかることから、爆発力を向上させるためには高強度運動とその後の休息のバランスが大切になるからです。

クレアチンを再合成する時間を短縮することに重点を置くのなら、70mなどの高強度のインターバル走などが考えらえます。

解糖系

強度の高い運動の立ち上がりから数秒で働き始めるエネルギー供給系が解糖系です。
その名の通り糖を分解してATPを合成します。

Wikipediaより。

血中の糖を分解する過程でATPとピルビン酸が産生されます。
ピルビン酸は細胞内のミトコンドリアに取り込まれ、後述する酸素系の回路に回され、利用されます。

後述する酸素系より迅速にエネルギー供給が行われる回路ですが、グルコースからATPを産生するのにクレアチニンを触媒とする反応より時間がかかります。

上記の ATP-PCr系 と同様に酸素を利用しないことから無酸素性エネルギー供給に分類され、この能力のことを無酸素性作業能力と呼びます。

軽い運動から運動の強さが徐々に増していくとき、有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点となる運動強度のレベルのこと。英語では「AT: Anaerobics Threshold」といい、日本語では無酸素性作業閾値とも表します。

厚労省eヘルスネット

トレーニング

僕の場合は高強度のインターバル走が主になります。
僕がトレーニングを行う際は最短8秒から最大で1分程度を目安にしています。
たまに2分とかにして刺激を変えたりはしますが。基本は60秒以内です。

主観的に「だめだ、このペースでは倒れてしまう」でスタートが切れて、終わった後に倒れる強度を設定しています。
インターバルは1分~3分程度を日替わりで。
ダラダラせず、少ないと5本、多くても10本で終わります。
そうやって決めておかないと、ダラダラやってしまいます。

心拍計も使ったりしましたが、数字に囚われてしまうことが多かったため今はしていません。
主観的にもう一人の自分と対話しながら妥協せず限界まで強度を上げていき、ゴール直前で足がもつれ、ゴールしてぶっ倒れることができる強度を目指しています。
途中でトボトボとした有酸素にならないようにするのが地獄です。

これは慣れと度胸が必要で、恐らく始めは独力では到達できません。
「ダメだ、これ以上は…」の主観的なラインを超えていく必要があり、選手を追い込む専門家に見張られていないと難しいです。僕は専門家の野木さんと一緒にやった時の主観的な内容を参考にしています。

僕の場合はバッグラッシュでの最大心拍数への到達が難しく、走ったり跳んだりが主です。
1本終わるごとに脚が焼かれたように熱くなります。

酸素系

Wikipedia
酸素からATPを合成するための錬成陣。

解糖系で合成されたピルビン酸が利用されています。

左図はミトコンドリア内で行われる9段階の反応で、効率的にATPを産生できますが、時間がかかるため大きな力を発揮することができません。

ピルビン酸 + NAD+ + CoA → アセチルCoA + NADH + CO2

トレーニング

無酸素性作業が増え、血中に乳酸が急激に増え始める値のことを乳酸性作業閾値、無酸素性作業閾値と呼びます。
厳密には両者とも定義が違うのですが、似たような文脈で使われています。

上記のインターバルトレーニングに加えて乳酸性作業閾値(LT)のペースを維持して動き続けるLTトレーニングなどが挙げられます。
上記の解糖系を刺激するには最大心拍数を目指すことが求められますが、このトレーニングの場合は80~85%を維持し30分程度で走り抜きます。
かなりきついですよ。
インターバルトレーニングのように走り終わった後、倒れるってほどではありませんが、腰に手をあってて「ふう~もう少しやれる気はするけど、もうやりたくねー」って感じ。

ボクシングは12Rだと45分戦うので、長時間集中する練習の為に1時間走も僕はやります。
途中で全力疾走、サイドステップ、ケンケンのポイントがあって、各20mずつ。

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Die Hard – ダイ・ハード
この記事を書いた人

第41第東洋太平洋(OPBF)ウェルター級王者
元WBC世界同級34位
元WBO-AP同級3位
元角海老宝石ジム所属

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