凄い試合でした。
普段ボクシング観ない層が見ていてくれたら嬉しいなーなんて思いながら僕は観戦しました。
スピードとパワーで大きく勝る相手を負かす。
見た目の派手さ、印象の強さでは田中選手なんですよ。
ボクシングって面白いですよね。
TIMING BEATS SPEED
”TIMING BEATS SPEED”はボクシングの格言です。
「タイミングはスピードに打ち勝つ」。
「どんなに速くてもタイミングを合わされてしまえばそれまで」とか。
「速いだけではパンチは当たらない」とか。
色んな解釈があると思います。
ボクシングをやっていると分かりますが、ただ速いだけのパンチは当たりません。
派手に見えるから凄く強そうに見えます。
だけど、上へ行けば行くほどそれだけでは当たらなくなります。
何故かと言えば、速い動きは大きなエネルギーが必要でそれを調達する為に大きな予備動作が必要になるからです。
いきなり速く動こうとすれば、身体のどこかに変化が現れて相手に読まれます。
生物である以上、いきなり速度を出そうとすると大きな予備動作が出てしまうのは必然です。
田中選手の動きは速かった。
でも井岡選手にはほとんど防がれていました。
生物の反応速度では相手の腕が動き始めてから対応することはできません。
相手の身体のどこかに現れる攻撃の前兆を感じ取っているんです。
例えば表情。
攻撃と言うのはカウンターを受け入れることを意味します。
人間の身体はその危険へ飛び込むストレスに敏感に反応します。
自分でも気がつかないうちに微妙に変化します。
他にも緊張が肩や脚の力みに繋がり、相手に伝わることがあります。
表情や身体の緊張はいきなり速度を出そうとすると表出してくる傾向にあります。
自動車を運転する方なら分かると思いますが、スピードを上げれば上げるほど緊張します。
一般道から高速道路に乗り換えた時も一瞬スピードの変化に緊張します。
高速道路に乗り換えた瞬間に法定速度を超える速度まで加速したことを想像すれば分かりやすいと思います。
身体が強張り、運転を誤る確率が上がるはずです。
ボクシングも同じです。
初速から全速で踏み込んでいくことは自分自身に一気にストレスをかけることになります。
身体のどこかにそれに対する防衛本能の反応が表出します。
話を戻します。
田中選手のスピードのある攻撃に比べて一見すると遅く見える井岡選手のジャブ、左フックの方が当たっていました。
井岡選手のパンチは傍から見ると遅く見えます。
だけど、向き合っている相手にしてみると予備動作が小さく反応できないはずです。
パンチに反応できている場合、防衛本能が顔を背けたりして衝撃を無意識にでも逃がすことができます。
まともに受けなければパンチが効くことはめったにありません。
しかしパンチに反応できていないと防衛本能による反射が起こらずパンチの衝撃を逃がすことができず、急所にまともに衝撃が伝わります。
井岡選手のパンチが渾身の一撃でないのにかかわらず3度も田中選手からダウンを奪えたのはこんな側面があります。
スピードに勝るタイミングです。
田中選手のスピードを上回る井岡選手のタイミング。
相手が反応できない瞬間を熟知している井岡選手は達人です。
まとめ
“TIMING BEATS SPEED”の僕なりの解釈をお話しました。
このブログでは何度も繰り返していますが、ただ速いだけのパンチは当たりません。
「緩急」が相手の意表を突く駆け引きの本質です。
井岡選手のように予備動作がないのはある意味では静から動への緩急だと言えます。
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