見えないパンチ
ディフェンスの動画で僕は『パンチは見てからは避けられない、意識的にしろ無意識的にしろ相手の体に現れる微妙な変化をいち早く察知している』と話しました。
スピードがあっても、ただがむしゃらで慌ただしいだけの速さにはすぐに慣れてしまいます。
時間が経てば経つほど、相手がボクシングに熟練していればしているほど当たりません。
本当にやばいのは読めない(見えない)パンチです。
僕はこれを研究していて、そして少しづつその正体が分かってきました。
今では「いつ攻撃がくるのか分からない」と言われるようにもなりました。
実はこれには種があります。
簡単に言うと手品の『ミスディレクション』。
ミスディレクションとは手品で「観客の注意をそらす」テクニックです。
対戦相手の注意を逸らすには手順があります。
今回は少し抽象的ですが、ボクシングの『リズム』を使ったミスディレクションの方法を共有します。
変拍子
最近知り合った音楽関係で有名な方にこの話をしたら、『それ、変拍子だよ』って教えてくれたんです。
覚えやすいので『変拍子』と呼びます。
簡単な方法を共有しておきます。
プロの強い選手は意識的にしろ無意識的にしろ、これをやっています。
試合の映像だけで見ると世界王者クラスは当たり前にやっています。
モーションレス
まずは当たり前ですが、パンチに分かりやすいモーションがないことです。
当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、できている人はほとんどいないと思います。
打つ前に無意識(意識的なテクニックならOK!)に腕が微妙に動く選手たくさんいます。
肩に力が入ったり、歯を食いしばったり目つきが変わったり、打つ場所へ目線を移したりと表情に出る選手も多い。
全身が一瞬力む選手も多いですね。
まずフェイントの前に体に現れる意図しないパンチの前兆を消すことが肝心です。
そのためには力を抜くことですね。
これは特に肩と手首です。あと顔の力も抜いてください。
顔に力が入る選手も沢山います。
踏み込む前の恐怖とか不安とかが分かりやすく顔に出てます。
この動作を消すには、ジムの鏡で動きを確認しながら一か所ずつ確認して丁寧にやるのがいいと思います。
心も無にすべきです。
僕は『ボーっとしているように見える』と言われます。
こう言われた時点で僕は満足します。
狙ってやってるからです。
わざと無表情を作って気の抜けた顔をしています。
リズムを変える
ここから少し難しいですね。
攻撃の変拍子を行います。
そのためには、そもそも変拍子を行うリズムがあることが前提となります。
初心者で始めたばかりの方は、自分が好きな選手のリズムをよく観察し真似してそれを刻んで下さい。
例えば、フロイドメイウェザー選手のような「前後」やマイク・タイソン氏のように「左右」に連続的に軸を切り替えるリズムとか、パッキャオ選手のようにぴょんぴょんと飛び跳ねる「バウンスステップ」とか。
リズムって人それぞれありますよね。
あれを変えます。
この『リズムの動作』はボクシングの駆け引きにおいて本質的な『スキル』になってくるので、パンチの打ち方やディフェンスが一通り終わったら自分のリズムを創る、または知ることをすべきです。
『タッタッタッタタタタ』
自分の本来のリズムである黒字のリズムに相手の注意を向けさせます。
相手の注意が黒字のリズムに向けられたら、突然変拍子し相手の意表を突きます。
相手はそれまでのパターンが急激に変わるのでパニックです。
このブログでは何度も話していますが、慌てさせるのは相手の無意識です。
人間は意識下では慌てていないと思っていても、無意識化では慌てています。
驚いて判断と対処が遅れるんです。
その瞬間に殴られると完全なパニックに陥って
『今、何が起きた?』
と混乱し、『見えなかった』と後付けで結論するんです。
※人間の思考は後付けなので、無理やり論理に整合性を持たせようとします。
理解できなかったことは「見えかった、聞こえなかった、知らなかった」と辻褄を合わせるそうです。
まとめ
相手はあなたのリズムを覚えて、あなたの体にでるパンチの前兆に”無意識に”注意を向けています。
だから、まずは自分のリズムを持つこと。
そしてそれを相手の無意識に覚えさせ、その裏をかく。
結果的に相手は混乱して「見えなかった」となります。
一体『何』に相手の意識を向けさせて『どうやって』裏をかくかをしっかり『意識』することがボクシングの駆け引きにおいては重要です。
コメント